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34話「女神のお願い」
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『はい。訳あって、この少女の体をお借りしているのです。』
流石のトモヤも、意外すぎる事実に唖然としてしまっていた。自分をこの世界に送り届けた女神テューリエ。それと対になる女神、ディアナが目の前に立っているのだから。
「ひ、ひええっ!め、女神様…!ほ、本当に女神様なんですか…!?」
『…本当です。私は破壊の象徴…どんなものでも破壊する事が出来ますよ。』
「な、なんだか怪しいです…トモヤさん、何か証明出来るものはありませんか?」
「まあ、あるにはあるぞ。…ディアナ…だっけ。この盾でも、破壊する事は出来るか?」
そう言うと、トモヤは自分の一番大切な武器であろう無敵の盾をカルメアに差し出す。カルメアはそれを手に取ると、シャボン玉を指で弾くようにして、一瞬の内にその盾を灰燼へと変えてしまった。
「わっ!…と、トモヤさんの盾が…!?」
『これで信じて頂けましたか?』
「し、信じますぅっ!申し訳ありません女神様ぁっ!」
ペコペコとひれ伏すスフレ。まあ無理もない。SSランクの魔物でさえ、傷一つ付けられなかった盾を、ほんの一瞬で消してしまったのだから。
「…驚いた。信じよう、ディアナ。」
『ありがとうございます。…この盾はお返ししますね。』
ピッと指を弾くと、破壊された盾が見事に元の形に整合して復活していた。トモヤは初めからそうするのが分かっていたかの様に、ひょいと盾を背負い直した。
『さて、本題に入りましょう。…実はヤマトは、私が別の世界から連れて来た人間なのです。』
「…」
トモヤは、自分を連れて来たテューリエの事を思い出した。確か、正しい心を持つ人間のみが、異世界に転生できると言っていたはずだ。ヤマトのそれは、明らかにそのルールからは外れている。
『…彼も初めは…純朴な人間だったのですが、力に溺れる内に……嗚呼…』
ディアナは頭を抱えて、さも辛そうにその言葉を紡いだ。
『…彼には、魔王を討伐する使命を与えたのです。私達神は、本来この世界に干渉は出来ません。だから、世界を揺るがす程に成長した魔王を倒すべく…恐ろしい程の力を与えて…』
「それで、その力を振るっている内に、この世界一の冒険者になろうって野心が芽生えたのか。」
『…はい。一番でなければ魔王を倒す意味が無いと…見かねた私は…ルールを破って、彼のパーティメンバーだったカルメアに宿ったのです。何度も制止しましたが彼は止まらず…かと言って…私の勝手で連れて来た彼を私の勝手で破壊する訳にも行かず…困り果てていました…』
「…なるほど。それで、俺があいつを倒したから…」
『…はい。彼は…当分は戦うのを諦めるそうです。…お陰様で助かりました…』
ディアナは胸を撫で下ろし、安心したように微笑む。恐らくは、ヤマトもこれで改心するのだろう。トモヤもそれを見て、少し安心する。
「それは良かった。…それじゃあ、あんたはまた女神の席に戻るのか?」
『そうですね。…トモヤさん、貴方にお願いがあります。…もし、魔王を倒すつもりでいるなら…ヤマトと手を組んで頂けませんか?』
「ヤマトと…」
『…彼は私が説得します。ですから…』
少しだけ言い淀む。
「…わかった。女神様の頼みとあれば、断る事は出来ないな。」
『…!ありがとうございます…彼も…きっと受け入れてくれると思います…いえ、受け入れさせます。』
「頼むな。…そうだ、最後にひとつ聞いて良いか?」
『…?なんですか?』
「あんたは破壊の女神らしいけど、創造の女神テューリエとはどんな関係なんだ?」
それを聞いたディアナは、ピクンと反応する。
『テューリエ…彼女は…私の姉です…いつもいつも…私より目立ってて…私より人気者で…宗教でも…うぅ…』
突然、ディアナは悲しそうになり始める。それを見て、スフレはぶーっとトモヤを見る。
「わ、悪かった…変な事聞いちまって…」
『私なんて!私なんてどうせ日陰者ですよ!うわあああああん!!トモヤさんの馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!!』
どうやら、トラウマだったらしい。靴も履かずに、ピューっと空へと飛んでいってしまった。本当に破壊の女神なのか怪しくなって来たが、言動や実力から見て本物だろう。トモヤ自身、ヤマトと手を組むのは気が進まないが、もし機会があればそうしてみよう、と心に決めたのだった。
