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19話「その作戦は…!」
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トレファが聞いた作戦内容は、とんでもないものだった。基本的には、トレファがウンディーネの注意を引き、『破壊の歌』を誘発させて、それをトモヤが受ける…というもの。だが問題は、その注意の引き付け方。
────ばしゃっ!
と、トレファはウンディーネの前で立ち止まる。ドキドキと高鳴る胸を押さえ込んで、一気に息を吸い込む。
「…う、ウンディーネ!」
ウンディーネは、それはそれは興味無さそうに、トレファの方を見た。
『…ロセ失エ消、ガ情風間人』
「…ふ、ふん。たかだか人間風情とか言っちゃってますけど、肝心のアナタはどうなのかしら?」
『…ルイテッ言ヲ何』
「例えばそう!ウンディーネ!アナタ、女性なんでしょう?そのなで髪を見ればわかるわ!」
『…タシウドラカダ』
「だったらぁ?情けないと思わなーい?アナタ、その人間の女性に負けてるのよ~?…ほら、ここ…とか…」
ぼいんぼいーん。と、自分のたわわな胸を持ち上げて見せるトレファ。ゆっさゆっさと揺れるそれは、ウンディーネのつるつるぺたぺたのそれより、遥かに大きく豊かに見えた。
『!ダノルテシニ気モ私!レ黙…』
「あらあら、悔しいのね?胸が小さい女は器も小さいって訳ね。私の友達はそんな事じゃ怒りもしないのに…ぷぷ。精霊ってのも大した事ないわねぇ~。」
────
その頃。岸辺の方でスフレがぼそっと呟いた。
「…今、ものすごーくバカにされた気が…」
「…気の所為だろう。…多分…」
実はものっそい耳が良いので、イチゴには聞こえていたのだが、何も聞かなかった事にする。
────
ぼいんぼいーん。顔を真っ赤にして、必死に挑発するトレファ。ウンディーネは胸の話ばっかりされて頭にきたのか、恥ずかしがってるトレファに気付いていない。
『!!ァァァァバケオテセワ言!!ァァァァガ娘小ノンコ』
「(…や、やった!なんとか挑発に乗ってくれたわ…!恥ずかしかったぁー…)」
ぽよよん、と胸から手を下ろすトレファ。それと同時に、ウンディーネの水を操った怒涛の攻撃が彼女へ向かっていく。
────ババシュッ!
「残念!胸は大きくても私はすばしっこいのよ!」
水辺を走り抜け、攻撃をひょいひょいと躱していく。これがトレファの真髄。盗賊としての力だ。精霊として名を馳せるウンディーネでも、韋駄天の如き彼女の神速には追いつけず、攻撃の手が詰まってしまう。
「あらあら、そんなものかしら。精霊サマ。」
『!…ッ』
その直後。ウンディーネの背後にトレファが立っていた。その距離、わずか2メートル。だが、トレファのナイフは射程範囲外だ。そしてその距離は、同時にウンディーネの『破壊の歌』の最有効射程の範囲でもある。
『(…ラナ離距ノコ…ルエ狙)』
「(来るわね…破壊の歌…!)」
ウンディーネはゆっくりと息を吸い、辺りの空気と呼応を合わせる。荒れ狂う波。天を覆う暗雲。降りしきる大雨。それら全ての力を借り、目の前の敵を撃つ力へと変える。
『!間人!ヨレワ喰二然自』
『破壊の歌』
────ゴオオオオオオオオオッ!!!!
振動によって相手を破壊する、音の衝撃波。波をさざめかせ、周りの空気を押し出しながら、直線状に全てを薙ぎ払って進撃する。
「トモヤ!今よ!」
「おう!」
『守護術式︰キャスリング』
その瞬間。ウンディーネは我が目を疑った。トモヤとトレファの位置が、まるですり替わったかのように、トモヤが攻撃地点に立っていたのだから。無敵の盾は堂々とその姿を見せ、音撃の波を真正面から受け止める!
『?!ッ…故何…ナ鹿馬』
「守護術式って言ってな。俺の技の一種だ。…それじゃあ、消えな。落神さんよっ!」
────キィィィィィィィィン!!!!
『!!ァァァァァァァァナ鹿馬…ナ鹿馬』
そして。裁きは下された。東の村を絶望の海に陥れていた湖の落神は、その破壊音と共に、断末魔を上げながら空の彼方へと消えていった。その爆音は一気に雲を晴らし、長々と降り続いていた雨を、ピタリと止ませた。
「…やったわね!トモヤ!」
「ああ。トレファも、よくやってくれた。まさかしっかりやってくれるとは思わなかったな。」
それを聞いて、トレファがぴくりと反応する。
「…それじゃあ…あの演技は無駄だった訳?」
「え…?う、うん。まあな…別にぼいんぼいんさせなくても注意は引けただろうし…」
「…なら、なんで私にそんな事をさせたのかしら?」
ぴきぴきと、額に怒りマークを乗せるトレファ。
「い、いや、絶対に注意を引いて欲しかったから…あの…ほら…性格的に…というか、肉体的にこれ頼めるのトレファだけだし…」
「こんのスケベ!私だって見せ付けたくてこんな大きな胸してる訳じゃないのよ!大体、その言い方じゃ私が本物の変態みたいじゃない!」
「…ち、違うのか?スフレから聞いた話では…」
「…沈めコノヤロー!」
「ぎゃあああああ!!」
どぼーん。と。怒りMAX、トモヤを水の中に押し倒すトレファ。ぶくぶくと泡を吹いて、しばらく浮かんで来なかったのは内緒。何はともあれ、これでウンディーネの討伐は完了。晴れてAランクとして、トモヤ達はギルドへと戻った。
────ばしゃっ!
と、トレファはウンディーネの前で立ち止まる。ドキドキと高鳴る胸を押さえ込んで、一気に息を吸い込む。
「…う、ウンディーネ!」
ウンディーネは、それはそれは興味無さそうに、トレファの方を見た。
『…ロセ失エ消、ガ情風間人』
「…ふ、ふん。たかだか人間風情とか言っちゃってますけど、肝心のアナタはどうなのかしら?」
『…ルイテッ言ヲ何』
「例えばそう!ウンディーネ!アナタ、女性なんでしょう?そのなで髪を見ればわかるわ!」
『…タシウドラカダ』
「だったらぁ?情けないと思わなーい?アナタ、その人間の女性に負けてるのよ~?…ほら、ここ…とか…」
ぼいんぼいーん。と、自分のたわわな胸を持ち上げて見せるトレファ。ゆっさゆっさと揺れるそれは、ウンディーネのつるつるぺたぺたのそれより、遥かに大きく豊かに見えた。
『!ダノルテシニ気モ私!レ黙…』
「あらあら、悔しいのね?胸が小さい女は器も小さいって訳ね。私の友達はそんな事じゃ怒りもしないのに…ぷぷ。精霊ってのも大した事ないわねぇ~。」
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その頃。岸辺の方でスフレがぼそっと呟いた。
「…今、ものすごーくバカにされた気が…」
「…気の所為だろう。…多分…」
実はものっそい耳が良いので、イチゴには聞こえていたのだが、何も聞かなかった事にする。
────
ぼいんぼいーん。顔を真っ赤にして、必死に挑発するトレファ。ウンディーネは胸の話ばっかりされて頭にきたのか、恥ずかしがってるトレファに気付いていない。
『!!ァァァァバケオテセワ言!!ァァァァガ娘小ノンコ』
「(…や、やった!なんとか挑発に乗ってくれたわ…!恥ずかしかったぁー…)」
ぽよよん、と胸から手を下ろすトレファ。それと同時に、ウンディーネの水を操った怒涛の攻撃が彼女へ向かっていく。
────ババシュッ!
「残念!胸は大きくても私はすばしっこいのよ!」
水辺を走り抜け、攻撃をひょいひょいと躱していく。これがトレファの真髄。盗賊としての力だ。精霊として名を馳せるウンディーネでも、韋駄天の如き彼女の神速には追いつけず、攻撃の手が詰まってしまう。
「あらあら、そんなものかしら。精霊サマ。」
『!…ッ』
その直後。ウンディーネの背後にトレファが立っていた。その距離、わずか2メートル。だが、トレファのナイフは射程範囲外だ。そしてその距離は、同時にウンディーネの『破壊の歌』の最有効射程の範囲でもある。
『(…ラナ離距ノコ…ルエ狙)』
「(来るわね…破壊の歌…!)」
ウンディーネはゆっくりと息を吸い、辺りの空気と呼応を合わせる。荒れ狂う波。天を覆う暗雲。降りしきる大雨。それら全ての力を借り、目の前の敵を撃つ力へと変える。
『!間人!ヨレワ喰二然自』
『破壊の歌』
────ゴオオオオオオオオオッ!!!!
振動によって相手を破壊する、音の衝撃波。波をさざめかせ、周りの空気を押し出しながら、直線状に全てを薙ぎ払って進撃する。
「トモヤ!今よ!」
「おう!」
『守護術式︰キャスリング』
その瞬間。ウンディーネは我が目を疑った。トモヤとトレファの位置が、まるですり替わったかのように、トモヤが攻撃地点に立っていたのだから。無敵の盾は堂々とその姿を見せ、音撃の波を真正面から受け止める!
『?!ッ…故何…ナ鹿馬』
「守護術式って言ってな。俺の技の一種だ。…それじゃあ、消えな。落神さんよっ!」
────キィィィィィィィィン!!!!
『!!ァァァァァァァァナ鹿馬…ナ鹿馬』
そして。裁きは下された。東の村を絶望の海に陥れていた湖の落神は、その破壊音と共に、断末魔を上げながら空の彼方へと消えていった。その爆音は一気に雲を晴らし、長々と降り続いていた雨を、ピタリと止ませた。
「…やったわね!トモヤ!」
「ああ。トレファも、よくやってくれた。まさかしっかりやってくれるとは思わなかったな。」
それを聞いて、トレファがぴくりと反応する。
「…それじゃあ…あの演技は無駄だった訳?」
「え…?う、うん。まあな…別にぼいんぼいんさせなくても注意は引けただろうし…」
「…なら、なんで私にそんな事をさせたのかしら?」
ぴきぴきと、額に怒りマークを乗せるトレファ。
「い、いや、絶対に注意を引いて欲しかったから…あの…ほら…性格的に…というか、肉体的にこれ頼めるのトレファだけだし…」
「こんのスケベ!私だって見せ付けたくてこんな大きな胸してる訳じゃないのよ!大体、その言い方じゃ私が本物の変態みたいじゃない!」
「…ち、違うのか?スフレから聞いた話では…」
「…沈めコノヤロー!」
「ぎゃあああああ!!」
どぼーん。と。怒りMAX、トモヤを水の中に押し倒すトレファ。ぶくぶくと泡を吹いて、しばらく浮かんで来なかったのは内緒。何はともあれ、これでウンディーネの討伐は完了。晴れてAランクとして、トモヤ達はギルドへと戻った。
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