40 / 92
38話 キス
しおりを挟む
「ああ……俺としては、君とキスする事は全然構わない。だが、君が困るだろうからね……」
「は…はひ……困りましゅ……///」
身も心も女の子のセラフィーナ的には、男の王子様とキスすることも構わないのだが、それでもやっぱりキスというのは照れるものである。
本当に婚約者だったら、それくらいはしたって構わないだろう、というのがフランカ側の推理のはずだ。もしキスが出来ないなら、偽物の婚約者だと疑われる事になる。
「でも…しないとパトリツィオ様も困りますよね……///」
「そうだな……君さえ許してくれるのなら、是非とも頼みたい。俺で良ければ…だが」
そう言って、パトリツィオは顔を薄紅色に染めていく。その愛らしさと美しさに、セラフィーナの胸はドキドキと高鳴っていく。
「わ、私は……///」
「ちょっと待ったァー!!」
どばぁーん!と扉が開かれ、一人の男が飛び込んでくる。専属騎士、アルヴェルト君である。さっきまで隠れていたのだが、キスだの婚約者だのの話を聞いて我慢できずに飛び出して来たのである。
「うわっ!誰だ君は!?」
「あっ!す、すみません!アルヴェルト・ドラゴラッジと言って、私の専属騎士です!」
「黙って聞いてりゃ、婚約者だのキスだの一体どういう事なんだ!まさか、既に二人は出来上がってるって言うのか!?」
「専属騎士…落ち着いてくれアルヴェルト君!これには深い訳がある!」
専属騎士を宥めるが、彼はプンプン怒っていて話を聞いてくれそうにない。今にも襲いかかってしまいそうなアルヴェルトの前に、セラフィーナが止めに入る。
「落ち着いて下さい、アルヴェルトさん。これは演技なんですよ」
「…演技?」
かくかくしかじか、事情を説明する。全てを聞いて納得したのか、アルヴェルトはようやくしゅーんと大人しくなった。
「……す、すんません…早とちりしてしまって……」
「はは、気にしないで欲しい。傍から見たら誤解されるような関係だったからね。専属騎士として、彼女の事をよろしく頼むよ」
「はい…失礼します」
そんな訳で、アルヴェルトは再び護衛係に専任する事に。寛大な王子様に感謝しつつ、話を戻す。聖女セラフィーナは、キスするかどうかの分水嶺に立たされてしまったのである。
「もし…キスしてくれるのなら、お礼に何か君に差し上げよう。嘘偽りで乙女の純情を奪うなど、男としてとても情けない…」
「ありがとうございます…ですが、もう少し考えさせて下さい…///」
嘘偽りなら正直自分もお互い様だが。それでも、そんな簡単に答えを出せるような問題では無い。
「そうだな…君にも考える時間が必要だろう、無理なら無理と言ってほしい。それで君に怒ったりはしない」
王子様と口と口でちゅーなんてされたら興奮しすぎてセラフィーナがぶっ倒れる可能性がある。彼とキスをして、その上で自分が倒れない方法を考えねばならない。
「(考えろ…考えろ僕…キスをしないで…キスをする方法……)」
ぽくぽくぽくぽく。どうにか上手くフランカを誤魔化さなくてはならない。必死に頭をぽてくりこかし、案を必死に練り込んでいく。彼女に浅はかな嘘は通用しない。ならば…
「…思いつきました!パトリツィオ様、どうか私の作戦にご助力願えませんか?」
「…なにか思いついたのか!わかった、協力しよう。して、その作戦とは…?」
「はい…ごにょごにょ……」
「……なるほど、それならフランカも諦めてくれそうだ。試してみるとしよう!」
パトリツィオも彼女の作戦を聞いて、納得してくれた様子だ。果たして、セラフィーナの思いついた作戦とはなんなのか。耳打ちしていて聞こえなかったアルヴェルトは不思議そうに首を傾げるしか無かった。
「は…はひ……困りましゅ……///」
身も心も女の子のセラフィーナ的には、男の王子様とキスすることも構わないのだが、それでもやっぱりキスというのは照れるものである。
本当に婚約者だったら、それくらいはしたって構わないだろう、というのがフランカ側の推理のはずだ。もしキスが出来ないなら、偽物の婚約者だと疑われる事になる。
「でも…しないとパトリツィオ様も困りますよね……///」
「そうだな……君さえ許してくれるのなら、是非とも頼みたい。俺で良ければ…だが」
そう言って、パトリツィオは顔を薄紅色に染めていく。その愛らしさと美しさに、セラフィーナの胸はドキドキと高鳴っていく。
「わ、私は……///」
「ちょっと待ったァー!!」
どばぁーん!と扉が開かれ、一人の男が飛び込んでくる。専属騎士、アルヴェルト君である。さっきまで隠れていたのだが、キスだの婚約者だのの話を聞いて我慢できずに飛び出して来たのである。
「うわっ!誰だ君は!?」
「あっ!す、すみません!アルヴェルト・ドラゴラッジと言って、私の専属騎士です!」
「黙って聞いてりゃ、婚約者だのキスだの一体どういう事なんだ!まさか、既に二人は出来上がってるって言うのか!?」
「専属騎士…落ち着いてくれアルヴェルト君!これには深い訳がある!」
専属騎士を宥めるが、彼はプンプン怒っていて話を聞いてくれそうにない。今にも襲いかかってしまいそうなアルヴェルトの前に、セラフィーナが止めに入る。
「落ち着いて下さい、アルヴェルトさん。これは演技なんですよ」
「…演技?」
かくかくしかじか、事情を説明する。全てを聞いて納得したのか、アルヴェルトはようやくしゅーんと大人しくなった。
「……す、すんません…早とちりしてしまって……」
「はは、気にしないで欲しい。傍から見たら誤解されるような関係だったからね。専属騎士として、彼女の事をよろしく頼むよ」
「はい…失礼します」
そんな訳で、アルヴェルトは再び護衛係に専任する事に。寛大な王子様に感謝しつつ、話を戻す。聖女セラフィーナは、キスするかどうかの分水嶺に立たされてしまったのである。
「もし…キスしてくれるのなら、お礼に何か君に差し上げよう。嘘偽りで乙女の純情を奪うなど、男としてとても情けない…」
「ありがとうございます…ですが、もう少し考えさせて下さい…///」
嘘偽りなら正直自分もお互い様だが。それでも、そんな簡単に答えを出せるような問題では無い。
「そうだな…君にも考える時間が必要だろう、無理なら無理と言ってほしい。それで君に怒ったりはしない」
王子様と口と口でちゅーなんてされたら興奮しすぎてセラフィーナがぶっ倒れる可能性がある。彼とキスをして、その上で自分が倒れない方法を考えねばならない。
「(考えろ…考えろ僕…キスをしないで…キスをする方法……)」
ぽくぽくぽくぽく。どうにか上手くフランカを誤魔化さなくてはならない。必死に頭をぽてくりこかし、案を必死に練り込んでいく。彼女に浅はかな嘘は通用しない。ならば…
「…思いつきました!パトリツィオ様、どうか私の作戦にご助力願えませんか?」
「…なにか思いついたのか!わかった、協力しよう。して、その作戦とは…?」
「はい…ごにょごにょ……」
「……なるほど、それならフランカも諦めてくれそうだ。試してみるとしよう!」
パトリツィオも彼女の作戦を聞いて、納得してくれた様子だ。果たして、セラフィーナの思いついた作戦とはなんなのか。耳打ちしていて聞こえなかったアルヴェルトは不思議そうに首を傾げるしか無かった。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる