ヒネクレモノ

亜衣藍

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「真壁さん、正直に答えてください」
「はい?」
「真壁さんから見て、オレと御堂社長は、どういう関係だと思ってましたか?」

 ユウの感覚では、自分はジュピタープロダクションに移籍しただけの一歌手という認識だったが。
 しかし意に反し、真壁はとんでもない事をボソッと呟いた。

「――――言い難いですが、ユウさんは社長の愛人なのでは?」
「愛人!?」

 真壁の答えに、ユウは渋い表情になった。

「そうですか……他人から見たらそうなるのか……」
『ユウ?』

 訝しむ声が電話から聞こえて来た。
 それに対し、ユウは疑念を口にする。

「聖さん、オレたちの『関係』は、周囲にはなんと説明していたんですか?」

 二人の仲が親密な事は、見ての通りだ。
 聖は以前から何かにつれユウに移籍を勧めていたし、実際こうしてジュピタープロでは破格の特別扱いもしている。
 だが周囲がそれを見て、どう思っているのかなんて、今まで考えもしなかった。
 ユウは静かな怒りを込めて、詰問した。

「オレは、七虹プロから移籍した一介の歌手の筈です。しかし、どうも周囲の認識とズレが生じているようです。実際、真壁さんもひどい勘違いをしているようだし――――聖さんは、もしかしてオレのことを……」

 僅かの沈黙のあと、嘆息するのが聞こえた。

『オレは、お前の事を愛人だとは自分からは吹聴していない。だが……』

 移籍先での、通常なら有りえない程の厚待遇。
 以前から、御堂聖は畠山ユウのパトロンを公言していた。
 そうなると、厭らしい方に勘ぐる連中は当然多い。 

『……今回の移籍で、業界内に、畠山ユウは御堂聖の愛人だという噂が定着しているらしい。だがオレは、あえてその事は放っておいた。その方が、表立って攻撃を仕掛けるような輩は出てこないと判断したからな』

 しばらくは、ユウは聖の愛人という事にしておいた方が無難だと思った。
 聖には他に愛人が数人いたし、ユウはその中の一人だとしておいた方が、裏社会ではむしろ安全だと。
 それに業界では、誰も、曰くありげだと噂される芸能事務所社長の愛人に手を出すわけがない。現に、七虹プロも余計な詮索はせず、大人しくユウの移籍に伴う諸々の権利を放棄したのだから。
 チラリと運転席に目をやり、ユウは溜め息をつく。

「愛人なんて……それは、さすがに勘弁してくださいよ……」

『すまん。だが、オレもまだ組との因縁が完全に切れた訳じゃないから。これは、お前の事を思った上での処置だ』
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