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ステージ2
幕間2 襲来、サイレンスコーポレーション
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エレスク休止中のある日……具体的にはGW明けの土曜日。透は散歩していた。
(宿リ星のこととか、色々考えなきゃだよなあ……ま、一旦散歩だな。散歩は僕の趣味なのだ)
一つ欠伸をつきながら、街を歩く透。
ここは流煌寺門前。元々この星降は門前町で、昔はこの辺が中心部だった。尤も、今は星降駅近辺が中心だが。
「しっかし、この辺も中々長閑でいいなぁ……時々変なものはあるけど」
近くの有名な七味屋の前に、どう見ても七味を爆発的に散布するための化学兵器にしか見えない、七味缶を模ったトラックがあるのを見ながら透は呟く。
「……あ。そういやこの辺にあるんだっけ、あの会社」
サイレンスコーポレーション。本社はどうも、築100年は優に超える古い旅館の建物を、最近流行りのリノベーションをして使っているようだ。
今いるところから西に進むとその内着くらしい……と、スマホのアプリが告げている。
「うーん……まあいっか。部外者な僕が行ったとて迷惑でしかなかろう、今日はそろそろ帰って課題とかやらないt」
「あーっ、透! ちょうど良かったちょっと来なさい!」
遠慮してたのに向こうから来おった。
いかにもザ・私服という感じのパーカー姿な彼女は美琴。透の真正面から出てきたので、きっと会社から出てきたのだろう。
「美琴さん。奇遇だね、こんなとこで会うなんて」
「まあ近所だしねー。それはそうと話があるのよ、ちょっとアンタらのアジトまで案内してもらうわ」
「アジトて。僕らのことなんだと思ってるんだよ」
「駅ビルまで出向いてゲームしたりしてる連中?」
「うーん純然たる事実」
アジト……もとい透たち、信濃大学ゲームサークルの活動拠点であるエトワール星降駅前の一室。そこに行きたいということは、どう考えても理由は一つ。
「宿リ星……だね」
「ご名答! アンタ、我夢に話したんでしょ? 宿リ星のこと。だから、早速診断してもらおうって思って!」
「診断……うん、まあそんなことを言ったような気はする」
「でしょ? エレスク側を動かせないこの状況下、できることはやっといた方がいいかなーって」
「なるほど……所で、大丈夫なの? エレスクの方……土曜日に何してんのか知らないけど、君もいた方がいいのでは」
「大丈夫、我夢と咲夜がなんとかしてくれるって」
ひと段落したらすぐ来いって伝えてある、と美琴は言った。こんな人に振り回されて彼らも大変だなあと透は思った。
星降駅方面は、サイレンスコーポレーションの真南だ。ちなみにこの道、暫く進むと市立図書館の近くに出る。ステージ1で智和と戦ったっけなあ、と図書館を横目に透は思い返す。
「そういや今回のエレスク休止、やっぱり原因は……」
「大体心当たりはあるでしょ? ライドレールよ」
「やっぱあなたたちの方でも定着してんだね、それで」
ライドレール。
ゲーム内で出てくる仕掛けの一つで、上に乗ったプレイヤーを高速で移動させてくれる。縮尺1/1な星降が舞台のこのゲームにおいて、高速な移動手段はとても有難い。
ただ一点、実装されているはずのないものであるということを除けば。
「これは絶対誰かが持ち込んだバグ……んでアンタの話によれば、誰かの宿リ星が具現化したものらしいじゃない」
「まあ、単なる憶測だけどね」
「今んとこその憶測に頼らにゃならんほどの異常事態なのよ、一応お父様も言及してたっぽいし」
そういや影人さん――もちろん美琴の言うお父様のことだ――最近僕に連絡してこないな。透はふと思った。まだこっちに連絡できる状態でないのか?
「……どしたの? 何か悩みでも?」
「えっ? ……いや、何でもない」
「……悩みって言って思ったんだけどさ、アンタらお悩み相談とか始めたらいいんじゃないの?」
「え?」
考えてもみなさいよ、と美琴は続けた。
「宿リ星……アンタが我夢に話した内容によれば、超能力的な何かみたいじゃない。よくわからないまま能力に振り回されてたら、それは立派なお悩みでしょ?」
「あー、確かに。宿リ星感染るらしいし、既に能力者がいるらしいこの町でなら……たくさん会えて研究が手っ取り早い!」
「でしょ? そのお客様1号、あたしがなってあげようじゃない」
成程、彼女の用事はつまりソレらしい。宿リ星の研究は、確かに行方不明な彼女の父の手掛かりになり得るから。
「……まだサービス始めてすらいないから君は0号になると思うけど」
「細っかいわねーアンタ。ちょっと腹立ったわよ今の」
無駄話はともかく、人が来るんであればそれなりに準備はしなきゃだよなあ。透はスマホを取り出した。
ゲームサークルのチャットを開き、ちゃちゃっとメッセージを書き込む。
めんつゆ『今部室誰かいない?』
龍田『近くにいるんで行きます』
Lily『わたし行けないです💦』
ひかる☆『(用事あるんでパスみたな意味合いのスタンプ)』
「なーんだ、来れても颯一くんだけか」
「颯一……ってあの眼鏡の人?」
「そうだよ?」
「うおっマジか……いきなりってなると緊張するわね」
「何にだよ」
「……ってかアンタ、めんつゆってネーミングどうなの? 露から取ったんだろうけどさ」
「いいだろ別に」
現実世界じゃ今日が初対面なのだが、直接会うと不思議な人だなあ。透は思った。
数分後。
「最後こっちを曲がったら……おっ、見えてきた!」
エトワール星降駅前……例の駅ビルが視界に入る。
「へー、ここが。けっこういいビルじゃない」
「そんなの分かるもんなの?」
「そりゃそーよ。なんせあたし社長令嬢様よ?」
「へいへい。んで、颯一のやつもう着いたかな……?」
スマホを取り出し視線を落とした透。
その横で手盛り無沙汰そうにあたりを見回す美琴は……急に動きを止めた。
「……ん? どうしたよ美琴さん」
「いや、アレ……えっ」
怪訝そうに振り向くと、ガードレールの傍に颯一郎が立っていた。
「なーんだ、先輩まだ着いてなかったんですね」
「え、うん……そういう君はいつ来たんだよ」
「いや普通に今ですけど。んでそっちは……えーっと、美琴さん……でしたっけ?」
「えっ? あっ、うん、そうだよ」
なんか引き気味だ。なんで?
「どうしたんですか美琴さん? 俺のこと、変なものでも見るような目で」
「……こっちでしてた予想が完ッ璧に当たりまくっててビビり散らかしてる感じよ」
「「予想?」」
ああ、そういえば言ってなかったかしら? 美琴は話し続ける。
「ほら、透にはさっき話したじゃない、ライドレールの件。アレ、犯人は……いや、見てもらった方が早いか」
「な、何の話をしてるのさ美琴さん」
「透はちょっとそこで見てなさい……颯一郎、アンタ早くあのビル向かいなさい、さっきやってたみたいに」
「えっ何故……? まあいいですけど」
困惑しつつも颯一郎は歩き出し……ガードレールに飛び乗ると。
そのままスゥ―っと――それこそエレスク内でライドレールに乗った時のように――レールの上を滑っていった。
「……っと。着きましたけど……え、どうしたんですー2人とも」
透は目を見開いていた。
「……さっきちょっとだけ話したじゃない、ライドレールと宿リ星の件。状況的に、犯人は颯一郎か他数人のうち誰かって話になってたんだけど……」
「あー、十中八九颯一くんだね。間違いない」
何を話しているんだ? 首を傾げる颯一郎。
「オッケー、質問だ颯一くん。いつもそういう感じで移動してんのかい?」
「そういう感じとは……? あー、まあちょくちょくこうしてますけど?」
「っしゃあ言質とったわよ! 行くぞ透!」
「了解! 確保ォ!」
「待って待って何事!?!?」
お前ら一旦落ち着けと颯一郎に導かれ、一同はビル内の部室に移動した。
「えーっと? 要するに俺の密かな特技が宿リ星だったと?」
「自分で言うもんかね密かなとか」
軽くツッコむ透がいるのは、ゲームサークル部室内。颯一郎の能力について、一同は考えていた。
「まあ、能力としてはアレが全てよね……ガードレールの上とかを滑って移動するって感じの」
「まあそうですね美琴さん……他、特に話すことあります?」
「……うん、確かにないかな」
君のカードは……『【es】~ Theme of es ~』だったね。透は呟いた。
「あの曲、歌い始めが『長いレールの上を歩む旅路だ』だから、たぶんその辺が反応してあのカードになったんだと思う」
「え? そんな対応するもんなんですか?」
颯一郎は――勿論宿リ星のことを然程知らない美琴も――困惑気味だ。
「そりゃ対応するさ。なんせ影人さんの言葉が正しければ、僕の能力は『宿リ星の判別』、だからね。判別にミスチルの曲使ってる以上、一部その曲と似通う点はあるだろうよ」
「そもそも何でミスチル使ってるんです?」
「そりゃあ君……純然たる僕の趣味よ」
「……なーんか薄々気づいてたけどさあ、透って結構変人ね」
苦笑いしながら、美琴は呟いた。
その後、仕事終わり――サーバーとかに問題がないかの調査とか、他色々――に美琴に呼び出された社員2名が部室へと入ってきた。
「ふぁあ……帰りたい」
「ほら初杉先輩、すぐ終わりますから。しかし結構いい部屋使ってんじゃねーかよ」
「無駄口叩いてないで、はよ診断してもらうわよ。んじゃよろしくね、透」
「りょーかい。じゃこちらのカードを……」
診断結果。
「あたしのは『No.30 CROSS ROAD』ねえ。正直元を知らんから何とも……」
「何だよ美琴さん。その曲ミリオン行ってんだぞ」
「知らんわよ。じゃあ次、我夢」
「俺は……『No.42 everybody goes ー秩序のない現代にドロップキックー』……流石にこの曲名は見たことある」
「まあ割と有名な部類ですからね。で、そちらの……咲夜さんだっけ? あなたは何が出ました?」
「『No.51 ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~』……なんか長いわねー曲名」
「これは……アルバム曲ですね。名盤なんで買ってください」
「どのアルバムよ……ふぁあ」
とりあえず歌詞を調べてみよう。3人はそう思った。
(宿リ星のこととか、色々考えなきゃだよなあ……ま、一旦散歩だな。散歩は僕の趣味なのだ)
一つ欠伸をつきながら、街を歩く透。
ここは流煌寺門前。元々この星降は門前町で、昔はこの辺が中心部だった。尤も、今は星降駅近辺が中心だが。
「しっかし、この辺も中々長閑でいいなぁ……時々変なものはあるけど」
近くの有名な七味屋の前に、どう見ても七味を爆発的に散布するための化学兵器にしか見えない、七味缶を模ったトラックがあるのを見ながら透は呟く。
「……あ。そういやこの辺にあるんだっけ、あの会社」
サイレンスコーポレーション。本社はどうも、築100年は優に超える古い旅館の建物を、最近流行りのリノベーションをして使っているようだ。
今いるところから西に進むとその内着くらしい……と、スマホのアプリが告げている。
「うーん……まあいっか。部外者な僕が行ったとて迷惑でしかなかろう、今日はそろそろ帰って課題とかやらないt」
「あーっ、透! ちょうど良かったちょっと来なさい!」
遠慮してたのに向こうから来おった。
いかにもザ・私服という感じのパーカー姿な彼女は美琴。透の真正面から出てきたので、きっと会社から出てきたのだろう。
「美琴さん。奇遇だね、こんなとこで会うなんて」
「まあ近所だしねー。それはそうと話があるのよ、ちょっとアンタらのアジトまで案内してもらうわ」
「アジトて。僕らのことなんだと思ってるんだよ」
「駅ビルまで出向いてゲームしたりしてる連中?」
「うーん純然たる事実」
アジト……もとい透たち、信濃大学ゲームサークルの活動拠点であるエトワール星降駅前の一室。そこに行きたいということは、どう考えても理由は一つ。
「宿リ星……だね」
「ご名答! アンタ、我夢に話したんでしょ? 宿リ星のこと。だから、早速診断してもらおうって思って!」
