盾役として異世界転生したけど、無敵の盾で無双します

日比谷ナオキ

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49話「無敵」

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「そうだ…俺はまだ…こんな所で諦める訳にはいかない!…世界を…皆を…守護まもるんだ!」

トモヤは立ち上がった。もう、皆が諦め切っていると言うのに。誰一人、勝利を掴めないと理解してしまっているのに。それでも彼は立ち上がった。

「あっはっはっは!馬鹿じゃないの?もう誰も、勝とうだなんて考えていない。私の力の前に、ひれ伏すしか無いのよ!下等なゴミ共が!」

「…確かに、お前の力はすげえよ。こんな暗闇、どう攻略すれば良いかなんてわからねえ。…でもな。俺だって諦められねえんだよ。どんなに辛い状況だろうと…俺は引くことはしない。勝ち目がゼロに等しくたって…お前に挑んでやる。」

トモヤはそう言うと、ボロボロの体を起こして魔王へと向かって行く。その様は、さながら皆を勇気づける、勇者と言った所か。

「笑わせる!だったら…その挑戦する力さえ…残らない程の絶望を食らわせてやる!」

────ズオオオオオオオオッ…

再び、世界が揺らめき始める。空を覆う闇が、暗く深く、全てを包み込んでいく。この世の終わり。まさにそのような印象を与える一撃だ。

『デットエンドバースト』

────カッ!

そして、闇はゆっくりと地上へと降り注ぐ。受け取るものに絶望を与えるかの様に。トモヤは全ての闇を受け止め、必死に耐え忍ぶ。
 
「ぐぅ…ぅ…がぁぁぁぁっ!!」

────

その時だった。トモヤの中で、何かが、芽生えていくのを感じた。絶望でも、恐怖でも無い感情。苦しみでも無ければ、痛みでも無い。寧ろ、なにも感じないのだ。そんな感覚。言うなれば…

────ピキーン…

「あれ…?何も感じないな…もしかして俺、死んだ…とか?」

そう錯覚させるほどに、無。そして、敵無し。つまり、無敵だった。彼は、攻撃とか、防御とか、そういう概念より先に進んでいたのだ。

「ば、馬鹿な…なぜ立っていられる…!」

『隠れた才能︰無敵を発現しました』

「無敵…?無敵って、あの触ってもダメージが無いやつか…!す、すげえ…こんな感覚なのか…!」

闇は振り払われ、月夜がその上に再び舞い上がっていた。もう、邪魔するものは何も無い。この闇も、無敵の前にはなんの力もなし得ないのだから。

「…私の闇が…何故…何故お前なんかに…!?」

「…神様が、俺を選んでくれたんだと思うぜ。」

「神っ…!まさか…女神が…!」

魔王は忌々しそうに空を見上げる。想像の女神テューリエも、破壊の女神ディアナも。この瞬間は、彼に味方していた。この世界を。そしてその秩序を保つ為に。なればこそ、無敵の奇跡も成し得る事ができる。

今は、彼がこの世界の意思だから。

「もうその技は効かないな。…さて、どうする?闇は消えたぞ。」

トモヤは魔王に、そして、後ろの仲間達にも問いかけた。今にも、魔王に屈してしまいそうな人々は、ゆっくりと、その身を起き上がらせていた。一人一人、自分なりの希望を持って、その身を奮い立たせていた。

「うそ…!人間達が起き上がってる…!」

「さあ、魔王。…チェックメイトだ。」

チェックメイト。長きに渡った戦いも、ようやくここで決着となる。人間達は次々に魔物達を押し返し、街を守ろうと躍起している。圧倒的有利から一気に盤面をひっくり返されたとなれば、さしもの魔王も、動揺を隠しきれない。

「まだだァァァっ!」

────カッ!

────ビシュン!

トモヤを貫いた閃光も、弾かれて消滅する。無敵。もはや魔王は、トモヤの相手では無いだろう。世界が、全てが、彼の味方であり、彼自身がこの世界であるのだから。

「う、嘘だ嘘だ嘘だ…!」

冒険者達も、魔物達へと立ち向かっていく。倒れた仲間を庇いながら、瀕死の体を動かしながら、この世界のために戦っている。本人達にそんなつもりは無いとしても。

「さあ魔王…どうする。魔物達も、だいぶ苦心しているみたいだぞ。」

そして、トモヤは勝利宣言を突きつける。
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