プロポーズ大作戦2

妖精

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落し物見つけたら結婚できる!?

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一は楽しそうに新郎と話している里奈を眺めていた。
「お前だと思ったんだけどな、里奈の旦那さんは!」昇が少し酔っ払って絡んできた。
「んなわけねーだろ。つかお前こそ唯とはどうなんだよ?」

「4回...」
「何が4回??」
「唯に振られた数だよ!」
「え、まじかよ。つかそんな告ってたのかよ。」

「んーそのうち2回くらいはもう返事すら貰ってない。」

「だろーなあの性格じゃあ忘れられてる。」

「うるせーな、どーでもいいだろ!お前のせいで酔い冷めたわ飲み直す。」
そう言って昇は去っていった。
そして少し時間が経つとスライドショーが変わった。

スクリーンの上の写真がゆっくりとフェードアウトし、次に現れたのはいつもの四人が高校から現在に至るまでずっとたまり場にしてきた
「WAY SUMMER」
というハンバーガーショップの店内で撮られた写真だった。
写っているのはいつもの四人組だが里奈だけ落ち込んでいる表情をしている。
だが一には里奈がこんな顔をしている理由が思い出せなかった。
一は新婦席の里奈を見ながら思い出そうとした。
一瞬、目と目があったような気がしたが、勘違いだったのか新郎と写真の方を見ながら話している。
その時、強烈な孤独感と喪失感が一の胸を押しつぶした。
(ダメだこのままじゃ。やり直したい…もう一度あの頃に戻って、もう一度。)
次の瞬間だった。さっきと同じように時間が止まり光と音が消えるあの現象が起きた。


「よく気づいたな~、1回しか呼べないと思って諦める奴が多いんだ。」
そう言っていきなり妖精が話を切り出した。

「いや、気づいたっていうかホントに戻りたいと思って...」

「まあいい、なぜこの写真に戻りたいと思ったのか聞かせてもらおうか」

「実を言うと、あんまり覚えてないんです。里奈がこんな顔をしているのか」

「覚えてない?なんだよそれ」

「でもなんとかしてやりたいんです。里奈のこんな表情を変えてあげたいんです」

「なるほどな。勘違い欲しくないんだが、これは彼女を笑顔にするためのボランティアではない」

「わかってます。今度こそ頑張ります、里奈に気持ちを伝えてきます」

「安易に頑張ると口にする奴ほど頑張らないと俺の統計に出ている」

「そのデータ僕が狂わせてあげますよ」

「ま、せいぜい頑張るんだな。行ってこい」

一は妖精に小さくお辞儀して、腰に左手を当て右手を前に突き出し例の呪文を大声で唱えた。

「ハレルヤ~チャンス」

光が包み込み、目を開けるとずしりと重たいものを身体に感じた。いきなりのことに一はバランスを崩してしまった。

「うぉい!一、ちゃんと支えろよ」

昇が怒鳴り散らしてきた。よく見ると重さの原因は昇だった。

「なんでお前が俺の上に乗ってんだよ!」

「なんでって、てめぇは騎馬だからあたりめぇだろぉ!」

「なんだよ騎馬って、、、」

あたりをみまわしてようやく気づいた。
そうおそらくこれは騎馬戦をしているのだろう。
「なんだよ~今日、体育祭かよ~」
「いい加減にしろ!暑さでやられたかのか。つかまえ!前!」
「えっ…」
気づいたときには遅かった。
相手の騎馬が一達の騎馬を覆いかぶさるようにぶつかってきた。
そしてその衝撃に一達の騎馬は物の見事に倒れていった。

「いってぇ~」

「いってぇ~じゃねーよバカ!てめぇのせいで崩れたじゃねーか!」

騎馬戦は崩れたらもう終わりだ。昇がキレている。

「あーー唯の前でかっこいいとこ見せられる今シーズン最後のチャンスが終わったー」

「うるせーなお前はどのシーズンもノーチャンスだよ」

「てめぇそこに立てぇー!ぶん殴ってやる」

一をおもむろに立ち上がると昇を見下ろした。そう一は比較的背が大きい方だった。

「やっぱり座れー!」

昇が暴れ散らしているのを騎馬のチームメートが両脇を掴み連行していった。

騎馬戦が終わるとすぐに里奈を探し回った。
30分くらい探し回りやっと里奈を見つけた。
どうやら里奈は体育祭準備委員だったらしく次の競技の準備を体育館倉庫にいた。

「里奈、ここにいたのか」

「おお~タローどうしたの?あ~丁度いいところに来た、これグラウンドまで一緒に運んでくれない?」

「ああ、いいよ」

そう言われ里奈の持っていた綱引きの縄を二人がかりで運んだ。

「で、何?」

「えっ何って何が?」

「いや私に用があったんじゃないの?」

「ああ~そう!そうなんだ!実はさ、、、」
(そうだ!もうタイミングとか、こだわってはいけないんだ)

