40 / 101
9
9-4
しおりを挟む
「今更サインでも欲しいってのか? それとも、落ち目になった体験談でも聞きたいのか?」
「違う」
「……聖さんは、オレが歌手である事にこだわり続けているのを理解して、オレの意志を尊重してくれた。だからオレは事務所を移籍したんだ。それなのに、体を売るとか何とかって、いったい何処からそんなバカげた話が出て来たんだ?」
「とぼけるな!」
零は突如激高し、掴んでいた腕を強く引いた。
「っ!!」
バランスを崩し、ユウは床に引き倒される。
分厚い絨毯を敷いていたから良かったものの、これが普通の固い床ならケガをしてもおかしくないところだ。
倒された衝撃に驚いたユウは、抗議の声を上げようと口を開く。
だが、それは言葉にならなかった。
零が、噛り付くようにユウの唇へ食らいつき、口腔を深く侵した所為だ。
「――っん! んん……う……ん……っ!」
突然の事にユウはパニックになり、ジタバタと手を動かしその体を引き離そうとする。
しかし、零はユウより歳こそ下だが、体の頑健さにおいては遥か上を行く。
それに、華奢でほっそりした体格のユウは、北欧系の血が入っている大柄な零の力にはとても敵わない。
それでも、ユウはなんとか右腕を振り上げると、覆い被さる零の背中をドンっと叩いた。
「ん~……!」
だが、それはか弱い抵抗だった。
零の体は、身動きもしない。
逆に、体重をかけて上に伸し掛かられて、ユウは苦し気な唸り声をもらす。
飲み込みきれない互いの唾液が口から溢れ、ユウは耐え切れずにむせた。
「ゴホッ! ゴホッ!」
顔を真っ赤にして咳き込むユウを押さえ込みながら、零は獰猛な雄の顔になって訊く。
「誤魔化さないでください! あなたが、御堂社長に枕営業をしたと業界では噂になっています。それ、本当なんでしょう?」
「はぁ!?」
「ジュピタープロでは、有り得ないほどの厚待遇らしいじゃないですか」
皮肉気に言い放ち、零は舌打ちをする。
「あなたが、枕営業だなんて汚いマネをする人だとは思わなかった。あなたも、御堂社長も、薄汚い業界の慣習に染まっているクズだっ」
目を見開き、ユウは首を振る。
「ち、違っ――」
「黙れ!」
そう言うと、零はユウのシャツに手をかけ、力任せに引き裂いた。
「っ!」
「違う」
「……聖さんは、オレが歌手である事にこだわり続けているのを理解して、オレの意志を尊重してくれた。だからオレは事務所を移籍したんだ。それなのに、体を売るとか何とかって、いったい何処からそんなバカげた話が出て来たんだ?」
「とぼけるな!」
零は突如激高し、掴んでいた腕を強く引いた。
「っ!!」
バランスを崩し、ユウは床に引き倒される。
分厚い絨毯を敷いていたから良かったものの、これが普通の固い床ならケガをしてもおかしくないところだ。
倒された衝撃に驚いたユウは、抗議の声を上げようと口を開く。
だが、それは言葉にならなかった。
零が、噛り付くようにユウの唇へ食らいつき、口腔を深く侵した所為だ。
「――っん! んん……う……ん……っ!」
突然の事にユウはパニックになり、ジタバタと手を動かしその体を引き離そうとする。
しかし、零はユウより歳こそ下だが、体の頑健さにおいては遥か上を行く。
それに、華奢でほっそりした体格のユウは、北欧系の血が入っている大柄な零の力にはとても敵わない。
それでも、ユウはなんとか右腕を振り上げると、覆い被さる零の背中をドンっと叩いた。
「ん~……!」
だが、それはか弱い抵抗だった。
零の体は、身動きもしない。
逆に、体重をかけて上に伸し掛かられて、ユウは苦し気な唸り声をもらす。
飲み込みきれない互いの唾液が口から溢れ、ユウは耐え切れずにむせた。
「ゴホッ! ゴホッ!」
顔を真っ赤にして咳き込むユウを押さえ込みながら、零は獰猛な雄の顔になって訊く。
「誤魔化さないでください! あなたが、御堂社長に枕営業をしたと業界では噂になっています。それ、本当なんでしょう?」
「はぁ!?」
「ジュピタープロでは、有り得ないほどの厚待遇らしいじゃないですか」
皮肉気に言い放ち、零は舌打ちをする。
「あなたが、枕営業だなんて汚いマネをする人だとは思わなかった。あなたも、御堂社長も、薄汚い業界の慣習に染まっているクズだっ」
目を見開き、ユウは首を振る。
「ち、違っ――」
「黙れ!」
そう言うと、零はユウのシャツに手をかけ、力任せに引き裂いた。
「っ!」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182
ナラズモノ
亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。
(※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください)
芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。
そんな彼には、密かな夢があった――――。
【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる