32 / 116
Cross-purposes of the love
3
しおりを挟む
◇
「おお、タツミ! それは本当かい? 」
アレンは大仰に身を仰け反らして、嘆き声を上げた。
「君の口から恋の悩み事を聞くなんて、私にとっては拷問のようだよ」
その言葉に、達実は微かに苦笑した。
「大袈裟だな……そういうアレンだって、先月キュートなオメガの女優とスクープされていたじゃないか」
達実の揶揄に、アレンは肩を竦める。
「あれは、向こうが勝手に迫って来たんだ。パパラッチを大勢引き連れてね。それに、彼女は確かにキュートではあるが、君の足元にも及ばないよ」
「またそんな事を――そういえば、ピアニストの姫君とはどうなったんだ? 」
アレンには、数多のオメガの恋人がいる。
ピアニストの彼女とは、番になりそうな程に甘い雰囲気だと思っていたのだが……?
すると、アレンは弾かれたように笑った。
「ハハハハ! 君と天秤に掛けられる程の価値が、彼女に有るワケがないだろう? 私はせっかくの休暇を過ごすなら、君としか考えられないね」
「――――そんな事を言うと、オメガの恋人たちに恨まれるぞ? 」
達実は嘆息をしながら、そう窘めた。
アレンの真っ直ぐなセリフは気持ちのいいものだが、彼はアウラの後継者としてそろそろ真剣に番を見付けるべきだ。
友人として、そう思う。
可愛いくて優しくて――――そう、達実の母である、奏のようなオメガを。
アレンの番ならば、それなりに教養もなければ釣り合わないだろう。
オメガの男体は妊娠し難いと長く言われていたが、奏がその常識を覆す画期的な新薬を数年前に開発したので、その問題は既に解決されている。
アレンが好んで女体のオメガを愛人にしているのでなければ、男体も候補に加えてもいいかもしれない。
じつは何度か、達実は知り合いのオメガの男性から口利きを頼まれているのだ。
相手は、奏の研究所に勤める研究員で、達実とも奏とも仲は良い。
頭脳明晰で、素行も好ましい青年だ。
アレンは、アルファとしても男としても充分に魅力的な雄なので、一目見て彼は恋に落ちたらしい。
達実としては、仲のいいそのオメガの研究員と付き合ってもらいたいのだが……。
それとなく達実は、アレンの好みを確かめることにした。
「なぁ、アレンは――恋人にオメガの男体は考えていないのか? 」
「おお、タツミ! それは本当かい? 」
アレンは大仰に身を仰け反らして、嘆き声を上げた。
「君の口から恋の悩み事を聞くなんて、私にとっては拷問のようだよ」
その言葉に、達実は微かに苦笑した。
「大袈裟だな……そういうアレンだって、先月キュートなオメガの女優とスクープされていたじゃないか」
達実の揶揄に、アレンは肩を竦める。
「あれは、向こうが勝手に迫って来たんだ。パパラッチを大勢引き連れてね。それに、彼女は確かにキュートではあるが、君の足元にも及ばないよ」
「またそんな事を――そういえば、ピアニストの姫君とはどうなったんだ? 」
アレンには、数多のオメガの恋人がいる。
ピアニストの彼女とは、番になりそうな程に甘い雰囲気だと思っていたのだが……?
すると、アレンは弾かれたように笑った。
「ハハハハ! 君と天秤に掛けられる程の価値が、彼女に有るワケがないだろう? 私はせっかくの休暇を過ごすなら、君としか考えられないね」
「――――そんな事を言うと、オメガの恋人たちに恨まれるぞ? 」
達実は嘆息をしながら、そう窘めた。
アレンの真っ直ぐなセリフは気持ちのいいものだが、彼はアウラの後継者としてそろそろ真剣に番を見付けるべきだ。
友人として、そう思う。
可愛いくて優しくて――――そう、達実の母である、奏のようなオメガを。
アレンの番ならば、それなりに教養もなければ釣り合わないだろう。
オメガの男体は妊娠し難いと長く言われていたが、奏がその常識を覆す画期的な新薬を数年前に開発したので、その問題は既に解決されている。
アレンが好んで女体のオメガを愛人にしているのでなければ、男体も候補に加えてもいいかもしれない。
じつは何度か、達実は知り合いのオメガの男性から口利きを頼まれているのだ。
相手は、奏の研究所に勤める研究員で、達実とも奏とも仲は良い。
頭脳明晰で、素行も好ましい青年だ。
アレンは、アルファとしても男としても充分に魅力的な雄なので、一目見て彼は恋に落ちたらしい。
達実としては、仲のいいそのオメガの研究員と付き合ってもらいたいのだが……。
それとなく達実は、アレンの好みを確かめることにした。
「なぁ、アレンは――恋人にオメガの男体は考えていないのか? 」
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
【1/23取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる