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60話 充電完了
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「おおぉ…おっきいですね…!」
「でしょー。じゃあ皆、早速天に感謝して…」
「天命感謝!」
天命感謝。この世界では、食べる時にいただく命と、それを授けてくれた天に感謝してこの言葉を贈る。これを欠かす事は、命に対する冒涜にも等しい悪行でもある。
「あーむっ…甘くておいひい~……」
「幸せぇ~……」
一口食べるだけで、もうほっぺたがへにょへにょに蕩け落ちる。これが山のように積まれているなど、もう楽園状態である。
「(…騎士団でこんなの食ってたら騎士団長からなんか言われそうだな…)」
かわいい女の子に囲まれ、一緒にあまーいお菓子を食べ、男子としてはかなり羨ましい状態のお昼ご飯。騎士団に所属していたら多分、こんな機会は滅多に無いだろう。
「アルヴェルトさん、確か、プリンお好きでしたよね?」
「ん?ああ、確かに好きだが」
「じゃあ、はい。ここのプリン、食べても良いですよ。あーんして下さい」
「え……は!?///」
ビックリしつつ、顔を赤らめるアルヴェルト。元騎士団最強の男とは思えない、聖女様にあーんしちゃう情けない姿。そして、なんか恋人っぽいモーション。二つの意味で彼の心臓はドキドキである。
「遠慮しないで、いっぱいありますからどうぞ!はい、あーんしてください」
「ま、ま、まてまてセラフィーナ様…それはあんまりにも……///」
肝心のセラフィーナはそんなに恥ずかしい事をしている自覚は無い様子。恥ずかしさでどうにかなりそうなアルヴェルト君は、妙な視線に気が付いた。ちらとそちらを見ると、二人はすっげぇニヤニヤしていた。
「(ほらほらー、食べちゃいなよー。セラフィーナちゃんのお誘いだよ~?)」
「(ぷっ、ほらアルヴェルトくん、これ食べなかったら命令違反よ、早くあーんして食べちゃいなさいよ)」
「(て、てめえら…覚えてろよ…!)……あ、あーん……」
しぶしぶ口を開け、パクッと一口。蕩けるような甘さと、セラフィーナに食べさせて貰ったという情けなさでもう胸はパンパンであった。
「ふふ、美味しいですか?」
「……オ、オウ……///」
すっかりカタコトになってしまったアルヴェルト。よく分からないが、美味しそうに食べてくれたのでセラフィーナは大満足である。そんな調子で、だらたらと巨大パフェとの格闘が続いた。完食までもう一息、と言った所で、箸休めにクラウディアはスプーンを置いた。
「そうだ、セラフィーナちゃん達にも伝えておきたいことがあったんだ」
「私達にですか?」
「うん、あ、別に暗い話じゃないからね!この前、とても熱心なセラフィーナちゃんファンの女の子がやってきてね、七聖闘なら、なにかセラフィーナちゃんの事を知ってるんじゃないかって聞いてきたんだ」
「私のファンですか?えへへ…なんだか照れちゃいますね……///」
「うんうん、わかるよその気持ち!ファンがいたら私も喜ぶー!…あ、それでね!凄い可愛い女の子だったからお茶菓子とかお出ししたんだけど、セラフィーナちゃんについてあんまり知らない事を伝えたら、しょぼくれちゃって…」
「あらら……なんだか申し訳ないですね」
「まあ大丈夫。その子がどんな特徴してるかは私しっかり覚えてきたから!これ見て~」
みょいんみょいん、と頭から妙なレーザーが出たかと思ったら、ホログラムのようにして机の上に一人の人物像が浮かび上がってくる。記憶魔術と投影魔術を組みあわせた記憶の映像。そこに浮かんだ人物像を見て、三人はハッと驚く。
「あっ!こ、この人って!」
「この前の探偵さんですね…」
探偵帽を被り、その下に桃色の髪がロングヘアーで伸びている。毛先がくるりと内側に向き、綺麗なカーブを描いている。その髪に合わせたかのような、綺麗なピンクの瞳が特徴の探偵の少女。
フィン・ジェ・アウローラだ。
「あ、知り合いなんだね。良かった~。貴女に会いたがってたから、見かけたら話しかけてあげてー」
「わかりました!…けど、どうして直接私の所に来ないのでしょうか?」
「聖女としての自覚が足りませんね。良いですか、聖女がそんな簡単に一般人と合ってたら、あっさり誘拐されたり、下手したら殺害されたりするんですよ。会いたいと思っても普通は会えないものなんですよ」
「「(うっ)」」
誘拐には二人とも身に覚えがあるので、ルーチェの説明の説得力を嫌でもかという程に感じていた。あはははは、とクラウディアは笑い飛ばすと、付け足した。
「だから、同業者の私なら何か知ってるかもって思って取材に来たわけだね。良い子ちゃんだったし、セラフィーナちゃんも会ってあげて欲しいなーってお願い」
