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40話「海の秘宝」
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────ゴゴゴゴゴッ…
その時だった。小さく地面が揺れたかと思うと、ゆっくりと、水面が低くなっていく。やがてすっかり道が開けたかと思うと、先へと進む穴がポッカリと開いていた。
「…開いたみたいですね。」
「そうね。それじゃあ進みましょうか。」
海賊の野郎共を筆頭に、水浴びで遊んでいたスフレ達も、トモヤを連れて更に奥の洞窟へと向かう。水が引いた先には広い空間が広がっており、待ってました~、と言わんばかりに、宝箱がでーんと設置されている。流石に怪しすぎるからか、海賊達も迂闊には近付かず、様子を伺う。
「なあなあ、流石に怪しいよな…あれ…」
「ああ…流石にお宝があんな堂々と置かれてるとは思えないな…」
トモヤ達も、お宝に目のないトレファも、流石に近づき難い様子だった。とはいえ、このままここで硬直していては、またいつ水が増えてくるか分からない。やはりここは、安全面を考慮してトモヤ一人で突撃する事になった。
「トモヤさーん、開けたらすぐカムバックですよー!」
「分かってるって。サラ、部下達を纏めとけよ!」
「おうよ!思っきし開けたれー!」
さてさて。トモヤは気合いを入れて、ゆっくりと箱に手をかける。トレファが見た限りでは、まだ罠と決まったわけではないらしい。鍵はかかっていないのか、簡単に開くようになっていた。
────ゴトッ…
箱を開けると、中には金銀財宝がザックザク。…なんてことは無く、小さな笛が一本、ぴったりとその中に収められていた。
「笛…?」
────ピョーッ!
笛がぴょーんと飛び跳ねたかと思ったら、笛の周りを黒い渦がもうもうと渦巻き始める。トモヤは慌ててそこから離れるが、渦はどんどん大きくなり、やがて辺り一面を覆う程の巨大な黒煙へと変化した。
「船長ーッ!前が見えません!」
「退避だ、退避ー!」
サラ率いる海賊達は、慌てて元きた洞窟へと身を潜める。スフレ達も心配そうに渦の中を見つめていたが、トモヤの防御力は並のものでは無い。黒い渦には頓着せず、ただじっと前方を睨み付けていた。
「…何かいるな…」
トモヤが見詰める先には、ひとつの黒い影が見えた。黒煙の嵐をものともせずに、一歩一歩影の方へと近づいていく。
「ん~♪外ってのは気持ち良いねぇ♪」
「おーい、そこの。」
「はえ?…嘘ー!私の『ノクターン』の中で平然として居られるなんて♪あなたは何者?」
そこに立っていたのは、メロディの具現化とでも言うべきか。不思議な記号を頭に携えた、紫色の髪の少女が立っていた。
「何者…まあ、ここの調査に来た冒険者だな。お前こそ何者だ?このダンジョンのボスとか?」
「ボス?違う違う♪私はメロディ=スタッカート♪『無限の調律』の守護者だよ♪」
「無限の調律?なんだそれ?」
「知らないの?なら教えてあげる♪」
無限の調律。世界に一つだけ存在する楽器の一つで、遥か昔、愛する友人の為に、魔法使いが精錬したものだと言う。その名の通りあらゆる音色を奏でる事が出来、その音色は呪いを解呪したり、瀕死の重傷から人を生き返らせる事も出来ると言う。その恐るべき力を危惧した魔法使いは、使い魔の一人の守護者として笛に宿らせ、更にそれを箱に封じ込めて地の底へと落としたと言う。
「…じゃあ、その使い魔ってのが…」
「そう♪それが私、スタッカートよ♪…ところで、なんで貴方は私を解放したの?私に何か御用?」
「いや。俺は特に何も無いんだ。ただ、あっちの海賊がお宝を欲しがってるから、その為にここまでやってきてこの箱を開けたんだ。」
「ふーん♪なるほどね♪じゃあ、こうしましょ♪私と貴方が勝負して、貴方が勝ったら、笛は使わせてあげる♪私が勝ったら、私はまた箱に戻るわ♪」
トモヤは困惑した様子で、スタッカートに訪ねる。
「…勝負するの、俺なのか…?」
「ええそうよ♪向こうの人達じゃ、『ノクターン』の中でろくに動けなさそうだし♪それじゃあ始めましょ♪」
「ああ、ちょっと待った。勝負って何をどうするんだ?まさか、力と力のぶつけ合い…なんて言わないだろ?」
スタッカートはにっこりと笑って、楽しそうに答えた。
「もちろん♪私は戦えないし~♪それより、もーっと面白い事よ♪」
「面白いこと…と言いますと…?」
「簡単よ♪音楽で勝負するのよ♪」
一瞬、トモヤは意味が分からなかった。音楽で勝負…となれば、音のぶつけあいか。いや、そんな馬鹿なことはするはずが無い。となればやっぱり、歌うのだろう。
