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Worrisome person

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   ◇

 達実は、采と恵美が話し合っている間、別室で、九条凛の遺品をあれこれと眺めていた。

――――凜と達実は、血が繋がっていない。

 にも関わらず、彼はずっと、達実を心から大切に慈しみ誰よりも愛してくれた。

「ダディ……死んじゃうなんてヒドイよ。奏と夫婦になってもらう計画が台無しじゃないか」

 達実はそう呟くと、本当に悔しそうに唇をかんだ。

――――大好きな奏と、大好きな凜が夫婦になってくれれば良いのに。

 達実は、物心が付いてからずっとそう思っていた。

 だから、凜や奏に悪い虫が付かないようにと、ずっと気を張ってガードしていたのに。

 だが肝心の凜が、突然この世を去ってしまった。

 長年に渡って計画していた事がご破算になり、達実の気分は晴れない。

 これでは何の為に、奏に寄せられる男共の求婚をことごとく邪魔してきたのか。全部が無駄な努力に終わってしまった。

 このままでは……これ幸いと、再び奏に求婚するあいつら・・・・がやって来ないとも限らない。

 そう考えると、居ても立ってもいられなくなる。

「よし、急いで飛行機を予約しよう」

 達実はそう決意すると、ポケットからスマホを取り出すが――――。

「おい、達実! 」

「っ! 」

「あと二週間は、日本に居ろよ。親父の法要もあるし、他にも色々手続きがあるんだからな」

 そう言いながら、横柄な態度で部屋に入ってきた義兄を、達実は睨み付ける。

「そんなの、ソッチの勝手だろう。僕には大切な役目があるんだ」


「……もしかして、結城奏母親のガードか? 」


 嘆息しながら、采はソファーへ腰を下ろした。

「あのなぁ、お前が何を考えていたのかこっちも薄々分かってたが――――もう親父はいないんだぜ? 奏と再婚させようなんて目論見は、夢と散ったんだ。もうそろそろ、あの人にも自由に恋愛させてやってもいいんじゃないか? 」

「なにっ!? 」

「お前がずっと邪魔するせいで、全部の縁談がダメになったんだろう? 奏にバレないように男共の妨害をしているって、こっちの耳に入ってるぞ? 中には、オレ九条家にお前をどうにかしてくれって泣き付いて来たヤツもいるんだ。いつまでも母親にベッタリするのは止めて、いい加減に親離れしろよな」
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