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「今はそんな事はどうでもいい。それより、オレの気持ちを分かってくれたのなら、もう一度チャンスを……」
そう言いさしたタイミングで、「遅くなりました!」という声が降ってきた。
振り返ると、打ち合わせ室のドアを開けてもう一人の担当である甲斐が入室してきたところだった。
甲斐は浅田の顔を見ると、飄々とした様子で会釈を返す。
「平良さん、デザインの件をそろそろ決めてくれないと困るって、校正から苦情が来てましてね。今回は広告収入も大きく見込めるし、編集としても力が入ってるんですわ。オレとしても漫画原稿の方に本腰入れて頂きたいですから、今日パパパッと決めちまいましょうよ」
「甲斐さん……すみませんが、少し外してくれないか」
ゴホンと咳払いをしてそう促した平良に、甲斐はニコッと笑った。
「それはダメです」
「そう――え? ダメ?」
思わず訊き返した平良に、甲斐は大きく頷き返す。
「はい、絶対ダメですね」
「どうしてですか」
戸惑う平良に対し、甲斐はスーッと真顔になると、ハッキリとした口調で答えた。
「だって、そいつはオレが先にツバを付けたんだから、もうオレのもんです。今更、平良先生の出る幕は無いですよ」
「っ!」
甲斐のセリフに、平良は驚愕を。尾上は憤怒の表情になった。
「あんた! なんてこと言いやがる!」
「え? だって、そうだろう?」
「その案件は、まだ許可してませんから!」
「照れるなよぉ」
「うっさい!」
怒声を上げる尾上の顔を横目にしながら、浅田は諦めたように寂しく微笑む。
失った時は、もう戻らない。
“いつか尾上の元を訪れて謝罪する”
そう思いながらとうとう行動に移さなかった、その時点で既に浅田は可能性を失効していたのだ。
そう言いさしたタイミングで、「遅くなりました!」という声が降ってきた。
振り返ると、打ち合わせ室のドアを開けてもう一人の担当である甲斐が入室してきたところだった。
甲斐は浅田の顔を見ると、飄々とした様子で会釈を返す。
「平良さん、デザインの件をそろそろ決めてくれないと困るって、校正から苦情が来てましてね。今回は広告収入も大きく見込めるし、編集としても力が入ってるんですわ。オレとしても漫画原稿の方に本腰入れて頂きたいですから、今日パパパッと決めちまいましょうよ」
「甲斐さん……すみませんが、少し外してくれないか」
ゴホンと咳払いをしてそう促した平良に、甲斐はニコッと笑った。
「それはダメです」
「そう――え? ダメ?」
思わず訊き返した平良に、甲斐は大きく頷き返す。
「はい、絶対ダメですね」
「どうしてですか」
戸惑う平良に対し、甲斐はスーッと真顔になると、ハッキリとした口調で答えた。
「だって、そいつはオレが先にツバを付けたんだから、もうオレのもんです。今更、平良先生の出る幕は無いですよ」
「っ!」
甲斐のセリフに、平良は驚愕を。尾上は憤怒の表情になった。
「あんた! なんてこと言いやがる!」
「え? だって、そうだろう?」
「その案件は、まだ許可してませんから!」
「照れるなよぉ」
「うっさい!」
怒声を上げる尾上の顔を横目にしながら、浅田は諦めたように寂しく微笑む。
失った時は、もう戻らない。
“いつか尾上の元を訪れて謝罪する”
そう思いながらとうとう行動に移さなかった、その時点で既に浅田は可能性を失効していたのだ。
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