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◇
御堂聖からの電話を受け、こけつまろびつ、マネージャーとそのメンバー二人は大慌てで指定の場所へ向かった。
そこは、Wホテルの一室であった。
――バンッ!
「零っ!」
「……岸本さん……美央……明……」
ホテルの床に、縛り上げられた姿のままで転がされている零がいた。
その零を見下ろし、口火を切ったのは美央であった。
「これはいったい、どういう状況なんだよ!?」
「……とにかく、ロープを解くぞ」
明は努めて冷静に振る舞い、岸本マネージャーと一緒になって、零に絡んでいるロープを解いた。
検分したところ、零には特にケガをしてはいないようだ。
しかし、零のその表情は恐怖の為か、はたまた怒りの為か、ひどく強張っている。
だが、とりあえず無事なのは間違いない。
ひとまずホッとした三人であるが、次の瞬間!
――ドンッ!
「うわっ!!」
拘束を解かれた零も、駆けつけた三人も、四人全員が部屋の中央へと突き飛ばされた。
慌てて背後を振り返ると、素人目でもカタギではないと分かる強面の男が数人、そしてセクシーな美女が一人、そして……。
「お間らがTriangleってアイドルなんだな?」
一人、恐ろしく目つきの鋭い男が口を開いた。
外見だけで言えば、その男は最初の四人の男たちと比べると、比較的細身で小柄な方になるだろう。
容姿もおよそ強面タイプではなく、元芸能人だったと言われても違和感のない、モデルのように美しい壮年の男性だった。
スラッとしたその体を、一見してテーラーメイドと分かる、シックで落ち着いた色合いのスーツが包んでいる。
両耳には小さなピアス、髪は深いグレーに染めていて、色つきのサングラスをしていた。
こういった荒っぽい事とは無縁の、粋で洒脱な優男にも見える。
だが、その男の一挙手一投足に、付き従っている男たちがピリリと緊張して強張っているのが分かった。
その男性の顔を確認し、零たちのマネージャーである岸本が驚きの声を上げる。
「み、御堂社長じゃないですか? これはいったい、どういう事ですか!?」
岸本は、震える声でそう抗議した。彼は、過去に一度だけ面識があったので、相手の正体がジュピタープロの御堂聖だとすぐに分かった。
そして、今が予想以上の窮地に立っている事も。
「い、幾ら何でも、他事務所のタレントを拉致した上にメンバー全員で迎えに来いだなんて、お、おおお、おたくの事務所ではどうだか知りませんが、これはずいぶんと非常識じゃないんですか!?」
御堂聖からの電話を受け、こけつまろびつ、マネージャーとそのメンバー二人は大慌てで指定の場所へ向かった。
そこは、Wホテルの一室であった。
――バンッ!
「零っ!」
「……岸本さん……美央……明……」
ホテルの床に、縛り上げられた姿のままで転がされている零がいた。
その零を見下ろし、口火を切ったのは美央であった。
「これはいったい、どういう状況なんだよ!?」
「……とにかく、ロープを解くぞ」
明は努めて冷静に振る舞い、岸本マネージャーと一緒になって、零に絡んでいるロープを解いた。
検分したところ、零には特にケガをしてはいないようだ。
しかし、零のその表情は恐怖の為か、はたまた怒りの為か、ひどく強張っている。
だが、とりあえず無事なのは間違いない。
ひとまずホッとした三人であるが、次の瞬間!
――ドンッ!
「うわっ!!」
拘束を解かれた零も、駆けつけた三人も、四人全員が部屋の中央へと突き飛ばされた。
慌てて背後を振り返ると、素人目でもカタギではないと分かる強面の男が数人、そしてセクシーな美女が一人、そして……。
「お間らがTriangleってアイドルなんだな?」
一人、恐ろしく目つきの鋭い男が口を開いた。
外見だけで言えば、その男は最初の四人の男たちと比べると、比較的細身で小柄な方になるだろう。
容姿もおよそ強面タイプではなく、元芸能人だったと言われても違和感のない、モデルのように美しい壮年の男性だった。
スラッとしたその体を、一見してテーラーメイドと分かる、シックで落ち着いた色合いのスーツが包んでいる。
両耳には小さなピアス、髪は深いグレーに染めていて、色つきのサングラスをしていた。
こういった荒っぽい事とは無縁の、粋で洒脱な優男にも見える。
だが、その男の一挙手一投足に、付き従っている男たちがピリリと緊張して強張っているのが分かった。
その男性の顔を確認し、零たちのマネージャーである岸本が驚きの声を上げる。
「み、御堂社長じゃないですか? これはいったい、どういう事ですか!?」
岸本は、震える声でそう抗議した。彼は、過去に一度だけ面識があったので、相手の正体がジュピタープロの御堂聖だとすぐに分かった。
そして、今が予想以上の窮地に立っている事も。
「い、幾ら何でも、他事務所のタレントを拉致した上にメンバー全員で迎えに来いだなんて、お、おおお、おたくの事務所ではどうだか知りませんが、これはずいぶんと非常識じゃないんですか!?」
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