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3話「最初のクエスト」
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その翌日、トモヤはクエストについて説明を受けた。クエストはランクに応じてある程度難易度が振り分けられているらしく、Fに近いほど簡単に、Sに近いほど難しくなっている。基本的に同じランクのクエストならば、確実に成功できる様になっている。その為、Fランクのクエストはお使い程度の簡単なものが多かったりする。
「そういや、成り行きで一緒にいるけど…スフレは俺と一緒のチームで大丈夫なのか?」
「は、はい!私…あの…一人だと…クエストを受けに行くのも恥ずかしくて…トモヤさんなら守ってくれるかな…って…」
「…そうか。なら、一緒に行こう。君に自信が付くまで、俺が何度でも守ってやるからさ。」
「…!あ、ありがとう…ございます…!」
「礼は良いよ。俺も世話になってるし。早速、二人でクエストに行ってみよう。何処から受注できるんだ?」
「あ、はい!クエストボードがあちらに貼られていて…ご案内しますね!」
スフレに連れられ、依頼の貼り紙がズラーっと並んだクエストボードの前に立つ。ランク別に紙が貼られており、右奥へ行くほど高難易度になっている。受注システムは極めて単純で、自分のランク+2ランクまでのクエストを、ギルド側が判断して認可を降ろす。FランクならDランクまでのクエストを。DランクならBランクまでのクエストを、本人の技量に合わせて受注出来るようになっている。
「いっぱいあるな~…スフレ、どんなクエストからやった方が良いかな?」
「そうですね、やっぱり最初は、このスライム殲滅とかがメジャーだと思いますよ。…えっと…私はやった事ありませんけど…」
「ありがとう。やっぱ基本からいかないとだな。早速これを…」
と紙を手に取ったところで、スフレにピタッと腕を掴まれる。
「あれ?どうした?」
「あ、あの…私、ほ、本当に初めてなもので…あ、足でまといに…あの…」
ふるふると震えている。トモヤに見捨てられないか、ちゃんと戦えるのか、少し不安なのだろう。トモヤは少し戸惑ったが、彼女の意図を汲んで、安心させる様に優しく頭を撫でた。
「大丈夫。俺が守ってやるって。それに、俺だってクエストは初めてだ。そんなに心配する事ない。」
「トモヤさん…わかりました…私、頑張ります…!」
「ああ。期待してるぞ!」
────
『液状の侵略者』
内容︰畑に出没するスライム達の討伐
場所︰ハルバトルソ南 農耕の街
報酬︰250G
────
「馬車に乗るって生まれて初めてかも…案外乗り心地良いな~」
「そ、そうでしょうか?うぅ…なんか酔ってしまって…」
ガタガタと凸凹道を進む馬車。ハルバトルソは周囲を壁に囲まれた要塞の様になっており、その周辺にも幾つか小さな村が立っている。当然、ハルバトルソよりも自然に近い村であり、魔物の出没もよくある事になる。その為、村とハルバトルソを繋ぐ馬車が日に何回か往復し、ギルドと連携して村の安全を確保している。
「車酔いか…うーん、そうだ。なるべく前に乗ったらどうだ?後ろより揺れが少ないからな。」
「そうなんですか…?じゃあ…失礼して…」
スフレはすとんと前に座ると、隣に座っていたトモヤに軽く体を預ける。後ろに比べて、確かに揺れも少なく、スフレは次第に顔色を良くしていった。
「あ…本当ですね!だいぶ良くなりました!トモヤさん、凄いですね…何処でそんな知識を…?」
「はは、まあちょっと過去に色々あってな。」
と言うのも、単にトモヤが前世で車に乗り慣れていただけの事だが。馬車はやがて速度を緩め、目的の南側の村へと到着した。
「ここが南側の村…なんか懐かしい場所だな…」
そこは、見事なまでの農村地帯。どこまでも畑が広がり、ポツンポツンと家が点在している。しかし、トモヤには何処か、前の世界を彷彿とさせる要素があったようだ。
「綺麗ですね~…早速、依頼された場所に向かいましょう!」
「だな!」
二人が依頼主に依頼されたのは、度々畑にやってくるというスライムの討伐。作物を食い荒らし、枯れさせてしまうと言う。二人は早速被害に遭っている畑へと赴き、スライムの捜索を始める。
「見当たりませんね…」
「スライムも年中畑にいる訳じゃ無いしな。この辺りで待ち伏せする事にしようか。」
「わかりました。…あ、そうだ!変装道具とかを持ってきたんですが…使いますか?」
「変装道具?よし、使ってみよう。」
下手に見張っていてスライムが逃げてしまっては意味が無い。だからこそ、スフレは事前に変装道具を用意していたのだが…
「…なんだ、これ。」
「お野菜スーツです!可愛いですよね!」
着込んでいるのは、巨大なサイズの人参スーツのトモヤ。それと、真っ白な大根スーツのスフレ。確かに違和感無く野菜の中に紛れ込めてはいるだろう。サイズを除いて。
「…いやおかしいだろ!このサイズじゃ流石にスライムも気付くと思うぞ!」
「えっ…だ、だめですか…?」
ショボーンと落ち込むスフレ。トモヤもまあ一丁前に着込んでいるのだが。更に言うと、きちんと地面にめり込んで自生している。つまり、上から見れば普通の野菜と大差ない。サイズ以外。
「いや、まあ百歩譲って騙せたとして…その後どうするんだ?動けないぞ!?」
必死にもがけば普通に脱出できるが、その間に気付かれそうだ。
「え…あ…そ、その時は…頑張りましょう!」
「頑張るって…いやいやいや…!」
必死にトモヤは否定するが、地面に埋まっている以上はこれでやるしかない。スライムの到着を待ち、野菜の如くシーンと静かに待つ2人だった。
「あ、来ましたよ!トモヤさん!」
「お…本当だ。よし、近付いて来たら、一気に殲滅するぞ。スフレ、魔法の準備は大丈夫か?」
「バッチリです…多分…!」
「多分かーい!」
今更ながら、トモヤは目の前の大根に少し不安を感じる。二人が話していると、ついに畑荒らしの張本人が姿を現す。青いゲル状の身体をプルプルさせ、ずるりずるりと地を這って蠢く魔物。身体に取り込んだ生命をズクズクと溶かし、我がものとする恐怖の生命体。スライム。それが4、5匹でうろつき、野菜をあれよあれよと飲み込んでいく。
「(これで全部みたいだな、スフレ、行くぞ!)」
なんて作戦通り、みたいな台詞を吐いているが、正直これでスライムを騙せている事にびっくりである。
「(はいっ!)」
────ずぽーん!
『!?』
ジュクジュク!と驚くスライム達の声。スライム達の前に現れたのは、自生する巨大な人参星人と大根星人。その奇っ怪な姿に恐れおののきながらも、スライム達はその獲物をじろりと見つめる。巨大な食い物!それに、肉の香りもする!スライム達は不思議そうに、でも嬉しそうに、その野菜星人に狙いを定める。
『!!』
────ビュバッ!!
ドロっとした液体の、高速体当たり。スフレはびっくり仰天、急いでトモヤの後ろへと隠れる。トモヤは動きにくい人参スーツから盾を取り出し、真正面から体当たりを受け止める!
「効かねえ…なぁ!」
────ビジュン!
その瞬間、体当たりを仕掛けたスライムAがバラバラに砕け散る。それを見たスライムB~E達は慌てふためき、オドオドとその場をうろつき始める。
「(効果アリだな…次はアレも試してみるか!)」
────ガシャン!
と、重い音が響く。トモヤの握る盾の、持ち手側にあるストッパーが降りたのだ。これによって、盾は自らの記憶を辿り、受けた攻撃をそのまま再現する機能を発動させる!
「記憶…解放!」
『ハンドアックス・エクスブロー』
────ゴオオッ!!
男から受け止めた時の威力とは桁違いの斬撃が、凄まじい威力となってスライムへと襲いかかる!戸惑う液体はトモヤの斬撃により一挙に死に絶え、破片がべちょべちょと床に転がり落ちていく。
「…わ、わあ…凄い威力…」
「あら…ちょいとやりすぎたかな…」
唖然とするのも無理は無い。この斬撃だけで、奥に生えていた林の木々が、斬撃を受けた部分だけバッサリと切り落とされてしまっていたのだ。その範囲、約3メートル。その部分だけ、頭を切り取られたブロッコリーのように禿げてしまっている。ただのチンピラの斬撃をここまで強化出来るあたり、最強の盾を名乗るだけの事はあるだろう。
「ま、まあスライムは倒せたし万事解決…だな。」
「ですね!流石ですトモヤさん!」
嬉しそうに飛び跳ねる大根星人。これで依頼は完了、後は依頼主に報告してクエストクリアだ。そう思って歩き出した矢先、空から妙な音が聞こえてくる。
───ゴロゴロゴロ…
「ん?なんの音だ…?」
「雷…でしょうか…?」
「そういや、成り行きで一緒にいるけど…スフレは俺と一緒のチームで大丈夫なのか?」
「は、はい!私…あの…一人だと…クエストを受けに行くのも恥ずかしくて…トモヤさんなら守ってくれるかな…って…」
「…そうか。なら、一緒に行こう。君に自信が付くまで、俺が何度でも守ってやるからさ。」
「…!あ、ありがとう…ございます…!」
「礼は良いよ。俺も世話になってるし。早速、二人でクエストに行ってみよう。何処から受注できるんだ?」
「あ、はい!クエストボードがあちらに貼られていて…ご案内しますね!」
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「いっぱいあるな~…スフレ、どんなクエストからやった方が良いかな?」
「そうですね、やっぱり最初は、このスライム殲滅とかがメジャーだと思いますよ。…えっと…私はやった事ありませんけど…」
「ありがとう。やっぱ基本からいかないとだな。早速これを…」
と紙を手に取ったところで、スフレにピタッと腕を掴まれる。
「あれ?どうした?」
「あ、あの…私、ほ、本当に初めてなもので…あ、足でまといに…あの…」
ふるふると震えている。トモヤに見捨てられないか、ちゃんと戦えるのか、少し不安なのだろう。トモヤは少し戸惑ったが、彼女の意図を汲んで、安心させる様に優しく頭を撫でた。
「大丈夫。俺が守ってやるって。それに、俺だってクエストは初めてだ。そんなに心配する事ない。」
「トモヤさん…わかりました…私、頑張ります…!」
「ああ。期待してるぞ!」
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『液状の侵略者』
内容︰畑に出没するスライム達の討伐
場所︰ハルバトルソ南 農耕の街
報酬︰250G
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「馬車に乗るって生まれて初めてかも…案外乗り心地良いな~」
「そ、そうでしょうか?うぅ…なんか酔ってしまって…」
ガタガタと凸凹道を進む馬車。ハルバトルソは周囲を壁に囲まれた要塞の様になっており、その周辺にも幾つか小さな村が立っている。当然、ハルバトルソよりも自然に近い村であり、魔物の出没もよくある事になる。その為、村とハルバトルソを繋ぐ馬車が日に何回か往復し、ギルドと連携して村の安全を確保している。
「車酔いか…うーん、そうだ。なるべく前に乗ったらどうだ?後ろより揺れが少ないからな。」
「そうなんですか…?じゃあ…失礼して…」
スフレはすとんと前に座ると、隣に座っていたトモヤに軽く体を預ける。後ろに比べて、確かに揺れも少なく、スフレは次第に顔色を良くしていった。
「あ…本当ですね!だいぶ良くなりました!トモヤさん、凄いですね…何処でそんな知識を…?」
「はは、まあちょっと過去に色々あってな。」
と言うのも、単にトモヤが前世で車に乗り慣れていただけの事だが。馬車はやがて速度を緩め、目的の南側の村へと到着した。
「ここが南側の村…なんか懐かしい場所だな…」
そこは、見事なまでの農村地帯。どこまでも畑が広がり、ポツンポツンと家が点在している。しかし、トモヤには何処か、前の世界を彷彿とさせる要素があったようだ。
「綺麗ですね~…早速、依頼された場所に向かいましょう!」
「だな!」
二人が依頼主に依頼されたのは、度々畑にやってくるというスライムの討伐。作物を食い荒らし、枯れさせてしまうと言う。二人は早速被害に遭っている畑へと赴き、スライムの捜索を始める。
「見当たりませんね…」
「スライムも年中畑にいる訳じゃ無いしな。この辺りで待ち伏せする事にしようか。」
「わかりました。…あ、そうだ!変装道具とかを持ってきたんですが…使いますか?」
「変装道具?よし、使ってみよう。」
下手に見張っていてスライムが逃げてしまっては意味が無い。だからこそ、スフレは事前に変装道具を用意していたのだが…
「…なんだ、これ。」
「お野菜スーツです!可愛いですよね!」
着込んでいるのは、巨大なサイズの人参スーツのトモヤ。それと、真っ白な大根スーツのスフレ。確かに違和感無く野菜の中に紛れ込めてはいるだろう。サイズを除いて。
「…いやおかしいだろ!このサイズじゃ流石にスライムも気付くと思うぞ!」
「えっ…だ、だめですか…?」
ショボーンと落ち込むスフレ。トモヤもまあ一丁前に着込んでいるのだが。更に言うと、きちんと地面にめり込んで自生している。つまり、上から見れば普通の野菜と大差ない。サイズ以外。
「いや、まあ百歩譲って騙せたとして…その後どうするんだ?動けないぞ!?」
必死にもがけば普通に脱出できるが、その間に気付かれそうだ。
「え…あ…そ、その時は…頑張りましょう!」
「頑張るって…いやいやいや…!」
必死にトモヤは否定するが、地面に埋まっている以上はこれでやるしかない。スライムの到着を待ち、野菜の如くシーンと静かに待つ2人だった。
「あ、来ましたよ!トモヤさん!」
「お…本当だ。よし、近付いて来たら、一気に殲滅するぞ。スフレ、魔法の準備は大丈夫か?」
「バッチリです…多分…!」
「多分かーい!」
今更ながら、トモヤは目の前の大根に少し不安を感じる。二人が話していると、ついに畑荒らしの張本人が姿を現す。青いゲル状の身体をプルプルさせ、ずるりずるりと地を這って蠢く魔物。身体に取り込んだ生命をズクズクと溶かし、我がものとする恐怖の生命体。スライム。それが4、5匹でうろつき、野菜をあれよあれよと飲み込んでいく。
「(これで全部みたいだな、スフレ、行くぞ!)」
なんて作戦通り、みたいな台詞を吐いているが、正直これでスライムを騙せている事にびっくりである。
「(はいっ!)」
────ずぽーん!
『!?』
ジュクジュク!と驚くスライム達の声。スライム達の前に現れたのは、自生する巨大な人参星人と大根星人。その奇っ怪な姿に恐れおののきながらも、スライム達はその獲物をじろりと見つめる。巨大な食い物!それに、肉の香りもする!スライム達は不思議そうに、でも嬉しそうに、その野菜星人に狙いを定める。
『!!』
────ビュバッ!!
ドロっとした液体の、高速体当たり。スフレはびっくり仰天、急いでトモヤの後ろへと隠れる。トモヤは動きにくい人参スーツから盾を取り出し、真正面から体当たりを受け止める!
「効かねえ…なぁ!」
────ビジュン!
その瞬間、体当たりを仕掛けたスライムAがバラバラに砕け散る。それを見たスライムB~E達は慌てふためき、オドオドとその場をうろつき始める。
「(効果アリだな…次はアレも試してみるか!)」
────ガシャン!
と、重い音が響く。トモヤの握る盾の、持ち手側にあるストッパーが降りたのだ。これによって、盾は自らの記憶を辿り、受けた攻撃をそのまま再現する機能を発動させる!
「記憶…解放!」
『ハンドアックス・エクスブロー』
────ゴオオッ!!
男から受け止めた時の威力とは桁違いの斬撃が、凄まじい威力となってスライムへと襲いかかる!戸惑う液体はトモヤの斬撃により一挙に死に絶え、破片がべちょべちょと床に転がり落ちていく。
「…わ、わあ…凄い威力…」
「あら…ちょいとやりすぎたかな…」
唖然とするのも無理は無い。この斬撃だけで、奥に生えていた林の木々が、斬撃を受けた部分だけバッサリと切り落とされてしまっていたのだ。その範囲、約3メートル。その部分だけ、頭を切り取られたブロッコリーのように禿げてしまっている。ただのチンピラの斬撃をここまで強化出来るあたり、最強の盾を名乗るだけの事はあるだろう。
「ま、まあスライムは倒せたし万事解決…だな。」
「ですね!流石ですトモヤさん!」
嬉しそうに飛び跳ねる大根星人。これで依頼は完了、後は依頼主に報告してクエストクリアだ。そう思って歩き出した矢先、空から妙な音が聞こえてくる。
───ゴロゴロゴロ…
「ん?なんの音だ…?」
「雷…でしょうか…?」
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※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
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