5 / 116
Worrisome person
4
しおりを挟む
我ながら兄らしい事を言ったなと思ったら、更に物凄い目で睨み返されてしまった。
「はぁ? なんだよそれ」
「い、いや、だから――」
思わずたじろいで口籠ると、達実は火を噴くような勢いで言い返してきた。
「奏は、、オメガなんだぞ! 昔と違って今はヒートを完全制御できるから、オメガは襲われる心配は無いって言いたいのか!? 」
ドンっとローテーブルを拳で叩くと、達実はギリギリと歯軋りをしながら言い募る。
「僕は、アルファだ! だから分かるんだ! どんなに奏が魅力的なのかを!! 」
「――――まぁ、確かに……オレもアルファだから、お前の言い分も分からんでもないが……」
そう言うと、今度は、達実は采をケダモノを見るような眼で睨んできた。
「お前、まさか奏を狙ってないだろうな!? 」
「ふっ……」
一瞬言葉を失うが、直ぐに采は烈火のように言い返す。
「ふざけんな! そんなバカな話があるか!! 」
采も、ローテーブルを手の平でバンっと叩き、達実を正面から見据える。
「こっちはいい加減に、お前の自分勝手な妄想にはウンザリしているんだ。オレはオメガを娶るなら、血筋が良くて大人しい女を選ぶつもりなんだ。それがどうして、オレよりも年上のオメガ男体に手を出すかっていうんだよ!? 目を覚ませ! 」
そう言うと、達実は不満そうに眼を逸らした。
「…………ふぅん、つまんねーの」
「なに? 」
「結局、あんたも古臭い事しか考えないんだな」
「?? 」
何やら達実は、采の言い分にまだ不満がありそうだ。
しかし采は、何もおかしなことは言っていない筈だ。
訳が分からなくて、采は腕組みをして達実を見遣る。
「なんだ? 何かまだ文句があるのか? 」
「――――血筋が良くて、大人しい女のオメガねぇ」
フンっと鼻で笑い、達実は挑戦的な眼差しで采を見返す。
「そんなカタイことを言っているから、いつまでも独身なんじゃないのか? 」
「なっ――」
「あんた、42だろう? 普通なら番の一人もいる筈の年じゃないか。見た目年齢だけは30代をキープしているけど、中身はとっくに年寄りだ。のんきに構えていたら、番はおろか結婚も出来ないぜ」
グサリと突き刺さる言葉に、采は『うっ』と呻いて押し黙る。
達実はそんな采を小馬鹿にしたように見遣ると、スッと立ち上がった。
「生憎と僕は、のんきに構えてどこにいるんだか分からない『運命の番』を待つ気はないんだ。どんどん積極的にアタックして、最高の相手をゲットするつもりさ。あんたと違ってね」
「――」
「それに僕は、ダディが亡くなった今、奏の為にも行動しないとダメになったんだ。奏みたいに可愛いくて魅力的なオメガ、放って置いたら大変な事になっちまう。――――ダディの事は本当に残念だったけど……ダディの分まで、アルファである僕が傍に居て奏を守ってやらないと」
「だから、それが! 」
采は、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げる。
「余計なお世話だっていうんだよ、このクソガキ! 」
「なに? 」
「親父が好きだったのは、奏じゃなくて七海達樹だ! だから親父は……七海のDNAを受け継いだお前のことを大切にして可愛がっていたんだ。実際お前は、七海によく似ているしな」
采の父親である九条凛は、実の息子である采の事は、そのほとんどを教育係と乳母に託し、長じてからは、年の離れた妹である恵美に任せっきりにしていた。
それに対して、達実のことは溺愛と言ってもいいくらいに可愛がり、たとえ遠く離れた場所でも、毎日ネットを介して様子を伺っていた。
これは、ずいぶんな格差であろう。
采は反発して、凜と何度も衝突した。
しかしその度に言われたのは、
『お前は達実よりもずっと年上なんだから、ワガママな子供のような事を言うのではない』
であった。
「はぁ? なんだよそれ」
「い、いや、だから――」
思わずたじろいで口籠ると、達実は火を噴くような勢いで言い返してきた。
「奏は、、オメガなんだぞ! 昔と違って今はヒートを完全制御できるから、オメガは襲われる心配は無いって言いたいのか!? 」
ドンっとローテーブルを拳で叩くと、達実はギリギリと歯軋りをしながら言い募る。
「僕は、アルファだ! だから分かるんだ! どんなに奏が魅力的なのかを!! 」
