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27話「激震の巨大魔物」
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西南の地。マハリア。この地は比較的平和であり、魔物達もかなり大人しい。血なまぐさい戦いとは、まるで無縁の世界だ。ところが。
「な、なんだあれは…!?」
「魔物…なのか…!?」
────ズズズズズズズズ…
鳴り響く地響き。霧の濃い日の早朝。気象観測隊を驚かせたのは、山のように巨大な生き物の影であった。それはゆっくりと蠢きながら、大地を横断して行った。それは、まるで伝説にある、山神様の様であった…
────
トモヤ達は、新たな職業に向けて、各自特訓を続けていた。イチゴは竜に慣れる特訓。トレファは踊り子の為に修行へ。スフレは賢者になるべく、日々勉強に励んでいる。トモヤもまた、軍師として着々と成長を重ねていた。今日は特訓を一旦休憩して、仲間達と酒場に集っていた。
「久しぶりに四人揃ったな。…なんと言うか、お前達も一回りくらい成長したんじゃないか?」
「はは。まあな。私もラクレスに厳しく仕込まれたよ。」
「イチゴは竜騎士になるんだっけか。どうだ?順調に進んでるか?」
「ああ。この調子ならば、竜に乗れる日も近い。」
イチゴは、自分の特訓について語った。ヘラに乗る練習。ヘラを自在に操り、攻撃や回避等の指示を出せるように厳しく仕向けられたらしい。
「それで、一番大変だったのが、竜と戯れろ…っていう特訓だ。私も頑張って野生の竜に近付いたのだが、なかなか上手くいかなくてな。持ち金全部盗まれたり、炎で衣類を全部燃やされたり…」
「(…なんかおかしくないか…)」
ドラゴンにお金を盗まれるなど、よっぽど不幸な奴でない限り無理である。
「そうだ。竜にエサをやろうとして、私自身が食われかけたりもした。ただ、それからは懐いてくれたのか、私が近付くとヨダレを垂らして大人しそうにしてくれたのだ。」
「おおー!イチゴさん凄いです!」
「(いやいやいや…それ絶対お前のことエサだって思ってるだろ…)」
「ふふ。イチゴも成長しているのね。私も頑張ってるのよ。」
「トレファもか。どんな特訓をしているのだ?是非聞かせて貰いたい。」
「ええ。良いわよ。」
トレファは、白い髪の女性と共に、踊りを基礎から学んでいるらしい。トレファ自身、センスはあるのかどんどん上達していき、女性の知っている踊りの半分は既にマスターしているらしい。
「流石だな。トレファは何が一番難しい特訓だったのだ?」
「そうね~…蝶の舞を覚えるのが大変だったわね。」
「蝶の舞?…というと、あの空を飛んでいるちょうちょの事か?」
「ええ。風に乗ってひらひらと浮かぶ虫。それをイメージしながら動きを覚えるのよ。」
────
ハルバトルソ町内。ある日、町内に不審な人物がいるとの通報があった。破廉恥な格好である冒険者も多数いる中で、それらより一際浮いて目立つ不審な人物とは一体どんなものなのか。
「いいでございますか?トレファさん。蝶々をイメージするのでございますよ。」
「蝶々を…わかったわ。やってみる。」
全身をグリーンに包んだタイツに、ちょうちょの羽のような背中の装飾。そして極めつけに、頭部から触角の飾りをつけた変態が、二体路地裏に潜んでいた。ちょうちょ共は表路地に飛び出すと、ひらりひらりと奇っ怪な踊りを踊り始める。
「な、なんだあれは!?」
「変態だ!逃げルォォォォ!」
トレファは少し恥ずかしかったが、目立つのは嫌いでは無いので気にせずそのまま踊りを続ける。
「良い調子でございますよ!そのまま風に身を任せるのでございます!」
「風に身を…」
本人は至って真剣なのだが、周りから見たらもはや何をしているのか恐ろしくて聞くことすら出来ないレベルである。やがて、町の兵士が二人の元へと歩み寄る。
「おい君達、ここで何をしているのかな?」
「あっ!まずいでございますよ!蝶をイメージして逃げるのでございます!」
「わかったわ!ひらりひらりー!」
「おいこら!待てー!」
────
「大変だったけど、良い特訓になったわ。」
「(お前が犯人かぃぃぃ!ギルドでも大騒ぎになったぞおい!)」
「へえー!お二人共、凄い特訓をなさっているのですね!良いなぁ…」
と、この状況にまるで疑問を抱かずに二人の特訓を羨ましがるスフレ。彼女は賢者になる為ずーっと勉強漬けだった為、二人並みにぶっ飛んだ内容は無い。強いて言うなら、複合魔法の失敗で魔道本から空へと魔法が暴発し、ギルドの天井に穴を開けたくらいだろうか。
「ふふ。でも、スフレもちゃんと成長できてるわよ。…そう言えば、トモヤは何か無いのかしら?」
「俺か?俺は特には…」
────ウゥゥゥゥゥゥゥゥッ…!
聞きたくはないサイレン音。今酒場にいるのはトモヤ達だけだ。戦争か!と思ってトモヤ達は急いで身構えるが、いつまで経っても受付嬢さんが登って来ない。仕方ないので、トモヤ達は下へ降りて事情を確認する。
「受付嬢さん、なにかあったんですか?」
「あ、すみません…レイドクエストの発生です。トモヤさん達は、ご受託なさいますか?」
「レイドクエストですか。…内容は?」
「えーと…巨大な魔物の出現…とだけ書かれていますね。場所は西南の地、マハリア村郡です。」
「マハリア村郡…?あれ、確かそっちの方は、あんまり魔物は出現しないんじゃ?」
「ええ…そうなんですが…恐らく、長年眠っていたた魔物が目覚めた可能性があります。危険度は未知数なので不参加でも良いですが…如何なさいますか?」
「どうする?…俺は受けるつもりだ。」
そう言って、後ろの仲間達を見つめる。でも仲間達は、すっかり結論を出し終えた様子だった。
「ふふ、トモヤさん。こういう時は私達の答えは決まって一つですよ。」
「そうね。私達は魔王に挑もうとしてるのよ。今更、こんなクエストで引く必要は無いでしょう。」
「その通りだ。私達も当然、一緒に行くぞ。トモヤ。」
「……そう来ると思ってたぜ。受付嬢さん。四人で受注してくれ。」
「…はい。」
受付嬢は、四人を見てふふっと笑った。もうすっかり、一蓮托生の仲。こんなに最高なパーティは、彼女も見た事が無い。彼等なら本当に、魔王を倒すかもしれない。そんな期待を込めて、ビシッと契約書にサインをした。
────
『謎の巨大生物』
内容︰???の討伐、または撃退
場所︰マハリア西部 タルタ平原
報酬︰不定
メンバー︰自パーティ 他Bランク冒険者
────
「な、なんだあれは…!?」
「魔物…なのか…!?」
────ズズズズズズズズ…
鳴り響く地響き。霧の濃い日の早朝。気象観測隊を驚かせたのは、山のように巨大な生き物の影であった。それはゆっくりと蠢きながら、大地を横断して行った。それは、まるで伝説にある、山神様の様であった…
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トモヤ達は、新たな職業に向けて、各自特訓を続けていた。イチゴは竜に慣れる特訓。トレファは踊り子の為に修行へ。スフレは賢者になるべく、日々勉強に励んでいる。トモヤもまた、軍師として着々と成長を重ねていた。今日は特訓を一旦休憩して、仲間達と酒場に集っていた。
「久しぶりに四人揃ったな。…なんと言うか、お前達も一回りくらい成長したんじゃないか?」
「はは。まあな。私もラクレスに厳しく仕込まれたよ。」
「イチゴは竜騎士になるんだっけか。どうだ?順調に進んでるか?」
「ああ。この調子ならば、竜に乗れる日も近い。」
イチゴは、自分の特訓について語った。ヘラに乗る練習。ヘラを自在に操り、攻撃や回避等の指示を出せるように厳しく仕向けられたらしい。
「それで、一番大変だったのが、竜と戯れろ…っていう特訓だ。私も頑張って野生の竜に近付いたのだが、なかなか上手くいかなくてな。持ち金全部盗まれたり、炎で衣類を全部燃やされたり…」
「(…なんかおかしくないか…)」
ドラゴンにお金を盗まれるなど、よっぽど不幸な奴でない限り無理である。
「そうだ。竜にエサをやろうとして、私自身が食われかけたりもした。ただ、それからは懐いてくれたのか、私が近付くとヨダレを垂らして大人しそうにしてくれたのだ。」
「おおー!イチゴさん凄いです!」
「(いやいやいや…それ絶対お前のことエサだって思ってるだろ…)」
「ふふ。イチゴも成長しているのね。私も頑張ってるのよ。」
「トレファもか。どんな特訓をしているのだ?是非聞かせて貰いたい。」
「ええ。良いわよ。」
トレファは、白い髪の女性と共に、踊りを基礎から学んでいるらしい。トレファ自身、センスはあるのかどんどん上達していき、女性の知っている踊りの半分は既にマスターしているらしい。
「流石だな。トレファは何が一番難しい特訓だったのだ?」
「そうね~…蝶の舞を覚えるのが大変だったわね。」
「蝶の舞?…というと、あの空を飛んでいるちょうちょの事か?」