流石のトモヤも、意外すぎる事実に唖然としてしまっていた。自分をこの世界に送り届けた女神テューリエ。それと対になる女神、ディアナが目の前に立っているのだから。
「ひ、ひええっ!め、女神様…!ほ、本当に女神様なんですか…!?」
『…本当です。私は破壊の象徴…どんなものでも破壊する事が出来ますよ。』
「な、なんだか怪しいです…トモヤさん、何か証明出来るものはありませんか?」
「まあ、あるにはあるぞ。…ディアナ…だっけ。この盾でも、破壊する事は出来るか?」
そう言うと、トモヤは自分の一番大切な武器であろう無敵の盾をカルメアに差し出す。カルメアはそれを手に取ると、シャボン玉を指で弾くようにして、一瞬の内にその盾を灰燼へと変えてしまった。
「わっ!…と、トモヤさんの盾が…!?」
『これで信じて頂けましたか?』
「し、信じますぅっ!申し訳ありません女神様ぁっ!」
ペコペコとひれ伏すスフレ。まあ無理もない。SSランクの魔物でさえ、傷一つ付けられなかった盾を、ほんの一瞬で消してしまったのだから。
「…驚いた。信じよう、ディアナ。」
『ありがとうございます。…この盾はお返ししますね。』
ピッと指を弾くと、破壊された盾が見事に元の形に整合して復活していた。トモヤは初めからそうするのが分かっていたかの様に、ひょいと盾を背負い直した。
『さて、本題に入りましょう。…実はヤマトは、私が別の世界から連れて来た人間なのです。』
「…」
トモヤは、自分を連れて来たテューリエの事を思い出した。確か、正しい心を持つ人間のみが、異世界に転生できると言っていたはずだ。ヤマトのそれは、明らかにそのルールからは外れている。
『…彼も初めは…純朴な人間だったのですが、力に溺れる内に……嗚呼…』
ディアナは頭を抱えて、さも辛そうにその言葉を紡いだ。
『…彼には、魔王を討伐する使命を与えたのです。私達神は、本来この世界に干渉は出来ません。だから、世界を揺るがす程に成長した魔王を倒すべく…恐ろしい程の力を与えて…』
「それで、その力を振るっている内に、この世界一の冒険者になろうって野心が芽生えたのか。」
『…はい。一番でなければ魔王を倒す意味が無いと…見かねた私は…ルールを破って、彼のパーティメンバーだったカルメアに宿ったのです。何度も制止しましたが彼は止まらず…かと言って…私の勝手で連れて来た彼を私の勝手で破壊する訳にも行かず…困り果てていました…』
「…なるほど。それで、俺があいつを倒したから…」
『…はい。彼は…当分は戦うのを諦めるそうです。…お陰様で助かりました…』
ディアナは胸を撫で下ろし、安心したように微笑む。恐らくは、ヤマトもこれで改心するのだろう。トモヤもそれを見て、少し安心する。
「それは良かった。…それじゃあ、あんたはまた女神の席に戻るのか?」
『そうですね。…トモヤさん、貴方にお願いがあります。…もし、魔王を倒すつもりでいるなら…ヤマトと手を組んで頂けませんか?』
「ヤマトと…」
『…彼は私が説得します。ですから…』
少しだけ言い淀む。
「…わかった。女神様の頼みとあれば、断る事は出来ないな。」
『…!ありがとうございます…彼も…きっと受け入れてくれると思います…いえ、受け入れさせます。』
「頼むな。…そうだ、最後にひとつ聞いて良いか?」
『…?なんですか?』
「あんたは破壊の女神らしいけど、創造の女神テューリエとはどんな関係なんだ?」
それを聞いたディアナは、ピクンと反応する。
『テューリエ…彼女は…私の姉です…いつもいつも…私より目立ってて…私より人気者で…宗教でも…うぅ…』
突然、ディアナは悲しそうになり始める。それを見て、スフレはぶーっとトモヤを見る。
「わ、悪かった…変な事聞いちまって…」
『私なんて!私なんてどうせ日陰者ですよ!うわあああああん!!トモヤさんの馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!!』
どうやら、トラウマだったらしい。靴も履かずに、ピューっと空へと飛んでいってしまった。本当に破壊の女神なのか怪しくなって来たが、言動や実力から見て本物だろう。トモヤ自身、ヤマトと手を組むのは気が進まないが、もし機会があればそうしてみよう、と心に決めたのだった。
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