「なるほど…わかりました。フィンさんにお会いしたら、お話しておきますね」
「うん、ありがとー。さて、そろそろラストスパート行っちゃおうか!」
「はい!」
そんなこんなで、楽しいお茶会は進んでいく。セラフィーナはこの国一番のお菓子を存分に堪能して、ここ一週間の苦労も報われたんじゃないかなと心もかなり楽になってきた。これなら、これから先も頑張っていけそうである。幸せいっぱいに包まれて、彼女は生きる喜びを口いっぱいに噛みしめた。
「ごちそうさまでした!」
「美味しかったです。さすが、この国一のお菓子工房なだけありますね」
「どういたしまして!でも、私はこの国一番ではないんだけどね」
そう言って、クラウディアは乾いた笑いを見せる。
「どういうことですか?カフェ・ド・ショコラといえばシンフォニアを代表するお菓子なのに…」
「今はそうだけどね…私が子供のころは、もっとおいしいお菓子屋さんがあったんだ。私がお菓子工房を始めたのも、そこのお菓子屋さんに弟子入りさせてもらうためだったの。私が大人になる前に、店主の人が亡くなってつぶれちゃったんだけどね」
「そうだったんですね…ごめんなさい、安易にこの国一だなんて言ってしまって」
「いいのいいの!みんなはもう知らない世代だしね!それより、今日は本当にありがとう。みんなとお食事できて楽しかったよ!」
「いえいえ、こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。また時間があったら、遊びにきてもよろしいですか?」
「もちろん!いつでもウェルカムだよ」
彼女に笑いかけるクラウディアの顔は、それはそれは嬉しそうだった。七聖闘としての孤独を感じていた彼女にできた、大切なお友達。そのさわやかな笑顔は、友人たちも見ていて安心するものだった。
「さて、そろそろお見送りしないとね。聖女様も暇じゃないでしょ?」
「あはは、それはそうかもしれません。いろいろと…」
本当はそこまで忙しくないのだが、まだセラフィーナには色々問題が山積みだ。それらすべてを解決し終わるまでは、まだまだ多忙な毎日が続くだろう。
「ふふ、それじゃあまたね。セラフィーナちゃん」
「はい、またねです。クラウディアさん」
お互い握手。ひと悶着こそあったが、なんとかやる気を取り戻したセラフィーナ。ここでの体験を明日からの糧に、彼女はこれからも頑張っていくだろう。ここから先は未知の人生。はたして彼女は聖女として無事に生き延びることができるのか。
「でしょー。じゃあ皆、早速天に感謝して…」
「天命感謝!」
天命感謝。この世界では、食べる時にいただく命と、それを授けてくれた天に感謝してこの言葉を贈る。これを欠かす事は、命に対する冒涜にも等しい悪行でもある。
「あーむっ…甘くておいひい~……」
「幸せぇ~……」
一口食べるだけで、もうほっぺたがへにょへにょに蕩け落ちる。これが山のように積まれているなど、もう楽園状態である。
「(…騎士団でこんなの食ってたら騎士団長からなんか言われそうだな…)」
かわいい女の子に囲まれ、一緒にあまーいお菓子を食べ、男子としてはかなり羨ましい状態のお昼ご飯。騎士団に所属していたら多分、こんな機会は滅多に無いだろう。
「アルヴェルトさん、確か、プリンお好きでしたよね?」
「ん?ああ、確かに好きだが」
「じゃあ、はい。ここのプリン、食べても良いですよ。あーんして下さい」
「え……は!?///」
ビックリしつつ、顔を赤らめるアルヴェルト。元騎士団最強の男とは思えない、聖女様にあーんしちゃう情けない姿。そして、なんか恋人っぽいモーション。二つの意味で彼の心臓はドキドキである。
「遠慮しないで、いっぱいありますからどうぞ!はい、あーんしてください」
「ま、ま、まてまてセラフィーナ様…それはあんまりにも……///」
肝心のセラフィーナはそんなに恥ずかしい事をしている自覚は無い様子。恥ずかしさでどうにかなりそうなアルヴェルト君は、妙な視線に気が付いた。ちらとそちらを見ると、二人はすっげぇニヤニヤしていた。
「(ほらほらー、食べちゃいなよー。セラフィーナちゃんのお誘いだよ~?)」
「(ぷっ、ほらアルヴェルトくん、これ食べなかったら命令違反よ、早くあーんして食べちゃいなさいよ)」
「(て、てめえら…覚えてろよ…!)……あ、あーん……」
しぶしぶ口を開け、パクッと一口。蕩けるような甘さと、セラフィーナに食べさせて貰ったという情けなさでもう胸はパンパンであった。
「ふふ、美味しいですか?」
「……オ、オウ……///」
すっかりカタコトになってしまったアルヴェルト。よく分からないが、美味しそうに食べてくれたのでセラフィーナは大満足である。そんな調子で、だらたらと巨大パフェとの格闘が続いた。完食までもう一息、と言った所で、箸休めにクラウディアはスプーンを置いた。
