53 / 82
番外編 サブストーリー
2話「アクィオン」
しおりを挟む
「さっ、頑張っていきましょぉん。夜は長いからねぇぇん。」
「は、はい!…」
レーバの声に威勢よく返事するスフレだったが、内心この持ってきた杖の事が気になっていた。手に取った途端にクラっとしたあの感覚が、スフレの頭にぴったりくっついているのだ。ついでに言うと、愛用の魔道本まで忘れてきてしまった。これでは上手く戦えない。
「(どういうものなのでしょうか…トモヤさんの持っている武器と同じ神器…なのでしょうか…)」
「…。…ねぇねぇスフレちゃぁん?辻斬りってどういう奴が狙われると思うぅ?」
突然の質問に、スフレは「ふぇ!?」と驚いた様子でレーバの方を見る。
「え、あ、えと…そうですね、今までの被害を考えると…自衛能力の低いスライム等でしょうか…?」
「なるほどねぇん。…それじゃあアルターの方に向かってみようかしらん。」
と、レーバはひょこひょこと軽い足取りで進んでいく。スフレもそれに続いて街を見回っていく。
…
アルター。ハルバトルソの外村の一つで、少なかった住人が魔物の移住によって一気に増加した村だ。住民の大半がスライムやゴブリンなど、魔物の中でも比較的非力な者達で構成されている。
「さぁて、辻斬りは現れるかしらねぇん。」
「それはわかりませんが…警戒するに越したことは無いですね。」
村の人々も農民が大半で、戦える人物はごく僅かだ。辻斬りから見れば、格好のカモかもしれない。
「ぴぎー!助けてっぴー!」
「こ、この声は…!」
「ええ、行きましょう!」
…
「殺されるっぴー!」
と、走り回るスライム。それを追いかけているのは、黒い仮面をつけ、刀を持った人間。アレが魔物切りだろう。
「止まりなさい!」
と、レーバはスライムと男の間に割って入り、男を制止する。男が反応するよりも早く杖を突き付け、動きを封じ込める。
「動かないでねぇん。ちょっとでも変な事したら、お姉さんがおいたしちゃうわよぉぉん。」
「…」
黒い仮面を被った人間は降参したかのように武器を下ろし、レーバの言う通り動かなくなる。
「そうそう、良い子ねぇ…」
「(す、凄い…レーバさんの動き、速すぎて見えませんでした…)」
スフレが驚いていると、逃げていたスライムがぴょこんとスフレの後ろへと隠れる。
「た、助かったっぴ~…ありがとうっぴ!」
「いえ、良いんですよ。さあ、今のうちに逃げて下さい。」
「はいっぴ!」
ピュー!っとスライムは逃げ出し、通路には辻斬りとレーバ、そしてそれを見つめるスフレの三人のみになった。
「さぁて、教えてもらおうかしらん。どうして魔物を切るような真似をしているのかしら。」
「…我が名はアクィオン…アクィオンは…絶対なり…全てを滅す…尊き炎なり…」
仮面を付けた人間は機械的な口調で淡々と答える。まるで、最初からそう言うように仕組まれているかのように。
「…洗脳魔法ねぇ。スフレちゃん!」
「は、はい!」
「悪いけど、少しこの仮面野郎を抑えといてくれる?洗脳魔法にかかってるみたいなのん。私が解呪するからぁ、それまでお願い。」
「お任せ下さい!」
スフレはバッと懐から杖を取り出し、その手に構える。間違えて持ってきてしまった杖が、スフレの意志に呼応する。
『…訂正者。我が主の力に応え、その真髄を発揮する事を許可す。第一魔術、始動。』
「えっ…!?」
────キィィィン!!!
その声がスフレの脳内に響き渡ったと同時に、輝かしい光が杖から溢れ始めた。
「は、はい!…」
レーバの声に威勢よく返事するスフレだったが、内心この持ってきた杖の事が気になっていた。手に取った途端にクラっとしたあの感覚が、スフレの頭にぴったりくっついているのだ。ついでに言うと、愛用の魔道本まで忘れてきてしまった。これでは上手く戦えない。
「(どういうものなのでしょうか…トモヤさんの持っている武器と同じ神器…なのでしょうか…)」
「…。…ねぇねぇスフレちゃぁん?辻斬りってどういう奴が狙われると思うぅ?」
突然の質問に、スフレは「ふぇ!?」と驚いた様子でレーバの方を見る。
「え、あ、えと…そうですね、今までの被害を考えると…自衛能力の低いスライム等でしょうか…?」
「なるほどねぇん。…それじゃあアルターの方に向かってみようかしらん。」
と、レーバはひょこひょこと軽い足取りで進んでいく。スフレもそれに続いて街を見回っていく。
…
アルター。ハルバトルソの外村の一つで、少なかった住人が魔物の移住によって一気に増加した村だ。住民の大半がスライムやゴブリンなど、魔物の中でも比較的非力な者達で構成されている。
「さぁて、辻斬りは現れるかしらねぇん。」
「それはわかりませんが…警戒するに越したことは無いですね。」
村の人々も農民が大半で、戦える人物はごく僅かだ。辻斬りから見れば、格好のカモかもしれない。
「ぴぎー!助けてっぴー!」
「こ、この声は…!」
「ええ、行きましょう!」
…
「殺されるっぴー!」
と、走り回るスライム。それを追いかけているのは、黒い仮面をつけ、刀を持った人間。アレが魔物切りだろう。
「止まりなさい!」
と、レーバはスライムと男の間に割って入り、男を制止する。男が反応するよりも早く杖を突き付け、動きを封じ込める。
「動かないでねぇん。ちょっとでも変な事したら、お姉さんがおいたしちゃうわよぉぉん。」
「…」
黒い仮面を被った人間は降参したかのように武器を下ろし、レーバの言う通り動かなくなる。
「そうそう、良い子ねぇ…」
「(す、凄い…レーバさんの動き、速すぎて見えませんでした…)」
スフレが驚いていると、逃げていたスライムがぴょこんとスフレの後ろへと隠れる。
「た、助かったっぴ~…ありがとうっぴ!」
「いえ、良いんですよ。さあ、今のうちに逃げて下さい。」
「はいっぴ!」
ピュー!っとスライムは逃げ出し、通路には辻斬りとレーバ、そしてそれを見つめるスフレの三人のみになった。
「さぁて、教えてもらおうかしらん。どうして魔物を切るような真似をしているのかしら。」
「…我が名はアクィオン…アクィオンは…絶対なり…全てを滅す…尊き炎なり…」
仮面を付けた人間は機械的な口調で淡々と答える。まるで、最初からそう言うように仕組まれているかのように。
「…洗脳魔法ねぇ。スフレちゃん!」
「は、はい!」
「悪いけど、少しこの仮面野郎を抑えといてくれる?洗脳魔法にかかってるみたいなのん。私が解呪するからぁ、それまでお願い。」
「お任せ下さい!」
スフレはバッと懐から杖を取り出し、その手に構える。間違えて持ってきてしまった杖が、スフレの意志に呼応する。
『…訂正者。我が主の力に応え、その真髄を発揮する事を許可す。第一魔術、始動。』
「えっ…!?」
────キィィィン!!!
その声がスフレの脳内に響き渡ったと同時に、輝かしい光が杖から溢れ始めた。
0
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】異世界アイドル事務所〜アナタの才能、発掘します!〜
成瀬リヅ
ファンタジー
「願わくば、来世で彼女をトップアイドルに……」
そう思いながら死んだアイドルプロデューサーの俺・小野神太は、気付けば担当アイドルと共に多種族の住む異世界へ転生していた!
どうやら転生を担当した者によれば、異世界で”トップアイドルになれるだけの価値”を示すことができれば生き返らせてくれるらしい。
加えて”アイドル能力鑑定チート”なるものも手に入れていた俺は、出会う女性がアイドルに向いているかどうかもスグに分かる!なら異世界で優秀なアイドルでも集めて、大手異世界アイドル事務所でも作って成り上がるか!
————————
・第1章(7万字弱程度)まで更新します。それ以降は未定です。
・3/24〜HOT男性向けランキング30位以内ランクイン、ありがとうございます!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる