公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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一章 旅路

セオドアとジェイデンの出会い①

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(あの頃は俺の方が良いもの着てたな)



セオドアは12歳の頃のジェイデンを思い出して苦笑した。




セオドアは、子爵騎士の息子である。
父親のテオドールは先代の辺境騎士団長であり、その手腕を買われ今は辺境一帯の代官を務めている。


「セオドア。領主様の屋敷に届け物をしてくれるか」

北の辺境地では、貴族の子息は12歳になると騎士団予備学校に入る決まりがある。
当時、セオドアは騎士団予備学校を卒業したばかり。15歳で、秋からは騎士団へ入団が決まっている。予備学校を主席で卒業した彼は、最後の自由な夏休みをどう過ごそうか楽しみにしていた。

「ええー。これから森に行こうと思ってたのに」
「森に行きたいなら、領主様の屋敷の裏の森があるだろう。普段は禁足地だが、手伝いをしてくれるなら入れるように頼んでやる」
「禁足地に?どうやって?」
「あの屋敷には、いま公爵家の次男が住んでいる。ちょうど今年12歳になられるはずだ。予備学校の入学対象になるから公爵様に入学の是非を聞いたが、好きにさせろと返答がきた」

入学の申請書を持参した褒美に禁足地の森に入る許可を与えてくれ、と手紙に一筆書いておくと、父は筆を取る。


禁足地の森。
普段は近づけもしないその場所へ堂々と足を踏み入れることができる誘いに、セオドアの心は揺れた。


「わかったよ。手紙を渡すだけだからな」


こういう時のセオドールは、絶対に自分の意思を曲げない。そしてどうすれば息子を思い通りに動かすことができるか熟知している父親に、溜息をつなぎながらセオドアは手紙を受け取った。


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