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プロローグ
北の辺境騎士団にて
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ジェイデン・ロンデナートの元に一羽の赤鳩が1通の知らせを運んできた。
北の辺境騎士団に所属するジェイデンは、今まさに食堂で夕食を取ろうとしていたところだ。開け放していた窓から飛び込んできた赤鳩に周囲が注目する。
「赤鳩なんて珍しいな。よっぽど急ぎの用件なのか?」
同僚のセオドアが芋の煮込みをつつきながら、赤鳩の脚から書簡を外してやるジェイデンに声をかける。
「ああ、王都からだな。何の用だ」
そう言いながら書簡を開いたジェイデンの眉が寄る。普段とは違うその様子に、セオドアも食事の手を止めた。
「どうした?」
「…父からだ」
そう言いながら、ジェイデンは前髪をくしゃくしゃに掻きあげる。無造作にまとめていたら金髪が乱れることも気にせず、嫌そうに溜息をついた。表情は険しい。
書簡には父親の字で"来季の登校日から、王都の士官学校に通うように"と書かれている。
(今更、王都の士官学校に行く意味などあるのか)
書簡を睨んだまま動かないジェイデンを見かねて、横に座っていたセオドアが書簡を取り上げる。
「王都の士官学校か。今更って感じもするけどな…。断れねぇんだろ?」
「ああ」
ジェイデンは返事をしながら机の端に止まっている赤鳩の頸を撫でる。喉を鳴らす赤鳩は大人しい鳥にしか見えないが、希少な魔鳥である。
伝書鳩として多くの魔鳥が活躍しているが、その中でも赤鳩は数が少なく、飛ぶ速さは桁違いだ。そのため専ら緊急時に飛ばされることが多く、赤鳩を所有している家は少ない。
「赤鳩なんて久しぶりに見たぜ。魔力を喰うってほんとか?」
「ああ、そうだ。赤鳩は報酬として魔力を喰う」
そう言いながら、ジェイデンは掌に魔力を集める。
手掌の上で炎の様に立ち昇る魔力に合わせて、赤鳩が羽ばたき炎に溶け込むように魔力を喰らう。
心地良さそうに魔力を喰う赤鳩を遠目に見ていた周囲が、次第にざわつき始めた。
「あいかわらず羨ましくなる魔力の量だな」
伝書鳩は、飛ばす者と受け取る者、その両方から報酬として魔力を受け取る。
それが、赤鳩を所有することができる人間が少ない理由だ。
ジェイデンは平然と魔力を与えているが、赤鳩が求める魔力量は他の伝書鳩とは桁違いに多い。
例えば、街でよく見かける連絡用の白鳩なら、食べ物か少量の魔力を与えると誰でも使うことができる。白鳩は短距離しか飛ぶことができないが、赤鳩は魔力しか食べず、白鳩50羽分ほどの魔力量を要する分、飛距離も長く速い。
ここに居る者は、全員が赤鳩を問題なく飛ばせる程度の魔力を持っている。
しかし、それは体調が万全の場合だ。
「お前、昼間あれだけ訓練で魔法ぶっ放しといて、まだそんな残ってんのか」
セオドアの言葉に、唇の端で笑いながらジェイデンが立ち上がる。
それと同時に、満腹になった赤鳩が窓から飛び出していった。
南の空へ。一条の赤い光が走る。
「王都か」
赤鳩の残像を追いながら、ジェイデンは小さく呟いた。
北の辺境騎士団に所属するジェイデンは、今まさに食堂で夕食を取ろうとしていたところだ。開け放していた窓から飛び込んできた赤鳩に周囲が注目する。
「赤鳩なんて珍しいな。よっぽど急ぎの用件なのか?」
同僚のセオドアが芋の煮込みをつつきながら、赤鳩の脚から書簡を外してやるジェイデンに声をかける。
「ああ、王都からだな。何の用だ」
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書簡には父親の字で"来季の登校日から、王都の士官学校に通うように"と書かれている。
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「ああ」
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そう言いながら、ジェイデンは掌に魔力を集める。
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心地良さそうに魔力を喰う赤鳩を遠目に見ていた周囲が、次第にざわつき始めた。
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それと同時に、満腹になった赤鳩が窓から飛び出していった。
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赤鳩の残像を追いながら、ジェイデンは小さく呟いた。
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