ヒネクレモノ

亜衣藍

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 売り出し中のアイドルは、本当に多忙だ。
 しかし、だからといって学業を疎かにするわけにはいかない。
 
 Triangleメンバーの未成年者である零と美央は、単位をギリギリまで計算しながら学校へ通う生活を送っていた。

「あ~……オレ、早く成人したい」

 学食で顔を合わせた二人は、お互いに不平不満を口にしていた。

 零より一学年上の美央は、一足先に芸能界で働いている年長の明が気になるらしく、面白くなさそうに口を開く。

「明はいいよな! 酒も堂々と飲めるし、思う存分本業に打ち込めるしさ。あいつ、来月からラジオのコーナーも任されるってよ。同じメンバーなのに、差を付けられる気分だ」

「そう言う美央だって、夏号のB:collectionモデルやるんだろ? オレこそ、皆に差を付けられてるよ」

 零は苦笑交じりに、一つ年上の美央を見遣る。

「成長期で手足がアンバランスに長いから、服の仕事を再開するのはまだ無理だってマネージャーに言われちゃったよ。それに今からこんなに身長があるんじゃ、将来的に美央たちと同じ画面に収まるの苦労しそうだし……」

「あぁ、零のお母さん、北欧の人なんだよな」

「フィンランドだよ。でも、オレは全然向こうの言葉は喋れないぜ」

「でも、ハーフ絡みの仕事は全部零にくるじゃん。タッパもあるし外見は抜群に派手だから、外タレ使うよりも零の方が効率的だってプロデューサーが言ってたぞ」

 美央は明るく言うと、上目遣いに零を見た。

「しかし、北欧系は身長ハンパなくあるよな~。マジでDNAって凄いな。まだ十六なのに、180ってマジかよって感じ。それに、元々お前はモデル上がりじゃん? 成長期が落ち着いたら、嫌って程そっちの仕事が舞い込むと思うぜ? 事務所も絶対に放っておかないよ。それに比べると、オレなんて165だろ? 何だか成長期も止まっちまったようだし。これでモデルなんてこっ恥ずかしくてさ……でも、積極的に色々な仕事しないと、芸能界なんて生き残っていけないし」

 嘆息すると、美央はモリモリとチキンカツを食べる。
 対面で、零はうどんを啜る。

 日本育ちの零は、音を食べて麺を啜ることに抵抗はない。
 しかし、北欧人の母親は眉を顰めるので、家では音を立てて麺類は食べられない。

 だから、こうしてズルズルと小気味よく音を出しながら、好物の日本食を食べられるのは気持ちが良かった。
 満足そうにうどんを頬張る零をチラリと見ながら、美央はゴクンとカツを飲み込むと、再び口を開く。

「そういえば、畠山ユウの話、知ってるか?」
「え? ユウさんが何?」

 あの収録から、一か月が経っていた。
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