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一章
24、戦う理由
しおりを挟むジンは先へ進んだ。
薄暗い通路はところどころ気休め程度のランプが灯っている。
「ここか……!!」
貴賓室と書かれた部屋にやっと辿り着いた。会場内は迷路のような構造だったので、エルメスにあらかじめ聞いていたが、正直どこが貴賓室かわからなかった。そのため、ジンは片っ端から探して走り回っていたのだ。
やっと辿り着けた扉を思いっきり蹴破って入った。
そこにはガラス越しに闇市の舞台を見下ろしている男が一人、立っていた。
「よくも、闇市を台無しにしてくれたな!!」
こちらをゆっくり振り返った男は痩身の男だった。身なりはハンターより小洒落た格好をしており、どこかの貴族だと言われても納得する。
しかし、その男は蜘蛛の形をブローチを胸にしていたのだ。まさに、この男がレガーロのお頭。
「あんたが、お頭……だな?」
彼の足元には小太りの男が倒れている。きっとそいつが今回の闇市の主催者だったに違いない。
「ああ、僕がレガーロのお頭、マクベスさ。でもな、それも今日で終わる予定だった!!」
マクベスは剣を手に、ジンへ向かって急接近してきた。
「そんなことはどうでもいい!! あんた、よくも人の物を盗んでくれたな!!」
迎撃態勢を取り、ジンはマクベスの攻撃を迎え撃つ。ガキイン、と刃がぶつかった。
「うるさい!! このオークションで虹蛇が高く売れれば、その金で僕は貴族階級を買えたんだ!! こんな土を食うようなハンター仕事ともおさらばだったのに!!」
「貴族社会の事なんて知らないしどうでもいい!! 重要なのはお前らが人から物を盗んだってことだ!! そのせいで誰かを悲しませたんだぞ!!」
「それがハンターなんだよ!! 物や命を奪い、僕たちが生きる!! 弱い奴は強い奴に淘汰されていく!! それが弱肉強食の世界だ!!」
すると床から人形がぬっと現れる。
「僕の未来を邪魔した奴は、死ぬがいい!!」
マクベスは押し切って追撃を打ち込んでくる。
ジンはバックステップで躱しつつ、マクベスの攻撃を弾き叩き、迎撃をする。しかしジンの迎撃を軽い身のこなしで避けたマクベスの追撃は猛攻だった。彼から放たれる攻撃は目にも留まらぬ速さなのだ。
隙を突き、致命傷を負わせようとしてくる。さすがはハンターだ。
ジンはその縦横無尽に叩きつけられる剣閃を弾きまくるが、防戦一方なのをいいことに、人形たちもジンへ向かって切り込んできたのだ。
マクベス同様、超高速で振り下ろされる剣は、まさに降り注ぐ剣の嵐。
刃がぶつかる毎に剣戟音が響き、火花が飛び散る。
その衝撃波が空間を軋ませた。
「死ね死ね死ね死ねええええええ!!」
「……未来なんて、いくらでも変えられるだろ!!」
ジンは爆発的な力を発し、全ての攻撃を完璧なタイミングで弾き返していた。
多量に襲いかかってくる人形たちを切り伏せ、横へ薙ぎ、相手の攻撃の隙をついて、他からの攻撃を避けつつ回し蹴りをお見舞いする。
ジンに集中するように一塊になっていた人形がどんどん吹き飛ばされ、切り倒されていく。
気づいたときには、ジンはあっという間に人形を全て蹴散らしていた。
それでもひるむことなく果敢に攻め立ててくるマクベスの剣技は、速く捉えどころのない乱れ打ちだ。腕が想像以上にしなり、予想している方向からは攻撃がこず、ややずれてジンを狙うのだ。
ジンは幾度となく弾き返す。
「くそ……!! お前は許さない……!!」
するとマクベスの腕につけているバングルが光り出す――。
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