「俺さ里奈の事が、、、」

そのときだった。まるでドラマに出てくる空気の読めない登場人物のように昇と唯が現れた。

「おーい、はじめ~!りな~!」

「あれ二人とも次の綱引き出ないの?」

「もううちの赤組負けそうだからね~」

「俺は唯が出ないから出ない」

「私~綱引きしてる男の人好きだなー」

「一!なにしてる早く行くぞ、綱引きだぞ」

肩を落とした一は昇に連れて行かれた。

「ふっざっけんなよ!昇!!邪魔しやがって!」一は昇を突き飛ばした。

「おいおい、なにキレてんだよ?」

「だーかーら、あーもういいよ!めんどくさい」

昇に少し怒りを感じていたので少し冷たくしてしまった。

「もしかして、さっき里奈と大事な話してたのか?」

流石の昇も自分がした事に気付いた。

「ん、まぁそんなとこだ。でもまだ時間あるし大丈夫。」

「そうか、なんかわりぃな」

昇はとても真剣な顔で謝ってきたので何故か罪悪感を感じた。

「いやいいんだ、気にしないでくれ。さてと次のリレーがもうすぐだから行くわ。」

少し気まずくなったので一はその場から離れた。

「おう、頑張れよ」

昇と別れた後、また急いで里奈を探した。

「あーもうどこだよ!あと行きそうなところは。」

「選抜リレーの生徒はグラウンドに集合してください。」アナウンスがかかった。
結局、里奈を見つけられずに時間が過ぎた。
仕方なくグラウンドへ向かう途中にふと足元を見るとオモチャの指輪が落ちていた。


どこかの子供の落し物だろうと思い拾い、テントに落し物として持っていった。
そうこうしているうちに選抜リレーが始まった。
一はアンカー、足の速さにはとても自信があった。
さすがに見に来てるだろうと里奈の姿を探したがどこにもいなかった。

「ったく、なんでいねーんだよ。」

せっかくカッコいいところを見せつけて告白の展開に持って行こうとしたのに大失敗だった。
ピストルの音がグラウンドに鳴り響き、リレーがはじまった。
一の白組は4チーム中、最下位。赤組がダントツで1位を走っていた。そしていよいよアンカー手前までバトンが近づいてきた。
「はじめ、頑張れよー!!!」
昇と唯の応援が聞こえた。

「あたりめーだろ」

そして最下位でバトンが渡った。スタートダッシュがうまくいき、グングンと加速していった。
そして2チームを一気に抜き去り、2位に躍り出た。

「あいつ、あんな速かったけ?」

「一、すごいカッコいい」

「え、まじかよ」

唯の一言に昇の嫉妬スイッチが入った。

「おいー!!はじめ、転べー!」

「なにいきなり?」

「いやだって、このままじゃ赤組負けてしまいますやん。」

「うわー嫉妬とかダサいー」

「え、、、そんな」

そんなくだらない会話を唯たちがしている間に一は赤組のアンカーをとらえた。
(あと、ちょっと、、、)
ゴールより20メートル手前でとてつも無いデッドヒートが始まった。
1位と並んだ瞬間、歓声は大きくなった。

「タロー!がんばれー!!」

里奈の声が聞こえた。ゴールテープ横のすぐ近くで観客に紛れていた。
(負けらんねー)
足に力を入れた。ゴールまであと10メートルもなかった。だがその瞬間、足を挫いてしまい大きく前に倒れこんだ。すぐに立ち上がり走ったがもう遅かった。
赤組のアンカーが楽々と抜き去って1位でゴールした。
一は続いて2位、悔しさと恥ずかしさで死にたくなった。それでも、白組の生徒たちは祝福をしに一を取り囲んだ。
そして体育祭が終わりいつもの4人でWAY SUMMERに向かった。

「はじめ、ごめんなリレー」
昇が謝る理由が理解できなかった。
すると唯が密告するように話し始めた。

「昇ったらずっとはじめ、転べー!!って言ってたんだよ」

「本当にごめんな。俺の超能力がまさかここまで効くとは思わなくて。」

昇のふざけた発言に笑い、少し救われた。

「ダッサ。」

唯の一言で昇は泣きながら走って行った。

「まあ、でもゴール手前であんなにも綺麗に転ぶ人も中々ダサいけどね。」

すかさず里奈がイジってくる。
「いえてるー!」
それに続いて唯も笑いながらイジってきた。

「うるさいー!てか最後しか見に来なかった人に人の勇姿を馬鹿にされたく無いですー!」

「違うよ、見に来なかったんじゃなくて見れなかったの!落し物しちゃって探してたの」

そう言うと里奈はあの時のスライドショーに写っていた表情と同じ悲しい顔をした。

「なに落したの?」

「指輪なんだけどね。かなり大切ものっていうか、お守りっていうか」

「それ見つかったの?大丈夫?」

「ううん、見つからなかった。どこ探しても無くてさ。でも大丈夫明日また探してみようかと思うから」

「そっか、元気出して!きっと見つかるよ」

「ありがと!」

精一杯の空元気で里奈は唯に答えると空気を読んで唯に話を変え明るく振舞っていた。
だが一はその話を聞いた瞬間、ふとオモチャの指輪を思い出した。
(もしかして、、、)
一は学校へと逆走した。

