男とバレたら即処刑!?聖女な僕が死亡フラグをへし折ります!

日比谷ナオキ

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79話 諦めない

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三週間目。街の人々はざわめいていた。それはそうだ。みんなのアイドル的な立ち位置のセラフィーナ様が、髪型をロングへアからショートヘアに変えていたのだから。

「セラフィーナ様…!?い、イメチェンしたのかな…!?」

「でもアレも可愛いなグヘヘ」

「素敵ねー。私もショートにしちゃおうかしら!」

街の人々の評判は上出来。ショートヘアになったからと言って、特になにか問題が起こるわけでは無いようだ。後は気になる要素と言えば…

「えっ!?セラフィーナ様が短髪に…?」

「ああ。俺も見てきたが…確かにショートヘアになっていた。可愛かったぞ」

「こ、こら!ワグリンさん!相手に惚れてどうするんですか!貴方は私の助手なんですよー!」

「すまん」

助手の大男、ワグリンと共に頭を悩ませるのは、探偵のフィン。ココアをゴクッと一息に飲み干して、がちゃんと音を立ててコースターに降ろす。

アンダンティへと出向いた手応えとしては、正直言って敗北であった。セラフィーナが嘘をついていたのなら、まんまと言いくるめられ、真実を言っていたのなら恥ずかしい妄想を聖女の前に晒したも同然である。

「…落ち着いたらどうだ?」

「よく見抜けましたね。私が焦ってる事」

「昔、ちょいと俳優業に携わっていたものでね。仕草から感情を読み解くのは得意だ」

「はぁー、そりゃ初耳です。私の助手なんてしてないで、独立した方が稼げるんじゃないですか?」

「金は十分持っているのでな。探偵助手はただの趣味だ」

「趣味って…まあ良いですが。ワグリンさん。セラフィーナ様のイメチェンについて、貴方の見解をお聞きしても良いですか?」

「年頃の娘だ。お洒落も嗜みたいはずだ。大して不自然な事じゃない」

ワグリンは少し気まずそうに眉を寄せてから、話を続けた。年頃の娘、という単語に何か思うところがあったのだろう。

「だが、いささか妙なタイミングである事は否めないな。今まで特に、髪を切った事はなかったのだろう?」

「はい。私の調べでは」

「だとしたら、少し不自然だな」

「……そうですね。もし、仮にセラフィーナ様が男だと仮定するなら…」

今の今まで、セラフィーナは髪をショートにした事は無かった。それを、急に男性のような長さに戻した。しかも、フィンが男性では無いか?と言及したタイミングで。

緩やかな糸を、紡ぎ合わせて行く。小川が大きな川となっていく様に、それをひとつの結論へと結びつけていく。そうして、フィンはある結論を導き出した。

「……もしかして…」

「…なにか思いついたようだな」

「ええ。これまたタダの妄想ですが」

こうして、探偵は次にセラフィーナに投げかける質問をもんもんと頭の中で練りまくって行くのだった。
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