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ステージ4
幕間3 作戦会議、及びイタリアンの遭遇
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星降市最大の名所といえば流煌寺。そこから少し離れた辺りに、『ルース・ソラーレ』という名前のイタリアンレストランがある。
その店が何時頃からあるのか、透は知らない。しかし、彼らのゲームサークルにおいて、何かイベントがある度にここで料理を食べるというのが伝統となっているのだ。
「みんなで集まんの久しぶりですね。わたし最近教習所で忙しいし……」
「免許かぁ、そーいや僕まだだなぁ……まあいいや。それじゃ、ゲームの方はどーも折り返しみたいだし、他にも色々あったし、一旦諸々整理しようじゃないの」
「……透さん。ソレ、わざわざここでやる事か?」
いきなりそんなことを毒づきながらお冷を手に現れた、背が高いエプロン姿の少年に、鈴蘭は見覚えがなかった。
そもそもこの店に来るのが初めてなので当然なのだが。
「あ、お冷ありがと」
「ねえ先輩、この子……人って店員さんです? にしてはぱっと見高校生くらいっていうか……」
「そーいや鈴蘭ちゃん初めてだっけ。この子は綾人くん、このお店のオーナー夫婦の息子さんでね、休日とかはお店手伝ってるんだよ」
「そうそう。透さんとは結構長い付き合いかもだな。オレが小5くらいんときだっけ?」
……あれ、透先輩って大学進学で星降に来たって言ってなかったか? 鈴蘭は思った。
立っている綾人と椅子に腰掛ける透たちとの対比から鑑みるに、鈴蘭より背が高いどころか、なんなら170手前くらいはありそうだ。
自分の背が低い方であるということは激しく自覚している鈴蘭は、他人の年齢を身長で類推するのが難しい事だというのは十分承知しているが、しかし不可解だと彼女は首を傾げる。
「この人わたしよりちょっと下くらいでしょ? わたしが今度の正月で19だから……」
「え、アンタ大学生だったのか!? てっきり中学生かと」
「なんかすっごい失礼な事言ってない君!? え、じゃあ綾人……くんって今おいくつ?」
「オレ? フツーに中学二年生だが」
ちうがくにねんせい? あの背丈で??
鈴蘭は呆然としている。
「どしたの鈴ちゃん。あ、身長のコンプレックス?」
「ばっか光……馬鹿! お前コンプレックスだと分かってて本人に直接言う奴があるか!!」
「その気遣いにもわたし傷ついてますよ龍田先輩!」
そういや初めて会った時、中学生くらいにしか見えないとか思ったっけ。透は思い出した。
「やー、しっかし大学生以外も入れるよーになったのかと期待しちゃったぜ。ゲームサークルとか絶対楽しいしさ、オレも入りたいって思ってたんだよ」
「うっ……マジで同世代だと思ってましたか……」
「……注文決まったら早めに呼べよー」
痺れを切らしたか、あるいは面倒になったか――まあ絶対後者だろうが――綾人はそう言って去っていった。
「……しっかし、現状の整理かぁ。わざわざ店来るほどの事でもないよな気もするけど……あ、じゃあ俺カルボナーラ」
「神成先輩クリーム系好きなんですね、ちょっと意外。じゃあわたしはペペロンチーノ……大盛っちゃおっかな」
光と鈴蘭はめちゃくちゃメニューを物色している。
このままでは本題に入れるのがいつになるか……ということで、透は強引に軌道修正を図る。
「こないだね、僕と颯一くんで、影人……社長さんに会ってきたんだ」
「社長さんって……あ、エレスクの?」
「そうだよ光くん、サイレンスコーポレーションの社長さん。宿リ星とか色々気になる事もあったんで、連絡取ってみたら会えてさ……あ」
……そういや記憶の事聞きそびれたなと、今更ながら透は思い出した。
実際の所聞いてはいる。聞いてはいるのだが、彼がその事の方を思い出すことはきっと二度とない。
「……え、どうしたんです?」
「なんでもないよ鈴蘭ちゃん……なーんか、イマイチいい感じの情報入んなかったというか……」
「そうそう、微妙に話逸らされっぱなしな感じでしたよね。じゃあ俺このトマトのやつで」
「あ、決まった感じ? じゃ注文するか……綾人くーん」
呼ばれた綾人に、透は一同の注文を伝える。
「……で僕がアラビアータ。あとそうだね、前菜はソラーレサラダ、それからピザはマルガリータ!」
「りょーかい。パパとママに伝えとくわ」
あのトゲトゲした感じでパパママ呼びなんだ。
ちょっと意外そうな顔の鈴蘭を見て、光がわかるーとでも言いたげに笑った。
「……それで颯、なんか社長さんからおもろい話聞けたの?」
「おもろい……かどうかは期待に添いかねるけど。宿リ星はなんか厄ネタありそうだとか、そもそもこのelement squareの目的が、宿リ星を世間に知らしめることだとか、そんな感じの不思議なことを言ってはいたかな」
あの不思議な日を思い返すように、颯一郎は呟いた。
知らしめる? 鈴蘭は首を傾げる。
「こんな怪奇現象、わざわざ広めるって言うんです? 流石に誰も信じないでしょう」
「それなー鈴ちゃん。ま、実際何人か見れば話は別だろーけどね……颯とか、あと春ちゃんとか?」
光の脳裏には、先日の春菜との出来事がよぎった。
……今度のエレスクの前にでも、もう一度会ってちゃんと話を付けようかな。
ぼんやりと、彼はそう思った。
「え、春菜ちゃん何かしたんです?」
「んっとね、こないだ俺と一緒にスマホの中入っちゃってさ」
「スマホの中……?」
鈴蘭が首を傾げるのも、まあ当然だわなと光は笑い、事の次第を鈴蘭に説明し始める。
その裏で、社長の話を思い返し、透と颯一郎も話を始めた。
「……とすると現時点での能力持ちは、透先輩に俺、春菜さんに潤くんってとこですかね、先輩」
「あと炎里ちゃんでしょ、それから智和に真綾ちゃん」
「なるほど。そんで先輩、春菜さんのカードってなんでしたっけ」
「『海にて、心は裸になりたがる』だったよ。んで能力が、スマホの画面に入り込むこと……というか、写真に入ってたのかもしれないけど」
「あー、そんならスマホっぽいですね。ネットの海って感じで」
テーブルの両サイドで繰り広げられるそんな話は、綾人が前菜のサラダを持ってくるまで続いた。
その後は一同、サラダにピザに各々のパスタを食べるのに忙しく、特に話に進展はなかった。
……が、鈴蘭がペペロンチーノの最後の一口を食べ終えたその瞬間。
「も……ごくん。電話だ……げっ、ちょっと失礼します」
そう言って鈴蘭が、一旦席を立った。
「なんか随分嫌そうだけど、どうしたんだろうね」
「バイトか別のサークルじゃないですか、先輩? にしてはやけに嫌そうだったけど」
「まあバイトなら嫌だろうね。というか先輩、なんか気になってる感じだけど、やっぱお隣さんだと心配だったりすんの?」
「……え、いや、別にそんなことでは……」
颯一郎の推測に光が少し笑って、透をからかう。平和そのものな光景である……
が、直後に聞こえてきた鈴蘭の声に、一同は顔を強張らせる。
「はいはい……え、何をいきなり……えっなんで知って……いる!? 店の前に!? 今ぁ!?」
「ちょっ、何があったのさ鈴蘭ちゃん!」
「あー、その……」
透に呼びかけられて、心の底から面倒くさそうな顔で、鈴蘭が頭を抱える。
その顔は、過去の因縁か何かを今更突きつけられたような、そんな感じに何故か透には思えた。実際はもっとしょうもないことかもしれないが、しかし彼の脳裏には不安がよぎる。
(鈴蘭ちゃんがここまで狼狽する相手……そういや家族と仲が悪いとか言ってたけど、もしかしてその関連か!? まさかエレスク出てることを止められそうとか……)
あれ。
どうして僕は、こんなに彼女のことを心配しているのだろう。
家が隣というだけで、然程深い仲でもないはずなのに。
自分のことがよく分からなくなっていた透のことには気付く由もなく、鈴蘭も説明しようとはするのだが……
「あ、あんまり大した用事とか相手でもないんですけど、その……」
「よぉリリィ! ひっさしぶりだなぁ、元気してたか!!」
突然ドアを開き、やってきたその男を見て、鈴蘭は今年最大級のため息を放った。
大きく刺繍の入ったスカジャンを羽織ったその男は、灰色に染めた髪をわざわざ隠すようにバンダナを巻き、そして耳にはバッチバチにピアスを開けている。そして首元には何やらジャラジャラとアクセサリーがたくさん。
どう見ても一般人ではない。
「ちょ、あんた予約は!? 今の時間はこいつらの貸切りのハズ」
「いいだろ、ちょっと挨拶するくらいよ!」
招かれざる客を制止する綾人を押しのけ、男は鈴蘭の方へと向かっていく。
「えーっと、ひぃふぅみぃ……金髪、眼鏡、残りがリリィのお隣さんだろ? 見事に男所帯だな!」
「やめてくださいよいきなりっ! あなたには関係ないでしょ……キング!」
「「「キング!?」」」
現代日本であまり用いられることのないその敬称に、男が言うところの金髪と眼鏡と残りが声を揃えた。
「おう、俺様の事だな。俺様は格闘家でっ!」
「アマチュアのね」
「星裏の帝王でっ!」
「自称ね」
「コイツの初恋相手でっ!」
「なっ、だからそれは気の迷いって……」
「そして今度のエレスクでボス敵に大・抜・擢された男! キングこと……坂田裕貴だ!」
裕貴の気取った長台詞に淡々と水を差していく鈴蘭だが、流石に最後の一言には目を丸くした。
あと、透たちも。
「え……そんなアンタが、どうして今わざわざここに……?」
「そりゃあ宣戦布告よ……俺様の可愛い後輩が今どんなことしてんのかとか、気になるじゃん?」
困惑しながらなんとか口を開いた颯一郎に、ドヤ顔でそう返す裕貴。
ちなみに他の2人はというと、光は
(自分の事キングって呼ばせるってどーなの? ってかそもそも星裏って何だよ)
と内心ドン引いており、透は混乱しっぱなしだった。
そんな様子を見て、何かを邪推して裕貴が一言。
「……ははーん。安心しろ、年下を抱く趣味は無ぇ」
「べっ、別にそんなことを心配してるわけじゃないよ!!!!!!!」
その後裕貴は、えげつないセクハラを喰らった鈴蘭の鉄拳とあとシンプルに店で騒ぎを起こしたことで出禁を喰らい追い出された。
そして透は困惑したまま、ステージ5を迎えることとなる。
その店が何時頃からあるのか、透は知らない。しかし、彼らのゲームサークルにおいて、何かイベントがある度にここで料理を食べるというのが伝統となっているのだ。
「みんなで集まんの久しぶりですね。わたし最近教習所で忙しいし……」
「免許かぁ、そーいや僕まだだなぁ……まあいいや。それじゃ、ゲームの方はどーも折り返しみたいだし、他にも色々あったし、一旦諸々整理しようじゃないの」
「……透さん。ソレ、わざわざここでやる事か?」
いきなりそんなことを毒づきながらお冷を手に現れた、背が高いエプロン姿の少年に、鈴蘭は見覚えがなかった。
そもそもこの店に来るのが初めてなので当然なのだが。
「あ、お冷ありがと」
「ねえ先輩、この子……人って店員さんです? にしてはぱっと見高校生くらいっていうか……」
「そーいや鈴蘭ちゃん初めてだっけ。この子は綾人くん、このお店のオーナー夫婦の息子さんでね、休日とかはお店手伝ってるんだよ」
「そうそう。透さんとは結構長い付き合いかもだな。オレが小5くらいんときだっけ?」
……あれ、透先輩って大学進学で星降に来たって言ってなかったか? 鈴蘭は思った。
立っている綾人と椅子に腰掛ける透たちとの対比から鑑みるに、鈴蘭より背が高いどころか、なんなら170手前くらいはありそうだ。
自分の背が低い方であるということは激しく自覚している鈴蘭は、他人の年齢を身長で類推するのが難しい事だというのは十分承知しているが、しかし不可解だと彼女は首を傾げる。
「この人わたしよりちょっと下くらいでしょ? わたしが今度の正月で19だから……」
「え、アンタ大学生だったのか!? てっきり中学生かと」
「なんかすっごい失礼な事言ってない君!? え、じゃあ綾人……くんって今おいくつ?」
「オレ? フツーに中学二年生だが」
ちうがくにねんせい? あの背丈で??
鈴蘭は呆然としている。
「どしたの鈴ちゃん。あ、身長のコンプレックス?」
「ばっか光……馬鹿! お前コンプレックスだと分かってて本人に直接言う奴があるか!!」
「その気遣いにもわたし傷ついてますよ龍田先輩!」
そういや初めて会った時、中学生くらいにしか見えないとか思ったっけ。透は思い出した。
「やー、しっかし大学生以外も入れるよーになったのかと期待しちゃったぜ。ゲームサークルとか絶対楽しいしさ、オレも入りたいって思ってたんだよ」
「うっ……マジで同世代だと思ってましたか……」
「……注文決まったら早めに呼べよー」
痺れを切らしたか、あるいは面倒になったか――まあ絶対後者だろうが――綾人はそう言って去っていった。
「……しっかし、現状の整理かぁ。わざわざ店来るほどの事でもないよな気もするけど……あ、じゃあ俺カルボナーラ」
「神成先輩クリーム系好きなんですね、ちょっと意外。じゃあわたしはペペロンチーノ……大盛っちゃおっかな」
光と鈴蘭はめちゃくちゃメニューを物色している。
このままでは本題に入れるのがいつになるか……ということで、透は強引に軌道修正を図る。
「こないだね、僕と颯一くんで、影人……社長さんに会ってきたんだ」
「社長さんって……あ、エレスクの?」
「そうだよ光くん、サイレンスコーポレーションの社長さん。宿リ星とか色々気になる事もあったんで、連絡取ってみたら会えてさ……あ」
……そういや記憶の事聞きそびれたなと、今更ながら透は思い出した。
実際の所聞いてはいる。聞いてはいるのだが、彼がその事の方を思い出すことはきっと二度とない。
「……え、どうしたんです?」
「なんでもないよ鈴蘭ちゃん……なーんか、イマイチいい感じの情報入んなかったというか……」
「そうそう、微妙に話逸らされっぱなしな感じでしたよね。じゃあ俺このトマトのやつで」
「あ、決まった感じ? じゃ注文するか……綾人くーん」
呼ばれた綾人に、透は一同の注文を伝える。
「……で僕がアラビアータ。あとそうだね、前菜はソラーレサラダ、それからピザはマルガリータ!」
「りょーかい。パパとママに伝えとくわ」
あのトゲトゲした感じでパパママ呼びなんだ。
ちょっと意外そうな顔の鈴蘭を見て、光がわかるーとでも言いたげに笑った。
「……それで颯、なんか社長さんからおもろい話聞けたの?」
「おもろい……かどうかは期待に添いかねるけど。宿リ星はなんか厄ネタありそうだとか、そもそもこのelement squareの目的が、宿リ星を世間に知らしめることだとか、そんな感じの不思議なことを言ってはいたかな」
あの不思議な日を思い返すように、颯一郎は呟いた。
知らしめる? 鈴蘭は首を傾げる。
「こんな怪奇現象、わざわざ広めるって言うんです? 流石に誰も信じないでしょう」
「それなー鈴ちゃん。ま、実際何人か見れば話は別だろーけどね……颯とか、あと春ちゃんとか?」
光の脳裏には、先日の春菜との出来事がよぎった。
……今度のエレスクの前にでも、もう一度会ってちゃんと話を付けようかな。
ぼんやりと、彼はそう思った。
「え、春菜ちゃん何かしたんです?」
「んっとね、こないだ俺と一緒にスマホの中入っちゃってさ」
「スマホの中……?」
鈴蘭が首を傾げるのも、まあ当然だわなと光は笑い、事の次第を鈴蘭に説明し始める。
その裏で、社長の話を思い返し、透と颯一郎も話を始めた。
「……とすると現時点での能力持ちは、透先輩に俺、春菜さんに潤くんってとこですかね、先輩」
「あと炎里ちゃんでしょ、それから智和に真綾ちゃん」
「なるほど。そんで先輩、春菜さんのカードってなんでしたっけ」
「『海にて、心は裸になりたがる』だったよ。んで能力が、スマホの画面に入り込むこと……というか、写真に入ってたのかもしれないけど」
「あー、そんならスマホっぽいですね。ネットの海って感じで」
テーブルの両サイドで繰り広げられるそんな話は、綾人が前菜のサラダを持ってくるまで続いた。
その後は一同、サラダにピザに各々のパスタを食べるのに忙しく、特に話に進展はなかった。
……が、鈴蘭がペペロンチーノの最後の一口を食べ終えたその瞬間。
「も……ごくん。電話だ……げっ、ちょっと失礼します」
そう言って鈴蘭が、一旦席を立った。
「なんか随分嫌そうだけど、どうしたんだろうね」
「バイトか別のサークルじゃないですか、先輩? にしてはやけに嫌そうだったけど」
「まあバイトなら嫌だろうね。というか先輩、なんか気になってる感じだけど、やっぱお隣さんだと心配だったりすんの?」
「……え、いや、別にそんなことでは……」
颯一郎の推測に光が少し笑って、透をからかう。平和そのものな光景である……
が、直後に聞こえてきた鈴蘭の声に、一同は顔を強張らせる。
「はいはい……え、何をいきなり……えっなんで知って……いる!? 店の前に!? 今ぁ!?」
「ちょっ、何があったのさ鈴蘭ちゃん!」
「あー、その……」
透に呼びかけられて、心の底から面倒くさそうな顔で、鈴蘭が頭を抱える。
その顔は、過去の因縁か何かを今更突きつけられたような、そんな感じに何故か透には思えた。実際はもっとしょうもないことかもしれないが、しかし彼の脳裏には不安がよぎる。
(鈴蘭ちゃんがここまで狼狽する相手……そういや家族と仲が悪いとか言ってたけど、もしかしてその関連か!? まさかエレスク出てることを止められそうとか……)
あれ。
どうして僕は、こんなに彼女のことを心配しているのだろう。
家が隣というだけで、然程深い仲でもないはずなのに。
自分のことがよく分からなくなっていた透のことには気付く由もなく、鈴蘭も説明しようとはするのだが……
「あ、あんまり大した用事とか相手でもないんですけど、その……」
「よぉリリィ! ひっさしぶりだなぁ、元気してたか!!」
突然ドアを開き、やってきたその男を見て、鈴蘭は今年最大級のため息を放った。
大きく刺繍の入ったスカジャンを羽織ったその男は、灰色に染めた髪をわざわざ隠すようにバンダナを巻き、そして耳にはバッチバチにピアスを開けている。そして首元には何やらジャラジャラとアクセサリーがたくさん。
どう見ても一般人ではない。
「ちょ、あんた予約は!? 今の時間はこいつらの貸切りのハズ」
「いいだろ、ちょっと挨拶するくらいよ!」
招かれざる客を制止する綾人を押しのけ、男は鈴蘭の方へと向かっていく。
「えーっと、ひぃふぅみぃ……金髪、眼鏡、残りがリリィのお隣さんだろ? 見事に男所帯だな!」
「やめてくださいよいきなりっ! あなたには関係ないでしょ……キング!」
「「「キング!?」」」
現代日本であまり用いられることのないその敬称に、男が言うところの金髪と眼鏡と残りが声を揃えた。
「おう、俺様の事だな。俺様は格闘家でっ!」
「アマチュアのね」
「星裏の帝王でっ!」
「自称ね」
「コイツの初恋相手でっ!」
「なっ、だからそれは気の迷いって……」
「そして今度のエレスクでボス敵に大・抜・擢された男! キングこと……坂田裕貴だ!」
裕貴の気取った長台詞に淡々と水を差していく鈴蘭だが、流石に最後の一言には目を丸くした。
あと、透たちも。
「え……そんなアンタが、どうして今わざわざここに……?」
「そりゃあ宣戦布告よ……俺様の可愛い後輩が今どんなことしてんのかとか、気になるじゃん?」
困惑しながらなんとか口を開いた颯一郎に、ドヤ顔でそう返す裕貴。
ちなみに他の2人はというと、光は
(自分の事キングって呼ばせるってどーなの? ってかそもそも星裏って何だよ)
と内心ドン引いており、透は混乱しっぱなしだった。
そんな様子を見て、何かを邪推して裕貴が一言。
「……ははーん。安心しろ、年下を抱く趣味は無ぇ」
「べっ、別にそんなことを心配してるわけじゃないよ!!!!!!!」
その後裕貴は、えげつないセクハラを喰らった鈴蘭の鉄拳とあとシンプルに店で騒ぎを起こしたことで出禁を喰らい追い出された。
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