「――――まぁ、確かに……オレもアルファだから、お前の言い分も分からんでもないが……」
そう言うと、今度は、達実は采をケダモノを見るような眼で睨んできた。
「お前、まさか奏を狙ってないだろうな!? 」
「ふっ……」
一瞬言葉を失うが、直ぐに采は烈火のように言い返す。
「ふざけんな! そんなバカな話があるか!! 」
采も、ローテーブルを手の平でバンっと叩き、達実を正面から見据える。
「こっちはいい加減に、お前の自分勝手な妄想にはウンザリしているんだ。オレはオメガを娶るなら、血筋が良くて大人しい女を選ぶつもりなんだ。それがどうして、オレよりも年上のオメガ男体に手を出すかっていうんだよ!? 目を覚ませ! 」
そう言うと、達実は不満そうに眼を逸らした。
「…………ふぅん、つまんねーの」
「なに? 」
「結局、あんたも古臭い事しか考えないんだな」
「?? 」
何やら達実は、采の言い分にまだ不満がありそうだ。
しかし采は、何もおかしなことは言っていない筈だ。
訳が分からなくて、采は腕組みをして達実を見遣る。
「なんだ? 何かまだ文句があるのか? 」
「――――血筋が良くて、大人しい女のオメガねぇ」
フンっと鼻で笑い、達実は挑戦的な眼差しで采を見返す。
「そんなカタイことを言っているから、いつまでも独身なんじゃないのか? 」
「なっ――」
「あんた、42だろう? 普通なら番の一人もいる筈の年じゃないか。見た目年齢だけは30代をキープしているけど、中身はとっくに年寄りだ。のんきに構えていたら、番はおろか結婚も出来ないぜ」
グサリと突き刺さる言葉に、采は『うっ』と呻いて押し黙る。
達実はそんな采を小馬鹿にしたように見遣ると、スッと立ち上がった。
「生憎と僕は、のんきに構えてどこにいるんだか分からない『運命の番』を待つ気はないんだ。どんどん積極的にアタックして、最高の相手をゲットするつもりさ。あんたと違ってね」
「――」
「それに僕は、ダディが亡くなった今、奏の為にも行動しないとダメになったんだ。奏みたいに可愛いくて魅力的なオメガ、放って置いたら大変な事になっちまう。――――ダディの事は本当に残念だったけど……ダディの分まで、アルファである僕が傍に居て奏を守ってやらないと」
「だから、それが! 」
采は、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げる。
「余計なお世話だっていうんだよ、このクソガキ! 」
「なに? 」
「親父が好きだったのは、奏じゃなくて七海達樹だ! だから親父は……七海のDNAを受け継いだお前のことを大切にして可愛がっていたんだ。実際お前は、七海によく似ているしな」
采の父親である九条凛は、実の息子である采の事は、そのほとんどを教育係と乳母に託し、長じてからは、年の離れた妹である恵美に任せっきりにしていた。
それに対して、達実のことは溺愛と言ってもいいくらいに可愛がり、たとえ遠く離れた場所でも、毎日ネットを介して様子を伺っていた。
これは、ずいぶんな格差であろう。
采は反発して、凜と何度も衝突した。
しかしその度に言われたのは、
『お前は達実よりもずっと年上なんだから、ワガママな子供のような事を言うのではない』
であった。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
アルファとアルファの結婚準備
金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。 😏ユルユル設定のオメガバースです。
君は俺の光
もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】
ヤンデレです。
受けが不憫です。
虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。
もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。
ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。
結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを―――――
明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる