ヒネクレモノ

亜衣藍

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 畠山ユウを指して、仕事をしたいと言ってくれる同業は殆どいないし、人付き合いの悪かったユウは、先輩芸能人からも可愛がられていない。

 それで、よくぞここまで、この世界でやってこられたものだと我ながら思う。

「いずれこうなることは分かってはいたけど。でもオレは、どうしてもこういう性格だし……」

 三つ子の魂百まで。
 融通が利かなくて頑固なのは仕方ない。
 今更変われと言われても無理というものだ。

 それでも、自分なりに頑張ってみた初バラエティは……もう溜め息しか出ない。
 ここまで世のニーズに沿わない芸能人など、誰が使いたがるものか。
 芸能界は、もう引退の潮時なのだろうか?

 ユウは、ネットは見ないようにしているが、一時期、自分に引退説や死亡説まで出ていたことは知っている。

 それだけ、もう芸能人としては、影の薄い大昔の歌手と世間に認識されているのだろう。

 今日共演したTriangleというアイドル達も、ユウの事をどこまで知っていたものか怪しいものだ。

(ユキヒトヒラなんて十年以上も前のヒット曲、きっとまともに聴いた事もないんだろうな)

 そう考えたら、途端にゾッとした。

 こんなに落ちぶれた歌手など、今後テレビに映る機会が巡って来るかどうかも分からない。

 事務所も、ユウとは契約更新はしない方針だと、笹山マネージャーが言っていた。

――――歩合制だった昔と違い、今は給料制だ。

 事務所としては、売れなくなった歌手など、もはやお荷物でしかないだろう。

 それでも、長年付き添ってくれたマネージャーはユウの為に歌の仕事を探して、方々に頭を下げてくれあの仕事を取ったのだろう。

 それに応え、自分なりに意を決して出演したが……。

 ふぅ、と、またユウは重い溜め息を吐いた。

 もうこれ以上、笹山マネージャーに迷惑はかけたくない。
 事務所にも、煙たがられたままの状態でいつまでも在籍していたくない。
 そうなると、事務所から独立するか、移籍するか、きっぱり引退するか三択だ。

 故郷には帰るつもりはない。
 ユウはここで、最後まで生きていくつもりだ。

――――ここで生きていくしか、ユウには道がない。

 物思いに沈み込みながら、ユウは自宅マンションへと帰った。

 買ったときは眩いばかりに輝いていた白壁のマンションも、築年数もそれなりに経ち、今は古ぼけて見える。

(こいつも、オレと同じ中古だな)

 ユウは自嘲すると、鍵を開け自室へ入った。
 ユウの究極のテリトリーである部屋は、実に質素だった。
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