「診断……うん、まあそんなことを言ったような気はする」
「でしょ? エレスク側を動かせないこの状況下、できることはやっといた方がいいかなーって」
「なるほど……所で、大丈夫なの? エレスクの方……土曜日に何してんのか知らないけど、君もいた方がいいのでは」
「大丈夫、我夢と咲夜がなんとかしてくれるって」
ひと段落したらすぐ来いって伝えてある、と美琴は言った。こんな人に振り回されて彼らも大変だなあと透は思った。
星降駅方面は、サイレンスコーポレーションの真南だ。ちなみにこの道、暫く進むと市立図書館の近くに出る。ステージ1で智和と戦ったっけなあ、と図書館を横目に透は思い返す。
「そういや今回のエレスク休止、やっぱり原因は……」
「大体心当たりはあるでしょ? ライドレールよ」
「やっぱあなたたちの方でも定着してんだね、それで」
ライドレール。
ゲーム内で出てくる仕掛けの一つで、上に乗ったプレイヤーを高速で移動させてくれる。縮尺1/1な星降が舞台のこのゲームにおいて、高速な移動手段はとても有難い。
ただ一点、実装されているはずのないものであるということを除けば。
「これは絶対誰かが持ち込んだバグ……んでアンタの話によれば、誰かの宿リ星が具現化したものらしいじゃない」
「まあ、単なる憶測だけどね」
「今んとこその憶測に頼らにゃならんほどの異常事態なのよ、一応お父様も言及してたっぽいし」
そういや影人さん――もちろん美琴の言うお父様のことだ――最近僕に連絡してこないな。透はふと思った。まだこっちに連絡できる状態でないのか?
「……どしたの? 何か悩みでも?」
「えっ? ……いや、何でもない」
「……悩みって言って思ったんだけどさ、アンタらお悩み相談とか始めたらいいんじゃないの?」
「え?」
考えてもみなさいよ、と美琴は続けた。
「宿リ星……アンタが我夢に話した内容によれば、超能力的な何かみたいじゃない。よくわからないまま能力に振り回されてたら、それは立派なお悩みでしょ?」
「あー、確かに。宿リ星感染るらしいし、既に能力者がいるらしいこの町でなら……たくさん会えて研究が手っ取り早い!」
「でしょ? そのお客様1号、あたしがなってあげようじゃない」
成程、彼女の用事はつまりソレらしい。宿リ星の研究は、確かに行方不明な彼女の父の手掛かりになり得るから。
「……まだサービス始めてすらいないから君は0号になると思うけど」
「細っかいわねーアンタ。ちょっと腹立ったわよ今の」
無駄話はともかく、人が来るんであればそれなりに準備はしなきゃだよなあ。透はスマホを取り出した。
ゲームサークルのチャットを開き、ちゃちゃっとメッセージを書き込む。
めんつゆ『今部室誰かいない?』
龍田『近くにいるんで行きます』
Lily『わたし行けないです💦』
ひかる☆『(用事あるんでパスみたな意味合いのスタンプ)』
「なーんだ、来れても颯一くんだけか」
「颯一……ってあの眼鏡の人?」
「そうだよ?」
「うおっマジか……いきなりってなると緊張するわね」
「何にだよ」
「……ってかアンタ、めんつゆってネーミングどうなの? 露から取ったんだろうけどさ」
「いいだろ別に」
現実世界じゃ今日が初対面なのだが、直接会うと不思議な人だなあ。透は思った。
数分後。
「最後こっちを曲がったら……おっ、見えてきた!」
エトワール星降駅前……例の駅ビルが視界に入る。
「へー、ここが。けっこういいビルじゃない」
「そんなの分かるもんなの?」
「そりゃそーよ。なんせあたし社長令嬢様よ?」
「へいへい。んで、颯一のやつもう着いたかな……?」
スマホを取り出し視線を落とした透。
その横で手盛り無沙汰そうにあたりを見回す美琴は……急に動きを止めた。
「……ん? どうしたよ美琴さん」
「いや、アレ……えっ」
怪訝そうに振り向くと、ガードレールの傍に颯一郎が立っていた。
「なーんだ、先輩まだ着いてなかったんですね」
「え、うん……そういう君はいつ来たんだよ」
「いや普通に今ですけど。んでそっちは……えーっと、美琴さん……でしたっけ?」
「えっ? あっ、うん、そうだよ」
なんか引き気味だ。なんで?