「どこ行くのー?はじめ!」

「ちょっと先行ってて!大事な用思い出したから!」

「じゃあ私たちWAY SUMMERで待ってるから~」

「わかった~」

そう返事をすると学校へ走った。
リレーで走ったばかりで足が重く感じる。
だが里奈のためならこのくらい、と走る速度を上げた。
学校へ着くと後片付けがほとんど終わっていて事務の人しか残っていなかった。

「すいません!あの落し物を探しているのですが!」

いきなり話しかけられたのが驚いたのか少し戸惑っていた。

「あーはい!えっ落し物ですか?ちょっと待ってくださいね」

「オモチャの指輪なんですけど多分届いてると思うのですが!」

「あーわかりました。落し物は全部、事務室で預かっていると思うので確認してきますね。」

「すいませんお願いします!」

数十分したら事務の人が戻ってきた。

「ありました、ありました。コレですね?」

そう言って事務の人は掌を見せてきた。
そこには先ほど一が見つけた指輪があった。

「すいませんコレです!ありがとうございます!」

お礼を行った後、指輪を受け取り走ってWAY SUMMERへと向かった。
これで里奈を笑顔にできる、そしてこれを渡した後すぐに気持ちを伝えよう。一はただひたすら走った。
WAY SUMMERまでもうすぐの所だった。
ふと一は握りしめている指輪がなぜか気になった。
指輪をじっくりと見た。
周りが薄暗くてよく見えなかったが指輪には油性ペンで何か小さく書かれていた。
一は指輪を夕陽にそっと照らしてみた。

「1111」

そう指輪には書かれていた。
一にはそれが何の意味なのかはわからなかったが思い当たることのある数字だった。

「11月11日」

里奈の誕生日だ。

不思議に思ったがとりあえずは里奈に返そうと思いポケットにしまった後、急いでWAY SUMMERに入った。

「おう、はじめ遅かったな。てかあいつらどうにかしてくれよ!さっきから何も頼まねーで店のカラオケ使ってんだよ」

入って早々、店主の西尾 保が愚痴を吐いてきた。

「たもっちゃん、味の事はしょーがないよ。諦めなよ。」

「はじめお前もかよ~泣けるわ~」

保を軽くあしらうと真っ先に里奈の元へと向かった。

「里奈!」

「あ、タロー。遅かったね~。うわ、すごい汗!近寄らないで~!」

一の体は走りすぎたせいで汗だくだった。

「おまえ、それはないだろ(笑)そんなこと言っていいのかよ恩人に!」

「はぁ?なにそれー!タローには何も感謝することしてもらってないけどー!」

「ないけどー!」
近くにいた昇と唯がバカにしてくる。

「いやいやいやーこれを見てもそんな偉そうな態度取れるか?」

そう言ってポケットの中から指輪を取り出そうとした時だった。

「なあなあ!お前らこっち向け!新しく買ったカメラの試し撮りさせろ!」
保だった。

「えっ」
一瞬、戸惑った。
保が声をかけると3人は、はしゃぎながらピースのポーズをとった。
やばい、間に合わないと思った時にはもう遅かった。

「はいチーズ」

シャッターとともに一はまたあの光に包まれた。

目を開けてすぐにスライドショーを確認した。
スライドショーの写真は先ほどの写真より少しだけ笑顔になった里奈に変わっていた。
すると当たりは暗くなりそこに妖精が現れた。

「つくづくついてないなお前は」

初めて妖精に同情されたのが少し嬉しかった。

「今回はさすがに可哀想だと思ったよ、あれだけ頑張ったのにな!」

「はい、ありがとうございます。でも何も変わらなかったんですけどね...。」

「そうだな。ここでそんな可哀想なお前に一つアドバイスをしてやろう。」

「アドバイスって、、、なんですか?」

「今までお前はどうやって過去から戻ってきたのかを考えてみろ?」

「えっ。えっーと、、、」

「これだから鈍感な奴は嫌いなんだ。過去でスライドショーに写ってる写真を撮る瞬間だろ?」

「あーなるほど!いや、なんか自動的に戻されると思ってました。」

「アホか。いいか!つまりスライドショーの写真を撮るタイミングに気をつけろってことだ!」

「わかりました!すげーためになるアドバイスありがとうございます!」

「あぁ、だがタイムスリップにも限りがある。わかったな?」

「はい!次もよろしくお願いします!」
そう言うと妖精は少し微笑み周りが元に戻るとともに消えた。


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