ヒネクレモノ

亜衣藍

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 いずれにしても、その頑迷固陋な畠山ユウが、歌番組とはいえ、バラエティ色の強い深夜番組に出演とは確かにセンセーショナルだ。

 しかし、収録に関し元木から箝口令を告げられるとは、どうにもスッキリしない。

 ヤフーニュースを意識していた様子だったのに、あれは勘違いだったのか?

 複雑な顔をする三人に気付かない様子で、岸本は続ける。

「そんな孤高の歌手、畠山ユウもいよいよ崖っぷちという噂は本当だよ。七虹プロも手を焼いて放逐する方針だとか何とか……君らの耳にも入ってるだろう?」

「――はい。それってマジだったんですか?」

「どうも、そうらしいね。今回の仕事は、ずっと彼を支えていた笹山マネが営業を掛けてギリギリで繋げたようだ。彼は、この業界に顔が広いし懐の深いヤツだから、世話になった奴らも多い。だから元木さんも『マイルド女子倶楽部』の代役に畠山ユウを了承したんだろう」

 畠山ユウの起用はハイ・アンド・ローだ。

 バラエティが初の上にそんな頑迷固陋な歌手、収録が上手くいくかどうか分からない。

 確かに、テレビに流すとなれば世間の注目度は高いかもしれないが……。

「収録だから、ある程度は編集で何とかなるだろうけど……アラサーだってからかわないで、あまり畠山ユウをイジメないでやりなよ」

 岸本マネージャーのセリフに、零が「当たり前です」と反応を返す。

「イジメなんて下らない事はしませんよ。オレは畠山ユウさんのCDだって持ってるんだ」

「へぇ! 零ってばユウさんのファンだったんだ。それなら、最初からそう言えよっ」

「……成程な」

 美央も明も納得したように息を吐いた。

 この場において、畠山ユウに対してマイナスイメージを発言していないのは零だけだった。

「リスペクトしている相手をイジメるなんてあり得ないです」

 金髪の派手な外見に似合わず、零は真面目なコメントを返した。

 明はリーダーの責務を全うしようとしてか、台本へ再び視線を戻す。

「じゃあ、流れは零とオレで作って、トークの纏めは美央で行こうか」

「了解」

 美央が、ふと気づいたように岸本マネへ問いかける。

「畠山ユウは、今は? もう楽屋に入った?」

「ああ……着いたら、スタッフが教えてくれるはずだよ」

 岸本マネの答えが終わるのと被さるように、コンコンとドアが叩かれた。

「畠山ユウさん、到着しました」

「……じゃ、挨拶して来るか」

 リーダーの言葉に、美央と零は頷く。

 そんな三人の背中に、岸本マネが声を掛けた。



「相手は元トップ・スターで紅白歌手でも、今や君らの方がずっと売れっ子なんだから。ドーンと構えていいんだからね!」
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