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ステージ1
2 十字路、模索中
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さーて、銃を使った無属性の技にはどんなものがあるだろうか。
そんなことを考えながら、透はスライムたちに立ち向かう。
「銃っつったら、大体チャージする必殺技はあるよなぁ……」
基本技にデバフ効果がある以上、そのデバフを伸ばす方面の強化はあって然るべきだろう。
だったらチャージすりゃ……なんて思っていると。
スライムたちは素早く透に飛びかかってきた。
「まあ、そんなにゆっくり悩ませてくれるはずないよな……っと!」
先ほど紫スライムを倒した分、少しだけ手薄になっている方向へと緊急回避する。
流石はVRMMO、現実世界じゃできないような凄い動きも思いのままだ。
(……そういや回避技もありだな。敵の攻撃を掻い潜って、回避直後にそのままバン! って具合に)
ちなみにこのゲーム、念じたものに近い技が勝手に発動される仕組みとなっている。
というわけで、彼は無意識のうちに、スライムを一体狙撃していた。
「おっ、今回は一発!? なるほど、通常技より威力は大分高めってわけね」
回避しながら放つのは所謂カウンター技というのに近しい。大抵普通の技よりも高火力なものなのだ。ゲームなら常識。
「他に強めの技といえば……やっぱタメ技だね!」
実際のピストルにチャージなんて動作はないし、なんなら彼はピストルなんぞ触れたこともないのだが……まあその辺はゲームなのだ。やりたいように出来るのである。
「残りのスライムは……結構多いが、このまま纏めて吹っ飛ばす! うおおおお……」
銃口に、透明なエネルギーが集っていく。
「行っけええええ!」
発射されたその光弾は、スライムたちの前まで飛んでいき……そこで消滅した。
「あれぇっ!? 何で!?」
今のは絶対敵どもを貫通してくやつか、もしくは少し進んで大爆発ってタイプだろうと透は思った。これで何も起こらないとかあっちゃいけないことだろ……しかし、彼がそう思っているのも束の間。
突如、風が吹いた。
(ん? 僕、風属性の技なんぞ持ってないはず……)
違和感の正体はすぐに分かった。というのもスライムたち、先ほど消滅した光弾があった場所……その中心に吸い寄せられていたのだ。
さながら洗濯機のなかでかき混ぜられてる衣類のごとく、スライムたちは互いにぶつかり合ってダメージを受けている。
「……なるほど、真空ってことね!」
真空空間。空気のない空間のこと、もしくは気圧がゼロな空間のこと。
普通の場所に唐突に真空ができた場合……そこには風が吹き込む。
「なるほど……敵を引き寄せる置き技ってわけね。真空なら確かに無だもんな」
集団戦ならこの技は有効だなあなんて考えながら、淡々と通常技を連射してスライムたちを退治していく透。
お金とエレメントジェムがたくさんドロップした。
「あの技は……そうだな、真空バレット……とかかな?」
何となく技名なんかを考えながらドロップアイテム(今回は透明なものもチラホラとあった)を回収していると……
ふと、足音が聞こえてきた。
(足音……少なくともスライムじゃないな。他のプレイヤー?)
そう思い振り向くと、後ろにいたのは恐らく高校生くらいの女子。見た目は至って普通の、紺色のブレザーに灰色スカート。ブレザーの内側はどう見ても制服に指定される種類のものとは思えないTシャツで、水飛沫か何かのような模様が目立つ。
ひょっとするとこの子も自分と同じくキャラクリをサボったタイプかと思い、少々親近感を抱いた透は話しかけることにした。
「君もプレイヤー?」
「それ以外で何に見えるって言うのよ」
やけにツンツンした態度だ。
「うーん……人に化けるタイプのモンスター?」
「そんなわけないでしょうよ」
よく見ると彼女、背中に何か棒のようなものを背負っている。彼女の武器はアレなのだろう。
「僕は露西透。君は?」
「……滝沢春菜。所であんた、今暇? ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「ん? いいけど……何?」
透が返事をすると、春菜は手元の機械(多分スマホか何かだろう……透にも持たされているだが、彼はまだ気付いていない)を操作し、空中にスクリーンを写し出した。
「このゲーム、それぞれのプレイヤーにミッションが課せられてて、クリアするとお金とかもらえるみたいなのよ」
「へぇ……僕のも見てみるか」
ズボンのポケットにスマホが入っていたことに今更ながら気付き、透も自身のミッションを確認する。技を3つ編み出す、モンスターを15体倒す、等々様々なものが書いてあり、ご丁寧に進捗状況もセットで記載されている。
「それで、手伝えってのは、君のミッションを……ってことでいいんだよね、滝沢さん」
初対面なので一応名字で呼ぶことにした透。ほら、ホントに年下かどうかも分からないし。
「そうよ。ミッションってのは……『プレイヤーの誰かのHPを50%以下にする』ってこと」
「へぇ……え?」
反応しようとした瞬間……透の体は宙を舞っていた。
春菜は背中の棒(実は2本あった)を取り出し、両手に1本ずつ持って透の足の方に打撃を加えたのだ。
透はその棒に……いや、棒が纏う水飛沫に吹き飛ばされ、少し転がった。体力は……流石に向こうのは通常技らしく、少ししか減っていない。
(……いや、あれは棒じゃない! さては……)
「トンファー……そんでもって水属性!」
「正解……知り合いでもないんで、許諾は省かせてもらうわね」
トンファーの先(持ち手から遠くにある方)をこちらに向けて、春菜は笑う。
「言っとくけど……流れはずっと、うちのもんだよ?」
「へぇ……そんなら僕の方も、」
