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「失礼します……あの、社長。山舗代表がお見えになっております。指示通り、アポは取り付けていませんが――――どうしましょう? 」
忙しさを理由に、面会を全部断っていたのだ。
しかし今なら、会わざるをえないだろうという計算で訪れたのだろう。
『誤報のお詫び』を、来週の週刊誌にでも載せる条件を突きつけに。
「あの腐れチ○○! 足元見やがって!! 」
「ど、どうしますか? それこそ腐っても山舗代表は荒潮の重鎮ですよ」
そう言いながら、青年は、男が破った記事と雑誌を拾って丁寧に机の上に敷き直す。
腕組しながらそれに目を落とし、男は疑念を口にした。
「――――この写真、撮ったのはどこだ? ユウは滅多にマンションから出ないぞ」
普段、マネージャーとしてユウに仕えている青年はしばし思案した後、答えた。
「多分、海外ですね。ユウさんは先月、台湾公演を行いましたから」
「……で? 」
「はい? 」
「この、隣に写っているクソ野郎はどこのどいつだ? 」
それは、ユウの恋人である(男は未だに認めていないが)元アイドルで、現在モデルをしている柊木・タルヴォ・零ではなかった。
画素が荒いし、目に黒ラインが引いてあるのでよく分からないが、零でない事だけは分かる。
しかしその人物は、随分と親し気にユウの肩を抱いている。
ユウが、自分の知らない男と仲良さそうに映っている写真を見て――――また、男は不快気に眉をひそめた。
「とにかく、山舗に会わないことにはどうしようもねぇ。――――通せ」
「はい」
引き返して行く秘書を見送りながら、青年は口を開く。
「御堂さん! いいんですか!! 」
「――――それと、ユウは今どうしている? 」
「ユウさんですか? 三ヵ月後のパリ公演に備えて、スケジュールを調整中です。今はまだ自宅マンションに居ると思いますが……」
戸惑いながら答えた青年に、男は、ポケットから鍵を取り出してそれを渡した。
「いますぐ、事務所が管理しているマンションへ移ってもらえ」
「え? 」
「ユウは、今や我が社のトップ・スターだ。マスコミが押し掛ける前に、何としても護るんだ」
それ以前に、ユウは男の――――大切な息子だ。
何がなんでも、保護しなければならない。
「行け、真壁! 」
「はい! 」
男の命令に、真壁と呼ばれた青年は即座に身を翻した。
「ユウ……」
残された男は、切なげに我が子の名を呟く。
男の名は、御堂聖。
芸能事務所ジュピター・プロダクション社長にして、傾国の美女と囁かれる美貌の男だった。
忙しさを理由に、面会を全部断っていたのだ。
しかし今なら、会わざるをえないだろうという計算で訪れたのだろう。
『誤報のお詫び』を、来週の週刊誌にでも載せる条件を突きつけに。
「あの腐れチ○○! 足元見やがって!! 」
「ど、どうしますか? それこそ腐っても山舗代表は荒潮の重鎮ですよ」
そう言いながら、青年は、男が破った記事と雑誌を拾って丁寧に机の上に敷き直す。
腕組しながらそれに目を落とし、男は疑念を口にした。
「――――この写真、撮ったのはどこだ? ユウは滅多にマンションから出ないぞ」
普段、マネージャーとしてユウに仕えている青年はしばし思案した後、答えた。
「多分、海外ですね。ユウさんは先月、台湾公演を行いましたから」
「……で? 」
「はい? 」
「この、隣に写っているクソ野郎はどこのどいつだ? 」
それは、ユウの恋人である(男は未だに認めていないが)元アイドルで、現在モデルをしている柊木・タルヴォ・零ではなかった。
画素が荒いし、目に黒ラインが引いてあるのでよく分からないが、零でない事だけは分かる。
しかしその人物は、随分と親し気にユウの肩を抱いている。
ユウが、自分の知らない男と仲良さそうに映っている写真を見て――――また、男は不快気に眉をひそめた。
「とにかく、山舗に会わないことにはどうしようもねぇ。――――通せ」
「はい」
引き返して行く秘書を見送りながら、青年は口を開く。
「御堂さん! いいんですか!! 」
「――――それと、ユウは今どうしている? 」
「ユウさんですか? 三ヵ月後のパリ公演に備えて、スケジュールを調整中です。今はまだ自宅マンションに居ると思いますが……」
戸惑いながら答えた青年に、男は、ポケットから鍵を取り出してそれを渡した。
「いますぐ、事務所が管理しているマンションへ移ってもらえ」
「え? 」
「ユウは、今や我が社のトップ・スターだ。マスコミが押し掛ける前に、何としても護るんだ」
それ以前に、ユウは男の――――大切な息子だ。
何がなんでも、保護しなければならない。
「行け、真壁! 」
「はい! 」
男の命令に、真壁と呼ばれた青年は即座に身を翻した。
「ユウ……」
残された男は、切なげに我が子の名を呟く。
男の名は、御堂聖。
芸能事務所ジュピター・プロダクション社長にして、傾国の美女と囁かれる美貌の男だった。
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