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27話 七聖闘
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「聖教会に関わる重罪には全て七聖闘が関与する。重犯罪者が逃亡を図ろうとするのを阻止するためにもな」
「っ……」
七聖闘。それは聖教会から直々に任命される特別な位であり、その名の通り七人がその座に就いている。彼等は聖教会に携わる事件の裁判に赴き、事の顛末を見届けて教会に報告する任務を任されている。各王国につき一人、合計七国を担当している。
しかし、その実態はそんな簡素なものでは無い。七聖闘は完全な武の実力によって教会に認められた者が成る位であり、その力は当人達がその気になればたった一人で国を転覆させる事すら可能なほど。彼等の存在意義とは、即ち聖教会の力の象徴。絶対的な正義の執行者なのである。いくら熟練の騎士を相手に圧倒できるアルヴェルトでも、国を相手に勝利を掴むなど不可能に等しい。
「腕に覚えはあるだろうが、打ち勝てる等と思うなよ。裁判の始まりイコールお前の死だ。それは覚悟しておけ」
アルヴェルトはもはや、黙って頷くより他に無かった。避けられぬ死、それがセラフィーナの判断次第で決まるという今の状況に、背筋を震わせるより他になかった。
「本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
「気に病まないで下さいね、騎士団長…」
ルーチェは今にも泣き出してしまいそうな騎士団長をなだめつつ、本来の職務へと戻ることにする。誘拐犯も捕まり、職務も終わったので、二人は屋敷に戻ることにした。アルヴェルトの命運を握ってるとも微塵も知らないセラフィーナは、これからの予定を考えていた。
「ルーチェさん、午後は魔術の特訓ですよね?」
「はい。特訓後に夕食、その後は前日と同じです。何か問題はありますか?」
「いいえ、問題は……あ。あの騎士さんの処遇はどうしましょうか?」
「…彼の処遇は私には決められません。セラフィーナさん、専属騎士は貴女の手駒そのものになるのですから」
「えっ?私が……?」
「はい。専属騎士は、私達のように聖女様のために教会から派遣された者では無く、聖女様が雇われた者になるため、聖女様の『私物』という扱いになります。その為、私達はあの騎士には手を出せません。給料、手当、勤務時間にその内容。全て貴女に決めて頂くのです」
言い方を変えてしまえば、専属騎士というものは完全に雇い主の奴隷という事になる。もちろん、不当な扱いをすれば騎士側から反逆されかねないので多くの雇い主はまともな内容で職務につかせるのだが。
「…わかりました。では彼の処遇は私が決めます。私が雇うと決めましたからね」
「ええ。お任せ致します」
お互い頷き合い、再び来た道を戻っていく。男だとバレることなく騎士団との挨拶を済ませ、ひと安心するセラフィーナ。ひとまずは問題無し。誰も彼もが、彼女を女だと信じているだろう。このまま上手くいくと良いのだが…はたして。
「っ……」
七聖闘。それは聖教会から直々に任命される特別な位であり、その名の通り七人がその座に就いている。彼等は聖教会に携わる事件の裁判に赴き、事の顛末を見届けて教会に報告する任務を任されている。各王国につき一人、合計七国を担当している。
しかし、その実態はそんな簡素なものでは無い。七聖闘は完全な武の実力によって教会に認められた者が成る位であり、その力は当人達がその気になればたった一人で国を転覆させる事すら可能なほど。彼等の存在意義とは、即ち聖教会の力の象徴。絶対的な正義の執行者なのである。いくら熟練の騎士を相手に圧倒できるアルヴェルトでも、国を相手に勝利を掴むなど不可能に等しい。
「腕に覚えはあるだろうが、打ち勝てる等と思うなよ。裁判の始まりイコールお前の死だ。それは覚悟しておけ」
アルヴェルトはもはや、黙って頷くより他に無かった。避けられぬ死、それがセラフィーナの判断次第で決まるという今の状況に、背筋を震わせるより他になかった。
「本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
「気に病まないで下さいね、騎士団長…」
ルーチェは今にも泣き出してしまいそうな騎士団長をなだめつつ、本来の職務へと戻ることにする。誘拐犯も捕まり、職務も終わったので、二人は屋敷に戻ることにした。アルヴェルトの命運を握ってるとも微塵も知らないセラフィーナは、これからの予定を考えていた。
「ルーチェさん、午後は魔術の特訓ですよね?」
「はい。特訓後に夕食、その後は前日と同じです。何か問題はありますか?」
「いいえ、問題は……あ。あの騎士さんの処遇はどうしましょうか?」
「…彼の処遇は私には決められません。セラフィーナさん、専属騎士は貴女の手駒そのものになるのですから」
「えっ?私が……?」
「はい。専属騎士は、私達のように聖女様のために教会から派遣された者では無く、聖女様が雇われた者になるため、聖女様の『私物』という扱いになります。その為、私達はあの騎士には手を出せません。給料、手当、勤務時間にその内容。全て貴女に決めて頂くのです」
言い方を変えてしまえば、専属騎士というものは完全に雇い主の奴隷という事になる。もちろん、不当な扱いをすれば騎士側から反逆されかねないので多くの雇い主はまともな内容で職務につかせるのだが。
「…わかりました。では彼の処遇は私が決めます。私が雇うと決めましたからね」
「ええ。お任せ致します」
お互い頷き合い、再び来た道を戻っていく。男だとバレることなく騎士団との挨拶を済ませ、ひと安心するセラフィーナ。ひとまずは問題無し。誰も彼もが、彼女を女だと信じているだろう。このまま上手くいくと良いのだが…はたして。
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