「ええ。風に乗ってひらひらと浮かぶ虫。それをイメージしながら動きを覚えるのよ。」
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ハルバトルソ町内。ある日、町内に不審な人物がいるとの通報があった。破廉恥な格好である冒険者も多数いる中で、それらより一際浮いて目立つ不審な人物とは一体どんなものなのか。
「いいでございますか?トレファさん。蝶々をイメージするのでございますよ。」
「蝶々を…わかったわ。やってみる。」
全身をグリーンに包んだタイツに、ちょうちょの羽のような背中の装飾。そして極めつけに、頭部から触角の飾りをつけた変態が、二体路地裏に潜んでいた。ちょうちょ共は表路地に飛び出すと、ひらりひらりと奇っ怪な踊りを踊り始める。
「な、なんだあれは!?」
「変態だ!逃げルォォォォ!」
トレファは少し恥ずかしかったが、目立つのは嫌いでは無いので気にせずそのまま踊りを続ける。
「良い調子でございますよ!そのまま風に身を任せるのでございます!」
「風に身を…」
本人は至って真剣なのだが、周りから見たらもはや何をしているのか恐ろしくて聞くことすら出来ないレベルである。やがて、町の兵士が二人の元へと歩み寄る。
「おい君達、ここで何をしているのかな?」
「あっ!まずいでございますよ!蝶をイメージして逃げるのでございます!」
「わかったわ!ひらりひらりー!」
「おいこら!待てー!」
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「大変だったけど、良い特訓になったわ。」
「(お前が犯人かぃぃぃ!ギルドでも大騒ぎになったぞおい!)」
「へえー!お二人共、凄い特訓をなさっているのですね!良いなぁ…」
と、この状況にまるで疑問を抱かずに二人の特訓を羨ましがるスフレ。彼女は賢者になる為ずーっと勉強漬けだった為、二人並みにぶっ飛んだ内容は無い。強いて言うなら、複合魔法の失敗で魔道本から空へと魔法が暴発し、ギルドの天井に穴を開けたくらいだろうか。
「ふふ。でも、スフレもちゃんと成長できてるわよ。…そう言えば、トモヤは何か無いのかしら?」
「俺か?俺は特には…」
────ウゥゥゥゥゥゥゥゥッ…!
聞きたくはないサイレン音。今酒場にいるのはトモヤ達だけだ。戦争か!と思ってトモヤ達は急いで身構えるが、いつまで経っても受付嬢さんが登って来ない。仕方ないので、トモヤ達は下へ降りて事情を確認する。
「受付嬢さん、なにかあったんですか?」
「あ、すみません…レイドクエストの発生です。トモヤさん達は、ご受託なさいますか?」
「レイドクエストですか。…内容は?」
「えーと…巨大な魔物の出現…とだけ書かれていますね。場所は西南の地、マハリア村郡です。」
「マハリア村郡…?あれ、確かそっちの方は、あんまり魔物は出現しないんじゃ?」
「ええ…そうなんですが…恐らく、長年眠っていたた魔物が目覚めた可能性があります。危険度は未知数なので不参加でも良いですが…如何なさいますか?」
「どうする?…俺は受けるつもりだ。」
そう言って、後ろの仲間達を見つめる。でも仲間達は、すっかり結論を出し終えた様子だった。
「ふふ、トモヤさん。こういう時は私達の答えは決まって一つですよ。」
「そうね。私達は魔王に挑もうとしてるのよ。今更、こんなクエストで引く必要は無いでしょう。」
「その通りだ。私達も当然、一緒に行くぞ。トモヤ。」
「……そう来ると思ってたぜ。受付嬢さん。四人で受注してくれ。」
「…はい。」
受付嬢は、四人を見てふふっと笑った。もうすっかり、一蓮托生の仲。こんなに最高なパーティは、彼女も見た事が無い。彼等なら本当に、魔王を倒すかもしれない。そんな期待を込めて、ビシッと契約書にサインをした。
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『謎の巨大生物』
内容︰???の討伐、または撃退
場所︰マハリア西部 タルタ平原
報酬︰不定
メンバー︰自パーティ 他Bランク冒険者
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