31 / 101
7
7-5
しおりを挟む
「そう、怖い人なんだ。業績が低迷していたジュピタープロダクションの社長に就任するや否や、一気に経営を立て直した凄腕で有名だけど、同時に、手段を択ばない事でも有名な人なんだ。御堂社長に身包み剝がされて、業界から消えた芸能人が何人もいるんだよ。一見すると、そんな荒事からは縁遠そうな、スタイリッシュでオシャレでスマートな業界人だけどね。僕のようにコニカで二万円スーツじゃなくて、きちんとテーラーメイドのスーツしか着ないし。まぁ社長だからね、そこは当たり前か」
「……岸本さんは格の違いに気圧されての『怖い』なのか?」
「いやいや、それもあるけど、今言った通りにとにかく本当に怖いんだよ。薄い色つき眼鏡の奥から突き刺すような目で睨まれると、こっちは蛇に睨まれたカエルの気分になる」
どうやら、実体験のようだ。
零は、探りを入れる。
「手段を択ばないって言ってたよね? 岸本さんは、御堂社長に睨まれるような事があったの?」
すると岸本は、隠しておくことでもないと思ったのか、正直に話した。
「ああ、実はそうなんだ。以前、ウチのタレントがあの事務所のグラドルと揉めてね。一度、話し合いに立ち会った時があるんだよ。ジュピタープロの系列で、エンジェル企画って会社があるんだけど、あの社長どっちも代表を兼任しているんだ。で、初めてご対面した時に震えあがったワケだ」
「震え上がった?」
「うん。ハッキリ言って、カタギじゃないね。僕らはエンジェル企画の方のオフィスに通されたんだけど、季節が夏だったのが悪かった……シャツを腕まくりしたり、ノーネクタイで上の釦を外したラフな格好のスタッフがいたんだけど、チラチラと見えちゃうわけよ、もんもんってやつが。御堂社長はどうだか知らないけど、そんな恐ろしいスタッフがいる事務所、どう考えても普通じゃないだろう? 話し合いでは、別に向こうからは恫喝されたわけじゃないけど、ただただ怖くてこっちは言われるままに頭を下げるしかなかったね。下手に逆らったら何をされるか。あそこは、やっぱり反社と繋がっているとしか思えないよ」
どうやら、美央の姉情報は正しいようだ。
しかし、本当にそうなのか?
「でも、昔はどうだったか知らないですが、現在も反社と繋がりがあるなんて考え過ぎじゃないですか? ジュピタープロダクション、業界じゃあ中堅の老舗じゃないですか。メジャーな芸能事務所が、今でもそんな――」
「それがねぇ……あそこの芸能事務所は元々天黄会っていう地回りが、明治期に、天黄興行って名前で興した会社だからさ。昭和に入って社名をジュピタープロダクションに替えて、表向きは健全な芸能事務所って事にはなってるけどさ」
だが、看板を替えただけで中身は変わってないだろうと岸本は言う。
「いざトラブルとなると、今でもソチラの方々が係わってきそうで本当に怖いんだよ。誰も家に火なんて点けられたくないでしょ? でも、芸能プロとしては列記とした老舗だから、芸能界ではそれなりに力が強い」
美央も同じ事を言っていた。
「……岸本さんは格の違いに気圧されての『怖い』なのか?」
「いやいや、それもあるけど、今言った通りにとにかく本当に怖いんだよ。薄い色つき眼鏡の奥から突き刺すような目で睨まれると、こっちは蛇に睨まれたカエルの気分になる」
どうやら、実体験のようだ。
零は、探りを入れる。
「手段を択ばないって言ってたよね? 岸本さんは、御堂社長に睨まれるような事があったの?」
すると岸本は、隠しておくことでもないと思ったのか、正直に話した。
「ああ、実はそうなんだ。以前、ウチのタレントがあの事務所のグラドルと揉めてね。一度、話し合いに立ち会った時があるんだよ。ジュピタープロの系列で、エンジェル企画って会社があるんだけど、あの社長どっちも代表を兼任しているんだ。で、初めてご対面した時に震えあがったワケだ」
「震え上がった?」
「うん。ハッキリ言って、カタギじゃないね。僕らはエンジェル企画の方のオフィスに通されたんだけど、季節が夏だったのが悪かった……シャツを腕まくりしたり、ノーネクタイで上の釦を外したラフな格好のスタッフがいたんだけど、チラチラと見えちゃうわけよ、もんもんってやつが。御堂社長はどうだか知らないけど、そんな恐ろしいスタッフがいる事務所、どう考えても普通じゃないだろう? 話し合いでは、別に向こうからは恫喝されたわけじゃないけど、ただただ怖くてこっちは言われるままに頭を下げるしかなかったね。下手に逆らったら何をされるか。あそこは、やっぱり反社と繋がっているとしか思えないよ」
どうやら、美央の姉情報は正しいようだ。
しかし、本当にそうなのか?
「でも、昔はどうだったか知らないですが、現在も反社と繋がりがあるなんて考え過ぎじゃないですか? ジュピタープロダクション、業界じゃあ中堅の老舗じゃないですか。メジャーな芸能事務所が、今でもそんな――」
「それがねぇ……あそこの芸能事務所は元々天黄会っていう地回りが、明治期に、天黄興行って名前で興した会社だからさ。昭和に入って社名をジュピタープロダクションに替えて、表向きは健全な芸能事務所って事にはなってるけどさ」
だが、看板を替えただけで中身は変わってないだろうと岸本は言う。
「いざトラブルとなると、今でもソチラの方々が係わってきそうで本当に怖いんだよ。誰も家に火なんて点けられたくないでしょ? でも、芸能プロとしては列記とした老舗だから、芸能界ではそれなりに力が強い」
美央も同じ事を言っていた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる