男とバレたら即処刑!?聖女な僕が死亡フラグをへし折ります!

日比谷ナオキ

文字の大きさ
上 下
62 / 92

60話 充電完了

しおりを挟む
「おおぉ…おっきいですね…!」

「でしょー。じゃあ皆、早速天に感謝して…」

天命感謝いただきます!」

天命感謝。この世界では、食べる時にいただく命と、それを授けてくれた天に感謝してこの言葉を贈る。これを欠かす事は、命に対する冒涜にも等しい悪行でもある。

「あーむっ…甘くておいひい~……」

「幸せぇ~……」

一口食べるだけで、もうほっぺたがへにょへにょに蕩け落ちる。これが山のように積まれているなど、もう楽園状態である。

「(…騎士団でこんなの食ってたら騎士団長からなんか言われそうだな…)」

かわいい女の子に囲まれ、一緒にあまーいお菓子を食べ、男子としてはかなり羨ましい状態のお昼ご飯。騎士団に所属していたら多分、こんな機会は滅多に無いだろう。

「アルヴェルトさん、確か、プリンお好きでしたよね?」

「ん?ああ、確かに好きだが」

「じゃあ、はい。ここのプリン、食べても良いですよ。あーんして下さい」

「え……は!?///」

ビックリしつつ、顔を赤らめるアルヴェルト。元騎士団最強の男とは思えない、聖女様にあーんしちゃう情けない姿。そして、なんか恋人っぽいモーション。二つの意味で彼の心臓はドキドキである。

「遠慮しないで、いっぱいありますからどうぞ!はい、あーんしてください」

「ま、ま、まてまてセラフィーナ様…それはあんまりにも……///」

肝心のセラフィーナはそんなに恥ずかしい事をしている自覚は無い様子。恥ずかしさでどうにかなりそうなアルヴェルト君は、妙な視線に気が付いた。ちらとそちらを見ると、二人はすっげぇニヤニヤしていた。

「(ほらほらー、食べちゃいなよー。セラフィーナちゃんのお誘いだよ~?)」

「(ぷっ、ほらアルヴェルトくん、これ食べなかったら命令違反よ、早くあーんして食べちゃいなさいよ)」

「(て、てめえら…覚えてろよ…!)……あ、あーん……」

しぶしぶ口を開け、パクッと一口。蕩けるような甘さと、セラフィーナに食べさせて貰ったという情けなさでもう胸はパンパンであった。

「ふふ、美味しいですか?」

「……オ、オウ……///」

すっかりカタコトになってしまったアルヴェルト。よく分からないが、美味しそうに食べてくれたのでセラフィーナは大満足である。そんな調子で、だらたらと巨大パフェとの格闘が続いた。完食までもう一息、と言った所で、箸休めにクラウディアはスプーンを置いた。

「そうだ、セラフィーナちゃん達にも伝えておきたいことがあったんだ」

「私達にですか?」

「うん、あ、別に暗い話じゃないからね!この前、とても熱心なセラフィーナちゃんファンの女の子がやってきてね、七聖闘なら、なにかセラフィーナちゃんの事を知ってるんじゃないかって聞いてきたんだ」

「私のファンですか?えへへ…なんだか照れちゃいますね……///」

「うんうん、わかるよその気持ち!ファンがいたら私も喜ぶー!…あ、それでね!凄い可愛い女の子だったからお茶菓子とかお出ししたんだけど、セラフィーナちゃんについてあんまり知らない事を伝えたら、しょぼくれちゃって…」

「あらら……なんだか申し訳ないですね」

「まあ大丈夫。その子がどんな特徴してるかは私しっかり覚えてきたから!これ見て~」

みょいんみょいん、と頭から妙なレーザーが出たかと思ったら、ホログラムのようにして机の上に一人の人物像が浮かび上がってくる。記憶魔術と投影魔術を組みあわせた記憶の映像。そこに浮かんだ人物像を見て、三人はハッと驚く。

「あっ!こ、この人って!」

「この前の探偵さんですね…」

探偵帽を被り、その下に桃色の髪がロングヘアーで伸びている。毛先がくるりと内側に向き、綺麗なカーブを描いている。その髪に合わせたかのような、綺麗なピンクの瞳が特徴の探偵の少女。

フィン・ジェ・アウローラだ。

「あ、知り合いなんだね。良かった~。貴女に会いたがってたから、見かけたら話しかけてあげてー」

「わかりました!…けど、どうして直接私の所に来ないのでしょうか?」

「聖女としての自覚が足りませんね。良いですか、聖女がそんな簡単に一般人と合ってたら、あっさり誘拐されたり、下手したら殺害されたりするんですよ。会いたいと思っても普通は会えないものなんですよ」

「「(うっ)」」

誘拐には二人とも身に覚えがあるので、ルーチェの説明の説得力を嫌でもかという程に感じていた。あはははは、とクラウディアは笑い飛ばすと、付け足した。

「だから、同業者の私なら何か知ってるかもって思って取材に来たわけだね。良い子ちゃんだったし、セラフィーナちゃんも会ってあげて欲しいなーってお願い」

「なるほど…わかりました。フィンさんにお会いしたら、お話しておきますね」

「うん、ありがとー。さて、そろそろラストスパート行っちゃおうか!」

「はい!」

そんなこんなで、楽しいお茶会は進んでいく。セラフィーナはこの国一番のお菓子を存分に堪能して、ここ一週間の苦労も報われたんじゃないかなと心もかなり楽になってきた。これなら、これから先も頑張っていけそうである。幸せいっぱいに包まれて、彼女は生きる喜びを口いっぱいに噛みしめた。















「ごちそうさまでした!」

「美味しかったです。さすが、この国一のお菓子工房なだけありますね」

「どういたしまして!でも、私はこの国一番ではないんだけどね」

そう言って、クラウディアは乾いた笑いを見せる。

「どういうことですか?カフェ・ド・ショコラといえばシンフォニアを代表するお菓子なのに…」

「今はそうだけどね…私が子供のころは、もっとおいしいお菓子屋さんがあったんだ。私がお菓子工房を始めたのも、そこのお菓子屋さんに弟子入りさせてもらうためだったの。私が大人になる前に、店主の人が亡くなってつぶれちゃったんだけどね」

「そうだったんですね…ごめんなさい、安易にこの国一だなんて言ってしまって」

「いいのいいの!みんなはもう知らない世代だしね!それより、今日は本当にありがとう。みんなとお食事できて楽しかったよ!」

「いえいえ、こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。また時間があったら、遊びにきてもよろしいですか?」

「もちろん!いつでもウェルカムだよ」

彼女に笑いかけるクラウディアの顔は、それはそれは嬉しそうだった。七聖闘としての孤独を感じていた彼女にできた、大切なお友達。そのさわやかな笑顔は、友人たちも見ていて安心するものだった。

「さて、そろそろお見送りしないとね。聖女様も暇じゃないでしょ?」

「あはは、それはそうかもしれません。いろいろと…」

本当はそこまで忙しくないのだが、まだセラフィーナには色々問題が山積みだ。それらすべてを解決し終わるまでは、まだまだ多忙な毎日が続くだろう。

「ふふ、それじゃあまたね。セラフィーナちゃん」

「はい、またねです。クラウディアさん」

お互い握手。ひと悶着こそあったが、なんとかやる気を取り戻したセラフィーナ。ここでの体験を明日からの糧に、彼女はこれからも頑張っていくだろう。ここから先は未知の人生。はたして彼女は聖女として無事に生き延びることができるのか。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...