58 / 101
10
10-12
しおりを挟む
床に押し付けられたままの零たち四人と、手下の男達と、所在なさげな女がその場で待機すること、時間にして僅か二、三分か。
戻って来た聖は一転して、零たちの拘束を解くように命令を下した。
ユウの説得が奏功した結果らしい。
辛うじて、彼らはユウによって救われたようだ。
――――助かった……。
そう思って胸を撫で下ろしたのは、実は、この場にいた全員だった。
零たちは当然だが、聖に付き従っていた男達も同じだ。
本音では、彼らもこんなカタギ連中とモメるのは不本意だったようだ。
脅して透かして、上手に上前を撥ねるのが本来のやり方だ。
こんな真似をしても一銭の得にもならないし、事と次第によっては、彼らがお縄になってしまうリスクが高い。
だが、とにかく聖の怒りが組の上層部で優先されてしまい、その指示もあって、渋々彼らはここまで付き従ったのだ。
それは聖も分かっていたようで、もう男達には無茶な命令はしなかった。
聖は鋭い視線を一閃し、零たちに言質を迫る。
「お前らは纏めて、五体満足の状態でライジンブ・プロまで送り届けてやるよ。良かったなぁ?」
「――は、はい」
「だが、ここで起こった事は――分かってるな?」
『他言無用』
全員がそれに恭順の意志を示し、不問にすると聖に誓約した。
そこからの展開は早かった。
聖は男達に指示を出し、手際よくライトバンを用意させる。
そして、先に美央、明、岸本の三人をライトバンに乗せると、最後に一人残った零へ向かって近寄ってきた。
聖は、零を射殺しそうな眼で睨みつけると、血の凍るような冷ややかな声で恫喝する。
「オレは、あいつを苦しめたお前だけは絶対に許さない。今は、あいつに免じて引いてやるが……必ずこの落とし前はつけてやる。二度と、あいつの前に顔を出すな!」
ユウは『オレから連絡が行かない限り近寄るな』という伝言を聖に頼んだのだが、聖は薄汚い野良犬がユウの周囲をうろつくこと事態が業腹だったので、違う言葉で釘を刺す。
「あいつも、お前のツラなんか二度と見たくないってよ」
全ての可能性を否定する決定的な言葉に、零は無言になった。
そうして彼は聖に返事をしないまま、静かに背を向けて、三人の待つライトバンへと乗り込んだ。
(ユウさん……あんな失礼な事をしたオレを助けてくれたのは嬉しいけど……当たり前だけど、やっぱり嫌われたかな……)
昨夜は、自分でもどうかしていたと思う。
ただ、やっぱり――自分にとって特別な存在だったユウが、聖と強く繋がっている事実がどうしても受け入れられなくて。
戻って来た聖は一転して、零たちの拘束を解くように命令を下した。
ユウの説得が奏功した結果らしい。
辛うじて、彼らはユウによって救われたようだ。
――――助かった……。
そう思って胸を撫で下ろしたのは、実は、この場にいた全員だった。
零たちは当然だが、聖に付き従っていた男達も同じだ。
本音では、彼らもこんなカタギ連中とモメるのは不本意だったようだ。
脅して透かして、上手に上前を撥ねるのが本来のやり方だ。
こんな真似をしても一銭の得にもならないし、事と次第によっては、彼らがお縄になってしまうリスクが高い。
だが、とにかく聖の怒りが組の上層部で優先されてしまい、その指示もあって、渋々彼らはここまで付き従ったのだ。
それは聖も分かっていたようで、もう男達には無茶な命令はしなかった。
聖は鋭い視線を一閃し、零たちに言質を迫る。
「お前らは纏めて、五体満足の状態でライジンブ・プロまで送り届けてやるよ。良かったなぁ?」
「――は、はい」
「だが、ここで起こった事は――分かってるな?」
『他言無用』
全員がそれに恭順の意志を示し、不問にすると聖に誓約した。
そこからの展開は早かった。
聖は男達に指示を出し、手際よくライトバンを用意させる。
そして、先に美央、明、岸本の三人をライトバンに乗せると、最後に一人残った零へ向かって近寄ってきた。
聖は、零を射殺しそうな眼で睨みつけると、血の凍るような冷ややかな声で恫喝する。
「オレは、あいつを苦しめたお前だけは絶対に許さない。今は、あいつに免じて引いてやるが……必ずこの落とし前はつけてやる。二度と、あいつの前に顔を出すな!」
ユウは『オレから連絡が行かない限り近寄るな』という伝言を聖に頼んだのだが、聖は薄汚い野良犬がユウの周囲をうろつくこと事態が業腹だったので、違う言葉で釘を刺す。
「あいつも、お前のツラなんか二度と見たくないってよ」
全ての可能性を否定する決定的な言葉に、零は無言になった。
そうして彼は聖に返事をしないまま、静かに背を向けて、三人の待つライトバンへと乗り込んだ。
(ユウさん……あんな失礼な事をしたオレを助けてくれたのは嬉しいけど……当たり前だけど、やっぱり嫌われたかな……)
昨夜は、自分でもどうかしていたと思う。
ただ、やっぱり――自分にとって特別な存在だったユウが、聖と強く繋がっている事実がどうしても受け入れられなくて。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる