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「外、出るか?」

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雨宮が家を出た。

最近では珍しく、真琴が暇そうにしていた。

俺はここ3週間くらい、休みがあっても付き合いだなんだで、フルの休みはなかった。

だから真琴を誘うことにした。

「外、出るか?」

真琴が顔を輝かせて言う。

「デート?」

俺も思わず笑って答える。

「ああ」



真琴はパフェを食べたいと言った。

2人とも煙草を吸うから、小洒落たカフェには縁がない。

前に行った、地下の喫茶店に向かう。

手は、真琴から繋いできた。

俺も嬉しくなって、しっかりと繋ぐ。

こないだ読んだ本の話をした。

最近真琴が見ている動画の話もした。

互いの仕事の話も少しする。



真琴がチョコレートパフェを食べる。

真琴はそういうところだけ年頃の女子なのか、甘いものが大好きだ。

「うまいか?」

「うん! めっちゃ美味しい」

終始、2人で笑っている。

「雪人さんはいっつもコーヒーだねー」

「俺は、甘いものが苦手だから」



公園に行って。

本屋に行って。

メシ食って。

こんなんで満足してんのかと不安になる。

けど、真琴が嬉しそうにしている。



真琴は前の組織が潰されてから、滅多と1人では外に出なくなっていた。

電話もしなくなった。

まあ、そんなときに雨宮のことがあったんだが。

何ヶ月か前から聞いてはいたが、今はネットワークみたいなもんができていて、真琴は情報担当がメインだとかで。

真琴自身の仕事関係は、全てネットとチャットで完了するらしい。

危ない仕事は正直して欲しくはない。

けど、それなら俺といることも十分ヤバいだろう。

仕事を取り上げるわけにもいかない。

で。

多分、こいつは普通の仕事はできない。



昼くらいに出たから、もう6時くらいになった。

面倒だが、雨宮にメッセージを送っておく。

これで今日は帰らなくてもいい。

まだ時間的にはだいぶ早い。

けど。

「ホテル、行くか」

「うん」

真琴。

前は恥ずかしそうにしていたものだったが、今は普通に満面の笑みだ。

それに救われている部分も大きいが。



ホテルに着いて、抱きしめ合って、キスをして。

真琴の頭を撫でながら言った。

「何か飲んでてくれ」

ジャケットだけハンガーにかけて、風呂場に行く。

真琴はすぐにのぼせるから、ぬるい湯を溜める。

ソファーに戻ると、真琴はビールの缶を2つ出して待っていた。

「飲んでなかったのか?」

「うん。乾杯しようと思って」

真琴が笑う。

俺も笑う。

真琴は酒に強いが、ビールはあまり好きじゃない。

何かコンビニで買ってやれば良かったか。

「電話して何か取り寄せるか」

「ううん、そんなにお酒が欲しくなくて」



風呂は自動で止まるから、チビチビと飲んだ。

「明日。悪いんだが、朝が早いんだ」

「何時? アラームかけとこっか?」

「ありがとうな。7時だが、もうかけてあるから」

ビールの缶を置く。

「忙しいの?」

真琴が心配そうに聞いてきた。

「来週1週間、要人警護で。その打ち合わせがある」

「そうなんだ。ありがとう。そんな時にデートに誘ってくれて」

「いや、気にすんな。それにちょっと間、ちゃんとした休みも取れるし、楽なもんだ」

仕事の詳しい内容は聞いてはこない。

今日買った本の話をした。



「風呂入ろう」



脱がせて脱いで風呂に入る。

真琴の体を手で撫でて洗う。

あんまり触りすぎると真琴は敏感すぎるから、サッとにしておいた。

真琴が俺の体を洗う。

勃起したものも洗われる。

真琴の手つきには官能的なものは何もない。

浴槽に2人で入る。

いろいろしたい気持ちはあるが、とにかくゆっくりしたいのと、できるだけ長く楽しみたいのが本音だった。
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