「そうだ、セラフィーナちゃん達にも伝えておきたいことがあったんだ」
「私達にですか?」
「うん、あ、別に暗い話じゃないからね!この前、とても熱心なセラフィーナちゃんファンの女の子がやってきてね、七聖闘なら、なにかセラフィーナちゃんの事を知ってるんじゃないかって聞いてきたんだ」
「私のファンですか?えへへ…なんだか照れちゃいますね……///」
「うんうん、わかるよその気持ち!ファンがいたら私も喜ぶー!…あ、それでね!凄い可愛い女の子だったからお茶菓子とかお出ししたんだけど、セラフィーナちゃんについてあんまり知らない事を伝えたら、しょぼくれちゃって…」
「あらら……なんだか申し訳ないですね」
「まあ大丈夫。その子がどんな特徴してるかは私しっかり覚えてきたから!これ見て~」
みょいんみょいん、と頭から妙なレーザーが出たかと思ったら、ホログラムのようにして机の上に一人の人物像が浮かび上がってくる。記憶魔術と投影魔術を組みあわせた記憶の映像。そこに浮かんだ人物像を見て、三人はハッと驚く。
「あっ!こ、この人って!」
「この前の探偵さんですね…」
探偵帽を被り、その下に桃色の髪がロングヘアーで伸びている。毛先がくるりと内側に向き、綺麗なカーブを描いている。その髪に合わせたかのような、綺麗なピンクの瞳が特徴の探偵の少女。
フィン・ジェ・アウローラだ。
「あ、知り合いなんだね。良かった~。貴女に会いたがってたから、見かけたら話しかけてあげてー」
「わかりました!…けど、どうして直接私の所に来ないのでしょうか?」
「聖女としての自覚が足りませんね。良いですか、聖女がそんな簡単に一般人と合ってたら、あっさり誘拐されたり、下手したら殺害されたりするんですよ。会いたいと思っても普通は会えないものなんですよ」
「「(うっ)」」
誘拐には二人とも身に覚えがあるので、ルーチェの説明の説得力を嫌でもかという程に感じていた。あはははは、とクラウディアは笑い飛ばすと、付け足した。
「だから、同業者の私なら何か知ってるかもって思って取材に来たわけだね。良い子ちゃんだったし、セラフィーナちゃんも会ってあげて欲しいなーってお願い」
「なるほど…わかりました。フィンさんにお会いしたら、お話しておきますね」
「うん、ありがとー。さて、そろそろラストスパート行っちゃおうか!」
「はい!」
そんなこんなで、楽しいお茶会は進んでいく。セラフィーナはこの国一番のお菓子を存分に堪能して、ここ一週間の苦労も報われたんじゃないかなと心もかなり楽になってきた。これなら、これから先も頑張っていけそうである。幸せいっぱいに包まれて、彼女は生きる喜びを口いっぱいに噛みしめた。
「ごちそうさまでした!」
「美味しかったです。さすが、この国一のお菓子工房なだけありますね」
「どういたしまして!でも、私はこの国一番ではないんだけどね」
そう言って、クラウディアは乾いた笑いを見せる。
「どういうことですか?カフェ・ド・ショコラといえばシンフォニアを代表するお菓子なのに…」
「今はそうだけどね…私が子供のころは、もっとおいしいお菓子屋さんがあったんだ。私がお菓子工房を始めたのも、そこのお菓子屋さんに弟子入りさせてもらうためだったの。私が大人になる前に、店主の人が亡くなってつぶれちゃったんだけどね」
「そうだったんですね…ごめんなさい、安易にこの国一だなんて言ってしまって」
「いいのいいの!みんなはもう知らない世代だしね!それより、今日は本当にありがとう。みんなとお食事できて楽しかったよ!」
「いえいえ、こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。また時間があったら、遊びにきてもよろしいですか?」
「もちろん!いつでもウェルカムだよ」
彼女に笑いかけるクラウディアの顔は、それはそれは嬉しそうだった。七聖闘としての孤独を感じていた彼女にできた、大切なお友達。そのさわやかな笑顔は、友人たちも見ていて安心するものだった。
「さて、そろそろお見送りしないとね。聖女様も暇じゃないでしょ?」
「あはは、それはそうかもしれません。いろいろと…」
本当はそこまで忙しくないのだが、まだセラフィーナには色々問題が山積みだ。それらすべてを解決し終わるまでは、まだまだ多忙な毎日が続くだろう。
「ふふ、それじゃあまたね。セラフィーナちゃん」
「はい、またねです。クラウディアさん」
お互い握手。ひと悶着こそあったが、なんとかやる気を取り戻したセラフィーナ。ここでの体験を明日からの糧に、彼女はこれからも頑張っていくだろう。ここから先は未知の人生。はたして彼女は聖女として無事に生き延びることができるのか。
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