「どうしたんですか美琴さん? 俺のこと、変なものでも見るような目で」
「……こっちでしてた予想が完ッ璧に当たりまくっててビビり散らかしてる感じよ」
「「予想?」」
ああ、そういえば言ってなかったかしら? 美琴は話し続ける。
「ほら、透にはさっき話したじゃない、ライドレールの件。アレ、犯人は……いや、見てもらった方が早いか」
「な、何の話をしてるのさ美琴さん」
「透はちょっとそこで見てなさい……颯一郎、アンタ早くあのビル向かいなさい、さっきやってたみたいに」
「えっ何故……? まあいいですけど」
困惑しつつも颯一郎は歩き出し……ガードレールに飛び乗ると。
そのままスゥ―っと――それこそエレスク内でライドレールに乗った時のように――レールの上を滑っていった。
「……っと。着きましたけど……え、どうしたんですー2人とも」
透は目を見開いていた。
「……さっきちょっとだけ話したじゃない、ライドレールと宿リ星の件。状況的に、犯人は颯一郎か他数人のうち誰かって話になってたんだけど……」
「あー、十中八九颯一くんだね。間違いない」
何を話しているんだ? 首を傾げる颯一郎。
「オッケー、質問だ颯一くん。いつもそういう感じで移動してんのかい?」
「そういう感じとは……? あー、まあちょくちょくこうしてますけど?」
「っしゃあ言質とったわよ! 行くぞ透!」
「了解! 確保ォ!」
「待って待って何事!?!?」
お前ら一旦落ち着けと颯一郎に導かれ、一同はビル内の部室に移動した。
「えーっと? 要するに俺の密かな特技が宿リ星だったと?」
「自分で言うもんかね密かなとか」
軽くツッコむ透がいるのは、ゲームサークル部室内。颯一郎の能力について、一同は考えていた。
「まあ、能力としてはアレが全てよね……ガードレールの上とかを滑って移動するって感じの」
「まあそうですね美琴さん……他、特に話すことあります?」
「……うん、確かにないかな」
君のカードは……『【es】~ Theme of es ~』だったね。透は呟いた。
「あの曲、歌い始めが『長いレールの上を歩む旅路だ』だから、たぶんその辺が反応してあのカードになったんだと思う」
「え? そんな対応するもんなんですか?」
颯一郎は――勿論宿リ星のことを然程知らない美琴も――困惑気味だ。
「そりゃ対応するさ。なんせ影人さんの言葉が正しければ、僕の能力は『宿リ星の判別』、だからね。判別にミスチルの曲使ってる以上、一部その曲と似通う点はあるだろうよ」
「そもそも何でミスチル使ってるんです?」
「そりゃあ君……純然たる僕の趣味よ」
「……なーんか薄々気づいてたけどさあ、透って結構変人ね」
苦笑いしながら、美琴は呟いた。
その後、仕事終わり――サーバーとかに問題がないかの調査とか、他色々――に美琴に呼び出された社員2名が部室へと入ってきた。
「ふぁあ……帰りたい」
「ほら初杉先輩、すぐ終わりますから。しかし結構いい部屋使ってんじゃねーかよ」
「無駄口叩いてないで、はよ診断してもらうわよ。んじゃよろしくね、透」
「りょーかい。じゃこちらのカードを……」
診断結果。
「あたしのは『No.30 CROSS ROAD』ねえ。正直元を知らんから何とも……」
「何だよ美琴さん。その曲ミリオン行ってんだぞ」
「知らんわよ。じゃあ次、我夢」
「俺は……『No.42 everybody goes ー秩序のない現代にドロップキックー』……流石にこの曲名は見たことある」
「まあ割と有名な部類ですからね。で、そちらの……咲夜さんだっけ? あなたは何が出ました?」
「『No.51 ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~』……なんか長いわねー曲名」
「これは……アルバム曲ですね。名盤なんで買ってください」
「どのアルバムよ……ふぁあ」
とりあえず歌詞を調べてみよう。3人はそう思った。
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