体勢を立て直し、透も銃口を向ける。
「パーフェクトにクリアさせてもらうよ!」
そんなことを考えながら、透はスライムたちに立ち向かう。
「銃っつったら、大体チャージする必殺技はあるよなぁ……」
基本技にデバフ効果がある以上、そのデバフを伸ばす方面の強化はあって然るべきだろう。
だったらチャージすりゃ……なんて思っていると。
スライムたちは素早く透に飛びかかってきた。
「まあ、そんなにゆっくり悩ませてくれるはずないよな……っと!」
先ほど紫スライムを倒した分、少しだけ手薄になっている方向へと緊急回避する。
流石はVRMMO、現実世界じゃできないような凄い動きも思いのままだ。
(……そういや回避技もありだな。敵の攻撃を掻い潜って、回避直後にそのままバン! って具合に)
ちなみにこのゲーム、念じたものに近い技が勝手に発動される仕組みとなっている。
というわけで、彼は無意識のうちに、スライムを一体狙撃していた。
「おっ、今回は一発!? なるほど、通常技より威力は大分高めってわけね」
回避しながら放つのは所謂カウンター技というのに近しい。大抵普通の技よりも高火力なものなのだ。ゲームなら常識。
「他に強めの技といえば……やっぱタメ技だね!」
実際のピストルにチャージなんて動作はないし、なんなら彼はピストルなんぞ触れたこともないのだが……まあその辺はゲームなのだ。やりたいように出来るのである。
「残りのスライムは……結構多いが、このまま纏めて吹っ飛ばす! うおおおお……」
銃口に、透明なエネルギーが集っていく。
「行っけええええ!」
発射されたその光弾は、スライムたちの前まで飛んでいき……そこで消滅した。
「あれぇっ!? 何で!?」
今のは絶対敵どもを貫通してくやつか、もしくは少し進んで大爆発ってタイプだろうと透は思った。これで何も起こらないとかあっちゃいけないことだろ……しかし、彼がそう思っているのも束の間。
突如、風が吹いた。
(ん? 僕、風属性の技なんぞ持ってないはず……)
違和感の正体はすぐに分かった。というのもスライムたち、先ほど消滅した光弾があった場所……その中心に吸い寄せられていたのだ。
さながら洗濯機のなかでかき混ぜられてる衣類のごとく、スライムたちは互いにぶつかり合ってダメージを受けている。
「……なるほど、真空ってことね!」
真空空間。空気のない空間のこと、もしくは気圧がゼロな空間のこと。
普通の場所に唐突に真空ができた場合……そこには風が吹き込む。
「なるほど……敵を引き寄せる置き技ってわけね。真空なら確かに無だもんな」
集団戦ならこの技は有効だなあなんて考えながら、淡々と通常技を連射してスライムたちを退治していく透。
お金とエレメントジェムがたくさんドロップした。
「あの技は……そうだな、真空バレット……とかかな?」
何となく技名なんかを考えながらドロップアイテム(今回は透明なものもチラホラとあった)を回収していると……
ふと、足音が聞こえてきた。
(足音……少なくともスライムじゃないな。他のプレイヤー?)
そう思い振り向くと、後ろにいたのは恐らく高校生くらいの女子。見た目は至って普通の、紺色のブレザーに灰色スカート。ブレザーの内側はどう見ても制服に指定される種類のものとは思えないTシャツで、水飛沫か何かのような模様が目立つ。
ひょっとするとこの子も自分と同じくキャラクリをサボったタイプかと思い、少々親近感を抱いた透は話しかけることにした。
「君もプレイヤー?」
「それ以外で何に見えるって言うのよ」
やけにツンツンした態度だ。
「うーん……人に化けるタイプのモンスター?」
「そんなわけないでしょうよ」
よく見ると彼女、背中に何か棒のようなものを背負っている。彼女の武器はアレなのだろう。
「僕は露西透。君は?」
「……滝沢春菜。所であんた、今暇? ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「ん? いいけど……何?」
透が返事をすると、春菜は手元の機械(多分スマホか何かだろう……透にも持たされているだが、彼はまだ気付いていない)を操作し、空中にスクリーンを写し出した。
「このゲーム、それぞれのプレイヤーにミッションが課せられてて、クリアするとお金とかもらえるみたいなのよ」
「へぇ……僕のも見てみるか」
ズボンのポケットにスマホが入っていたことに今更ながら気付き、透も自身のミッションを確認する。技を3つ編み出す、モンスターを15体倒す、等々様々なものが書いてあり、ご丁寧に進捗状況もセットで記載されている。
「それで、手伝えってのは、君のミッションを……ってことでいいんだよね、滝沢さん」
初対面なので一応名字で呼ぶことにした透。ほら、ホントに年下かどうかも分からないし。
「そうよ。ミッションってのは……『プレイヤーの誰かのHPを50%以下にする』ってこと」
「へぇ……え?」
反応しようとした瞬間……透の体は宙を舞っていた。
春菜は背中の棒(実は2本あった)を取り出し、両手に1本ずつ持って透の足の方に打撃を加えたのだ。
透はその棒に……いや、棒が纏う水飛沫に吹き飛ばされ、少し転がった。体力は……流石に向こうのは通常技らしく、少ししか減っていない。
(……いや、あれは棒じゃない! さては……)
「トンファー……そんでもって水属性!」
「正解……知り合いでもないんで、許諾は省かせてもらうわね」
トンファーの先(持ち手から遠くにある方)をこちらに向けて、春菜は笑う。
「言っとくけど……流れはずっと、うちのもんだよ?」
「へぇ……そんなら僕の方も、」
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「パーフェクトにクリアさせてもらうよ!」
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