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プロローグ
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「セラフィーナ・ラガザハート。汝は男でありながら聖女の地位に就いた。それはこの国の法、ひいては国そのものを欺いた重罪である。よって汝に死刑を言い渡す」
その言葉と共に、僕の死は確定してしまった。どんなに嘆いても、喚いても、死ぬ事は変わらない。逃げ出したって殺される。僕は抵抗することも無く死刑台へと立たされ、ギロチンにその首がかけられる。高い高い死刑台から街を見下ろしながら、僕は絶望にその身を駆られていた。
「……どうして…」
静かに、そう呟くしか無かった。僕はただ、みんなに可愛いって言われたかっただけなのに。女の子のようになって、それで女の子のまま、街で静かに暮らしたかっただけなのに。
痛々しい木の感触が首に伝わる。ひんやりと冬の空気を吸ったそれは、ただ冷たく死の匂いを漂わせている。その冷たさに、身も心も凍り付いてしまうようだった。
「最期に言い残すことはあるか?」
「ありません…どうぞ、一思いに…」
「…承知した」
けれど、仕方ない事なのかもしれない。聖女というのは、本当は肉体的に女の子じゃないとなれない物なのだから。僕なんかが聖女になるのは、きっと間違っている事なんだ。
重々しい死の刃が、まだかまだかと罪人の首の上で舌なめずりをしている。それを支える縄が緩められ、ゆっくりと、その体が重力という力に解放されていく。
「さらばだ、聖女。せめて安らかに眠れ」
死刑が執行される。首が跳ね飛ばされ、鮮血が辺りに撒き散らされる。確定した未来への空想に、恐怖が吹き出て彼女の意識を支配していく。恐怖によって圧制され、必死に保っていた意識が遠のいていく。そうして、ゆっくりと光の果てに消え去っていく。死の間際、それでも彼女は疑問に思っていた。
どうして、自分は殺されてしまうのだろう。男が可愛く着飾って、聖女になったって神様は怒らないんじゃないかな。やっぱり、こんな最期は嫌だった。死にたくない、こんな理不尽な仕打ちで死刑になるなんて、信じられない。そう思うと、身体が熱くなって、燃え盛るようで。抗いようのない死に抗えるような気さえして。
痛みは無かった。もう死んでいるからなのか、それとも痛覚が機能しない程に痛みを感じているのか。なんにしても、数秒後には消える意識だ。あまり深く考えるのは辞めにしよう。僕はゆっくりと、薄れ行く意識を眼前に広がる光に委ねる事にした。
その言葉と共に、僕の死は確定してしまった。どんなに嘆いても、喚いても、死ぬ事は変わらない。逃げ出したって殺される。僕は抵抗することも無く死刑台へと立たされ、ギロチンにその首がかけられる。高い高い死刑台から街を見下ろしながら、僕は絶望にその身を駆られていた。
「……どうして…」
静かに、そう呟くしか無かった。僕はただ、みんなに可愛いって言われたかっただけなのに。女の子のようになって、それで女の子のまま、街で静かに暮らしたかっただけなのに。
痛々しい木の感触が首に伝わる。ひんやりと冬の空気を吸ったそれは、ただ冷たく死の匂いを漂わせている。その冷たさに、身も心も凍り付いてしまうようだった。
「最期に言い残すことはあるか?」
「ありません…どうぞ、一思いに…」
「…承知した」
けれど、仕方ない事なのかもしれない。聖女というのは、本当は肉体的に女の子じゃないとなれない物なのだから。僕なんかが聖女になるのは、きっと間違っている事なんだ。
重々しい死の刃が、まだかまだかと罪人の首の上で舌なめずりをしている。それを支える縄が緩められ、ゆっくりと、その体が重力という力に解放されていく。
「さらばだ、聖女。せめて安らかに眠れ」
死刑が執行される。首が跳ね飛ばされ、鮮血が辺りに撒き散らされる。確定した未来への空想に、恐怖が吹き出て彼女の意識を支配していく。恐怖によって圧制され、必死に保っていた意識が遠のいていく。そうして、ゆっくりと光の果てに消え去っていく。死の間際、それでも彼女は疑問に思っていた。
どうして、自分は殺されてしまうのだろう。男が可愛く着飾って、聖女になったって神様は怒らないんじゃないかな。やっぱり、こんな最期は嫌だった。死にたくない、こんな理不尽な仕打ちで死刑になるなんて、信じられない。そう思うと、身体が熱くなって、燃え盛るようで。抗いようのない死に抗えるような気さえして。
痛みは無かった。もう死んでいるからなのか、それとも痛覚が機能しない程に痛みを感じているのか。なんにしても、数秒後には消える意識だ。あまり深く考えるのは辞めにしよう。僕はゆっくりと、薄れ行く意識を眼前に広がる光に委ねる事にした。
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