マガイモノ

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9-11

「な――」

「とにかく、楽屋でイチャイチャとエロい事をしている図が、こっちは欲しいのヨ。縛られている所は消して、上手く顔がメインで映るように編集してやるよ」

　口調は軽いが、クウガは暗い炎を瞳に浮かべながら、またしても命令した。

「ほら、さっさとキスしろよ」

「……」

「やれって！　」

　クウガはそう言うと、床に転がったままのユウの襟元へと腕を伸ばして、たったいま裂いたシャツの端を乱暴に掴み、グイッと背中の方へと引っ張った。

　後ろ手で拘束された上、今度はシャツまでが肩で絡み付き、本当に上半身の身動きが取れなくなる。そして、美央もユウと同じような格好にさせられた。

「クソッ！　」

　こうも拘束されていては、満足に抵抗も出来ない。

　ナイフまで出されてはお手上げだ。

　悔し気に舌打ちする美央であったが、ユウの方は、次第にそれどころではない状態になりつつあった。

（――――怖い、怖い、怖い……！　）

　最近忘れつつあったPTSD心的外傷後ストレス障害が急激に湧き起こり、ユウの心と体をパニック状態にしていく。

　ネグレストで死にかけた幼少時の過酷な記憶がフラッシュバックして、脳が惑乱する。

「あ……あ、あぁ……！　」

「ユウさん？　」

　ガタガタと震え、蒼白になるユウに、美央は慌てる。

「ど、どうしたんですか？　まさか――」

　美央は、ユウのPTSDについては、以前零から教えてもらっていた。

　一時はその症状がひどくて、零と別れるかどうかまで悩んだらしいという事も。

　でも、もうユウはPTSDは克服したと聞いていたのだが……？

（そうか！　こんな状態にされちゃあ、イヤでも昔の記憶がよみがえるってもんだよな。でもここでパニックになって騒ぎだしたら、本当にグサリとやられちまうぞ!?　）

　焦る美央の耳に、悦に入ったクウガの笑い声が飛び込んできた。