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トップ・スターで、プライドの高い、魅力的な歌声を持つ孤高のシンガーソングライター・畠山ユウとして。
――――だが御堂聖は、そんなユウを心配し、とことん甘やかそうとする。
昔、暗がりからユウを助け出してくれたあの時から、ずっと変わらずに。
それはとても有難い事だが、彼の偏愛は、いずれ必ず悪い方向に行ってしまう予感がする。彼に頼りきりになるのだけは踏み止まった方がいいと、本能で感じる程に。
「おい、どうした? 」
物思いに沈みそうになったユウに、聖は声をかけた。
ハッとして、ユウは顔を上げる。
「……すみません。なんか、ボーっとしてました……さすがに最近は、移籍のせいか疲れ気味で」
「それなら仕方ないな。でも、安心しろ。ジュピタープロは業界じゃあ昔は色々言われていたが、オレが社長に収まってからこっち、至極まとも路線だ。有名どころではタレントの高田ヘレンや安藤由香、俳優の近藤茂樹もウチに所属している。メジャーなCMにも起用されるような人材を揃えている、ノーマルでクリーンな芸能プロダクションだ」
聖は、ユウでも知っている著名なタレントを出して、自社の健全さをアピールした。
彼としては、せっかく来てくれた畠山ユウを逃したくはない。
先回りをして、不安の目を潰す。
「しかし昔のイメージが強いのか、未だにジュピタープロはヤバい事務所だと陰口を叩くヤツも未だにいるかもしれないが、そんなのは下らないデマだ。絶対気にするなよ。ウチの事務所は、今は違うんだからな」
「はい」
「だが、正直言って歌手は手薄だ。ジュピタープロダクションは、だいぶ前に音楽業界から撤退していたからな。お前も移籍することだし、ミュージック部門はこれから本格的に投資して増強しようとは思っているが……とりあえず、インディーズで目を掛けているのはあるが、まだまだだな。そうなると、お前はウチの看板になるな」
「看板、ですか」
「ああ。期待しているぜ、ミリオン歌手」
ニヤリと笑うと、聖は、かけていたフレームレスの眼鏡を外した。
そして、ユウの頤に触れる。
「畠山ユウは、紅白にも出演したトップ・スター様だ。スターらしく、我が儘に威張り散らしてオレを困らせてみろ。何があっても、オレは決してお前を裏切らない」
「聖さん……」
「オレは、お前を無視して傷付けた無神経なヤツらとは違う。昔から少しも変わらず、心底お前を愛している。知っているだろう?」
「……」
困ったように押し黙るユウに微笑すると、聖は頤から手を放し、すくっと立ち上がった。
「下には話を通しておくから、オレの所にはいつでも訪ねて来い。夜中だろうと何だろうと歓迎するぜ」
聖はそう言うと、金庫を開けてユウに合鍵を渡した。
――――だが御堂聖は、そんなユウを心配し、とことん甘やかそうとする。
昔、暗がりからユウを助け出してくれたあの時から、ずっと変わらずに。
それはとても有難い事だが、彼の偏愛は、いずれ必ず悪い方向に行ってしまう予感がする。彼に頼りきりになるのだけは踏み止まった方がいいと、本能で感じる程に。
「おい、どうした? 」
物思いに沈みそうになったユウに、聖は声をかけた。
ハッとして、ユウは顔を上げる。
「……すみません。なんか、ボーっとしてました……さすがに最近は、移籍のせいか疲れ気味で」
「それなら仕方ないな。でも、安心しろ。ジュピタープロは業界じゃあ昔は色々言われていたが、オレが社長に収まってからこっち、至極まとも路線だ。有名どころではタレントの高田ヘレンや安藤由香、俳優の近藤茂樹もウチに所属している。メジャーなCMにも起用されるような人材を揃えている、ノーマルでクリーンな芸能プロダクションだ」
聖は、ユウでも知っている著名なタレントを出して、自社の健全さをアピールした。
彼としては、せっかく来てくれた畠山ユウを逃したくはない。
先回りをして、不安の目を潰す。
「しかし昔のイメージが強いのか、未だにジュピタープロはヤバい事務所だと陰口を叩くヤツも未だにいるかもしれないが、そんなのは下らないデマだ。絶対気にするなよ。ウチの事務所は、今は違うんだからな」
「はい」
「だが、正直言って歌手は手薄だ。ジュピタープロダクションは、だいぶ前に音楽業界から撤退していたからな。お前も移籍することだし、ミュージック部門はこれから本格的に投資して増強しようとは思っているが……とりあえず、インディーズで目を掛けているのはあるが、まだまだだな。そうなると、お前はウチの看板になるな」
「看板、ですか」
「ああ。期待しているぜ、ミリオン歌手」
ニヤリと笑うと、聖は、かけていたフレームレスの眼鏡を外した。
そして、ユウの頤に触れる。
「畠山ユウは、紅白にも出演したトップ・スター様だ。スターらしく、我が儘に威張り散らしてオレを困らせてみろ。何があっても、オレは決してお前を裏切らない」
「聖さん……」
「オレは、お前を無視して傷付けた無神経なヤツらとは違う。昔から少しも変わらず、心底お前を愛している。知っているだろう?」
「……」
困ったように押し黙るユウに微笑すると、聖は頤から手を放し、すくっと立ち上がった。
「下には話を通しておくから、オレの所にはいつでも訪ねて来い。夜中だろうと何だろうと歓迎するぜ」
聖はそう言うと、金庫を開けてユウに合鍵を渡した。
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