「えーっ!?お、音楽で…!?」
その時だった。小さく地面が揺れたかと思うと、ゆっくりと、水面が低くなっていく。やがてすっかり道が開けたかと思うと、先へと進む穴がポッカリと開いていた。
「…開いたみたいですね。」
「そうね。それじゃあ進みましょうか。」
海賊の野郎共を筆頭に、水浴びで遊んでいたスフレ達も、トモヤを連れて更に奥の洞窟へと向かう。水が引いた先には広い空間が広がっており、待ってました~、と言わんばかりに、宝箱がでーんと設置されている。流石に怪しすぎるからか、海賊達も迂闊には近付かず、様子を伺う。
「なあなあ、流石に怪しいよな…あれ…」
「ああ…流石にお宝があんな堂々と置かれてるとは思えないな…」
トモヤ達も、お宝に目のないトレファも、流石に近づき難い様子だった。とはいえ、このままここで硬直していては、またいつ水が増えてくるか分からない。やはりここは、安全面を考慮してトモヤ一人で突撃する事になった。
「トモヤさーん、開けたらすぐカムバックですよー!」
「分かってるって。サラ、部下達を纏めとけよ!」
「おうよ!思っきし開けたれー!」
さてさて。トモヤは気合いを入れて、ゆっくりと箱に手をかける。トレファが見た限りでは、まだ罠と決まったわけではないらしい。鍵はかかっていないのか、簡単に開くようになっていた。
────ゴトッ…
箱を開けると、中には金銀財宝がザックザク。…なんてことは無く、小さな笛が一本、ぴったりとその中に収められていた。
「笛…?」
────ピョーッ!
笛がぴょーんと飛び跳ねたかと思ったら、笛の周りを黒い渦がもうもうと渦巻き始める。トモヤは慌ててそこから離れるが、渦はどんどん大きくなり、やがて辺り一面を覆う程の巨大な黒煙へと変化した。
「船長ーッ!前が見えません!」
「退避だ、退避ー!」
サラ率いる海賊達は、慌てて元きた洞窟へと身を潜める。スフレ達も心配そうに渦の中を見つめていたが、トモヤの防御力は並のものでは無い。黒い渦には頓着せず、ただじっと前方を睨み付けていた。
「…何かいるな…」
トモヤが見詰める先には、ひとつの黒い影が見えた。黒煙の嵐をものともせずに、一歩一歩影の方へと近づいていく。
「ん~♪外ってのは気持ち良いねぇ♪」
「おーい、そこの。」
「はえ?…嘘ー!私の『ノクターン』の中で平然として居られるなんて♪あなたは何者?」
そこに立っていたのは、メロディの具現化とでも言うべきか。不思議な記号を頭に携えた、紫色の髪の少女が立っていた。
「何者…まあ、ここの調査に来た冒険者だな。お前こそ何者だ?このダンジョンのボスとか?」
「ボス?違う違う♪私はメロディ=スタッカート♪『無限の調律』の守護者だよ♪」
「無限の調律?なんだそれ?」
「知らないの?なら教えてあげる♪」
無限の調律。世界に一つだけ存在する楽器の一つで、遥か昔、愛する友人の為に、魔法使いが精錬したものだと言う。その名の通りあらゆる音色を奏でる事が出来、その音色は呪いを解呪したり、瀕死の重傷から人を生き返らせる事も出来ると言う。その恐るべき力を危惧した魔法使いは、使い魔の一人の守護者として笛に宿らせ、更にそれを箱に封じ込めて地の底へと落としたと言う。
「…じゃあ、その使い魔ってのが…」
「そう♪それが私、スタッカートよ♪…ところで、なんで貴方は私を解放したの?私に何か御用?」
「いや。俺は特に何も無いんだ。ただ、あっちの海賊がお宝を欲しがってるから、その為にここまでやってきてこの箱を開けたんだ。」
「ふーん♪なるほどね♪じゃあ、こうしましょ♪私と貴方が勝負して、貴方が勝ったら、笛は使わせてあげる♪私が勝ったら、私はまた箱に戻るわ♪」
トモヤは困惑した様子で、スタッカートに訪ねる。
「…勝負するの、俺なのか…?」
「ええそうよ♪向こうの人達じゃ、『ノクターン』の中でろくに動けなさそうだし♪それじゃあ始めましょ♪」
「ああ、ちょっと待った。勝負って何をどうするんだ?まさか、力と力のぶつけ合い…なんて言わないだろ?」
スタッカートはにっこりと笑って、楽しそうに答えた。
「もちろん♪私は戦えないし~♪それより、もーっと面白い事よ♪」
「面白いこと…と言いますと…?」
「簡単よ♪音楽で勝負するのよ♪」
一瞬、トモヤは意味が分からなかった。音楽で勝負…となれば、音のぶつけあいか。いや、そんな馬鹿なことはするはずが無い。となればやっぱり、歌うのだろう。
「えーっ!?お、音楽で…!?」
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