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「好みなんだろ?」

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雨宮が風呂場に行ったあと、真琴が俺の隣の椅子に座る。

雨宮は綺麗好きで、必ず湯船に浸かるから、小一時間は戻ってこない。

「あの服、似合ってたね。雪人さんが選んだの?」

「ああ」

嘘ついてもしゃあねぇわ。

「お前の好みなんだろ?」

「うん」

何か気に入らねえのか。

「久弥、無理してるんじゃない?」

「まあ、あいつはそういう奴だろ。わかってるなら、もっとこう、なんつうか」

「じゃあさ」

真琴が俺の顔を捉えた。

「もっと久弥のこと、好きになっても平気なの?」

まあ、そうなるか。

「ああ」

これはこれで傷つくか。

案外、真琴は平気だった。

「雪人さんは、久弥と私、どっちが好き?」

「変なこと聞くな? お前」

俺は思わず間抜けな言葉を返した。

2人とも、少し、顔がほころんだ。

妙に笑えた。

「俺はゲイじゃねぇし」

「知ってる。でも、久弥のこと、好きでしょ?」

「好きっつうか。あいつがお前を見る顔が。切なそうな。つらそうな。痛そうな。あんな痛い奴見てたら、こっちが痛くなるわ」

真琴は笑う。

「ビール飲む?」

「ああ」
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