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Worrisome person

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「くそっ! あのガキ、こっちが手加減してやればいい気になって……」

 顔を真っ赤にして怒声を上げる采に対して、叔母である恵美はふぅと溜め息をついて声を掛ける。

「なぁに? またケンカしたの? 」

「だって、叔母さん! 」

「……オバサン? 」

「――――え、恵美さん、オレは全然悪くないんですよ! 遺産相続の話し合いにしたって、まさかネットで行えるワケがないじゃないですか! 」

 尤もな言い分に、だが恵美は首を振った。

「ダメよ、そんなの。だってあの子、いっときも奏の傍を離れる気は無かったんでしょう? それを騙すように帰国させたから……あんたが悪いわね」

 そのセリフに、采はまたむぅと頬を膨らませる。

「でも……あいつ、ちょっと異常じゃないですか? だって、18にもなってまだ母親にベッタリなんて――」

「奏は天然ちゃんだから、心配なんでしょうよ」

 そう言うと、恵美は秘書に『紅茶をお願い』と声をかけ、そして采に視線を戻した。

「あの人も、もう48になるワケだけど……ほら、このサイエンス誌見てみなさいよ。ちょうど表紙を飾っているから。……本当、いつまでも若い妖精みたいな人よね」

 恵美が差し出した海外のサイエンス誌の表紙には、どう見ても30代にしか見えない奏の写真が載っていた。

 それを眺めながら、恵美は再び口を開く。

「オメガの男体は、容姿が衰えにくいとは言われているけれど――――それにしても、本当に若々しいわね。それに、清純そうで可愛いし。……彼、海外の要人やセレブからひっきりなしに求婚されているらしいわよ。もっとも、本人は全然本気にしないで、のほほんと笑ってばかりで、恋愛よりも研究一本に没頭しているようだけど。相変わらずねぇ」

 恵美の言葉に、采は『え』と振り向く。

「奏って、今フリーなんですか? 確か――」

 すると、恵美は苦笑交じりに答えた。

「ああ、奏は……あの人は欲がないから――」

 恵美はそう言うと、溜め息をついて肩を竦める。

「やれ、相続だ義理事だっていう話には二度と関わり合いになりたくないからって、ずっと籍に入るのを断っているのよね。でも雑音がうるさいからってアメリカに行ったきりになって――――そうして、今度は呆気なくアメリカからも場所を移してしまって。まったく、それでどれだけの男共が泣いた事だか……」

 しかし、自身がまさかそんなに熱愛されているとは思っていない奏は、さっさと北欧の研究所へ移籍を決断してしまったのだ。

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