菊智夕

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「真琴」

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音がなって。

少ししたら、玄関がゆっくり開いた。

雨宮が挨拶をして入ってくる。

後ろに。

「真琴」

声は多分出ていない。

顔を見た瞬間に、涙腺が緩んだ。

なのに。

泣けなかった。



真琴も。

雨宮も。

なんで。

なんで、お前らは。

俺より死にそうな顔をしているんだ?

あんなに触れたかったのに、俺はもう身動きが取れないでいた。

雨宮が言う。

「入っていい?」

「…ああ」



聞きたいことは山ほどある。

幸せじゃなかったのか?

この3ヶ月、何をしていた?

何があった?

どうして、ここへ来た?

まるで渦だ。



雨宮と真琴が座る。

俺の気持ちは全く無視された。

雨宮は、真琴とキスをした。

音が、消える。



俺は真琴の左腕を掴んでいた。

真琴は抵抗しない。

雨宮は身を引いた。

真琴にキスをした。

真琴が俺に応じるから、少し、ほんの少し、落ち着いた。

なぜだかわからんが、ゆっくりと丁寧に、真琴を脱がせた。

俺も服を脱いだ。



もっと酷いことをしてしまうと思っていた。

強引に押し倒して、犯してしまうと思っていた。

そんなことはなく、別れる前と何も変わらなかった。



時間はかからなかった。

真琴はイカなかった。

けど。

やっと寝れる。

俺はそのまま床で寝た。
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