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しおりを挟む件の深夜ドラマの主題歌に、畠山ユウの曲を捩じ込もうと思ったが、さすがにそれは難しいようだ。
「ライジング・プロのガキ共で、もう動かないか……」
聖は忌々し気に、キャスト表を抛った。
ドラマとタイアップして新曲発表――よくある手だが、効果的だったのに。
聖は舌打ちして、直立不動で立つ眼前の男に視線を向ける。
視線の先には、ユウのマネージャーを任せられた真壁が立っていた。
「はい。Triangleで、すでに各所へ制作発表がなされています。ユウさんで推すなら、事前に準備する必要がありましたが……今回はあまりに急だったのでさすがに無理です。スポンサー側もそれで決定していますし。しかし、山内を降ろしてユウさんを起用させたので、電波にはワンフレーズですが確実にユウさんの歌は流れます。曲は、とりあえずそれで作る方向で良いと思います」
「そうだな。あとはネットニュースやSNSで人為的に煽って満を持しての新曲発表でもいいし、それこそ電撃的にライブってのもアリか……インディーズのライブに飛び入り参加という手もあるな」
真剣な表情であれこれと思案する聖に、真壁は何か言いたげな顔になる。
それに気づき、聖は「なんだ?」と水を向けた。
意を決したように、真壁は口を開く。
「……お言葉ですが、社長は本当に、畠山ユウをカムバックさせる気ですか?」
「何が言いたい?」
「社長の指示なら全力を尽くしますが、正直言って、三十路で落ち目の歌手がまた脚光を浴びて再ブレイクするのは、現実的に考えると厳しいと思います。そりゃ、畠山ユウの歌声は今なお絶品ですが……せめて女性だったら使いどころもありますが、男性では……なかなか今はCMも厳しいですし……」
これに、聖は不穏な目付きになる。
ピリリとした空気に、真壁は舌が凍ったようになるが、どうにか言葉を絞り出す。
「歌を売り出すなら、映画やCM、ドラマに……今はアニメとタイアップが一番ですが、我がジュピタープロは、タレントや俳優育成には力を入れてそれなりに知名度がありますが、歌手となると……現在は若いインディーズバンドをピックアップして育てて、徐々に音楽業界へ足掛かりを作っているような段階ではありますが――」
「それが、どうした?」
「畠山ユウに歌手としての実力が無いとは、オレも思いません。しかし今は正直言って厳しいです。キャリアもある分、余計に目新しさにも欠けますし。ライジング・プロのタレントのように、ダンスパフォーマンスもする複数人での展開でないと、新規ファンも望めません」
「小さいが、ノア・ミュージックレーベルを買収するつもりだ。ノウハウはそこから強奪する」
「今からですか!?」
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