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Their circumstances

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 そのアレンと達実が、どういうワケか仲がいいという情報は、以前から采の耳には入っていたが。

 だがどうにも、アレンの方は友人以上の感情を達実に対して持っているようだと――――オメガのように、達実を番にしたいと周囲に漏らしているという情報を得て、そこから采は大いに慌てた。

(何だって、そんなヤバイ野郎の所にノコノコと行ったんだ、あのバカは! )

 チッと舌打ちをして、采はグシャグシャと髪をかき上げていた。

 アレンと達実は互いにアルファ支配者であるし……普通の、仲のいい友人かと思ってすっかり油断していた。

 生意気で憎らしいが、とにかく達実は美しい。

 得難い宝石のように燦然と輝く、大輪の薔薇だ。

 アルファだろうと何だろうと、彼を欲しいと懸想けそうする男は多いだろう。

 皮肉なことに、アレン・シン・アウラは『獅子王』という二つ名で呼ばれているらしい。

 このままそのライオンのねぐらに、大切な(一応)弟を放り込んでおくのは気が引ける。

 兄としては、弟がみすみす餌食になるのは、断じて見過ごすわけにはいかない。

(あの、お人よしが! )

 きっと達実は、まさか友人が自分に対して欲望を抱いているなんて露程つゆほども知らず、今この瞬間も無防備に笑っているんだろう――――人の気も知らないで!

 そう思うと、地団駄を踏みたくなる程に怒りが湧いてくるが、とにかく采はアレンの情報と為人を聞くやいなや行動に移った。

 まず最初に、采は、不動産とホテル経営を営む知人の社長に頼み込み、アレンの宿泊しているホテルを探り当てた。幸運なことに、件のアレンは、采の愛人のオメガの知人が勤めている五つ星ホテルに宿泊していたらしい。

 采はそこから更に、その愛人に協力を仰ぎ、どうにか達実を救い出すことに成功した次第だ。

 まったく、八面六臂と動き回ったので、こっちはすっかり疲労困憊だ。

 兎にも角にも、達実を守れたのは良かったが。

 しかし助け出したはいいが、自分のマンションにはコンシェルジュ以外に仕える人が居ない。だから取り敢えず、恵美と嘉偉が住んでいる九条邸へ達実を連れて行った。

 そこで采は、達実に対し、頭からシャワーをぶっ掛けて全身くまなく洗い、検分した。

 案の定、達実は酒とクスリで意識が混濁した状態で、危うく犯される寸前だったらしい。

 しかし幸いなことに、達実の後孔は熱くぬかるんでいたが、何か異物を呑み込んだ様子はなかった。

 采はどうやら、ギリギリで達実の救出に間に合ったらしい。

――――よかった、と……心底思うと同時に、激しい怒りが込み上げてきた。

(どうしてこいつは、こんなに能天気に奔放ほんぽうに、男達を煽ることが出来るんだ!? 自分のツラを見た事がないのか? これだけの美貌、オメガでもそうそう見ることはないのに! )

 例えアルファであろうと、彼ほどの美しさならば、是非手に入れたいと欲するケダモノは多かろうに。

 自覚の薄いこの義弟には、山程説教を喰らわせたい気分になる。

 しかし、青白い顔で眠っているが、とにかく達実の貞操を守れたことには間違いない。

 そこだけは、心底ホッと胸を撫で下ろした。

 と、同時に、散々たる己の有様に気付き、采はウンザリと溜め息をついた。

 着ているスーツもグシャグシャの皺だらけになり、そのうえ更に、達実の吐瀉物で汚れてしまったので、采はそれまで着ていたスーツをゴミ箱へ放り投げる。

 そうして甥の嘉偉からフリーサイズのウェアを借りると『このバカの面倒を見てやってくれ』と言い残して、采は屋敷を後にした。


 先にも言った通り、アウラを敵には回したくない。


 なので、今回は愛人立野林檎の手を借りて達実を救出したのだが……しかし、よくよく調べれば、裏で九条が手を引いた事がバレるのは時間の問題だろう。

 大事になる前に、今回の騒ぎは沈静化させなければならない。

 なので、采は不本意ではあるが、再びアレン・シン・アウラの宿泊しているホテルへと向かった。

   ◇

「私は怒ってはいないですよ、お兄さん」
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