魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

文字の大きさ
上 下
20 / 33
一章

19、闇市へ

しおりを挟む

 アジトに潜入して二日後。午前十一時二十五分。

「……セドリック、本気か?」
「ああ。レオを出品する」

 レオは子犬みたいになっているため、セドリックに抱きかかえられている。ちまっとしているレオは物凄く可愛い。毛が見るからにふわふわで、わしゃわしゃしたくなる。

 にしても一体どうなったらこんなサイズ感になるんだ?

 インカテンカへやってきた三人。

 怪しまれないようにハンターの変装をした三人は、闇市に行ってレオを出品する。そして闇市の開催される前、もしくは開催中に盗まれたものを探し出し、回収するという流れだ。

 まあ、たとえ出品されたとしても、レオはただの子犬ではないので、セドリックの言うとおり大丈夫だろう。

 三人は闇市へのゲートへ辿り着く。

 商店街の裏通りにあるマンホール。それが、エルメスに教えられた闇市へのゲートだ。そこは人通りが少なく薄暗い。

 確かにここから人が出入りしていても、誰にも気づかれないだろう。
 
「それじゃ、行くぞ?」

 三人はマンホールへ通行証をかざす。するとマンホールが光りだし、三人を光が呑み込んだ次の瞬間、別のところに三人とも立っていた。
 
「ここが……」
「闇市会場」

 昼間なのに薄暗い室内は、目を凝らさなければよく見えない。

「ようこそ、闇市会場へ」

 真っ黒い顔の案内人がお辞儀をする。それには目がなく、まるで動く人形のようだ。

「ここへ出品者の名前と出品物の名称を」

 中に浮いている名簿に、セドリックが名前を書き連ねてゆく。

「出品物の審査を致しますので、どうぞこちらへ」

 ジンとフィオナがその後ろをついていこうとしたら。

「……そちらの二名様は?」
「ああ、俺の連れだ。こいつが暴れだしたら俺一人じゃ捕らえられないからな」

 そう言ってセドリックがフェンリルをチラ見せする。ナイスカバー、セドリック。

「ああ、なるほど……。では、お連れ様も一緒に、こちらへどうぞ」

 納得した案内人は、三人を誘導した。

 辿り着いた審査台には眼鏡をかけた女性が一人だけ立っていた。

「その出品者が最後ね?……もう始まるっていうのに。早くしてよね」

 女性は文句を言うが、フェンリルを見るや否や目の色を変えた。

「これはいいフェンリルね。色艶がすごくいい。子どもにしては筋肉量が多い気もするけれど……」

 口を開けさせ、目をライトで照らして何かを見ている。その後で頷いた女性が興奮気味に頷いた。

「いいわ、すごくいい。今審査証明書を書くから、待ってて。あと、出品物の保管庫はこの奥だから、呼ばれるまでその子は待機ね。もちろん丁寧に扱って頂戴ね」

 すると案内人が「この番号札をつけていてください」とフェンリルに首輪のようなものを付けた。

「出品者様とお連れ様は闇市がご覧になれる会場へお連れしますので、どうぞこちらへ。まもなく闇市が開催されますので」

 三人は案内人の後ろをついて行く。そして、頷き合った。

「出品物は今回の下級品からオークションにかけられますので、あなた様たちのはおそらく最後の方では――ぐふっ」

 ジンが頭部へ蹴りを一発打ちこんだ。案内人はどさりと倒れて、さらさらと砂のようになって消えてゆく。どうやらレガーロで見た人形と同じつくりなのかもしれない。だとしたらお頭と呼ばれていた人間がここにいるのかもしれない。

「保管庫へ急ぎましょ」
「すまん、俺はハンターのお頭を探してくる。一発殴らないと気がすまない」

「わかった。俺とフィオナは保管庫へ行くが、ジン、気をつけろよ」
「ああ、虹蛇とゴールデンパンティは頼んだぜ!」

 三人は頷き合って、目的を達成するためにそれぞれ駆け出した。


 ♦♦♦


 特等席から闇市会場を見下ろす。この会場で今何がオークションにかけられているのかがはっきりと分かる場所だ。

「何? 極上の毛並みを持ったフェンリルの出品者が現れた、だと? なるほどな。……わかった」

 審査官の一人が報告に来て、そして急いで会場へ戻った。 

「ピュリオ公爵。……今回は豊作のようですね」
「ええ、そのようで。しかしながらあなたが出品した虹蛇とは比べものにならないでしょうけれど」

「あの蛇は苦労して手に入れたものですよ。それで? 手数料の話ですが、いくらになったんですか?」
「ええ。やはり前回もお話をしましたが、売価の四割ですね。それをこちら側が手数料としていただくということになります。それ以上は下げられないと。運営費用のこともありますから」

 とピュリオ公爵はいやらしい笑みを浮かべる。

「……分かりました。いいでしょう」

 するとマクベスが背後からピュリオ公爵を刃物で刺した。

「な、何を……!? ごふっ」
「残念だか、僕はあなた方闇市に手数料は払わない。なぜならば」

 どさり、とピュリオ公爵が床に倒れ伏す。

「出品物へ支払われた金額は全て、僕が手にするからだよ……!!」

 バチッと手の刻印が一つ消える。それを見たマクベスの表情が消える。

「邪魔者が侵入してきたか。この闇市の邪魔はさせない。……おい!!」

「「はい」」

 すっと影から雇われ兵が現れる。

「邪魔者を排除しろ」
「分かりました」

 その男達はお辞儀をして部屋から出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
アデル・オルラド、30歳。 彼は、22歳の頃に、前世の記憶を取り戻した。 約1000年前、アデルは『魔術学』の権威ある教授だったのだ。 現代において『魔術』は完全に廃れていた。 『魔術』とは、魔術式や魔術サークルなどを駆使して発動する魔法の一種だ。 血筋が大きく影響する『属性魔法』とは違い、その構造式や紋様を正確に理解していれば、所持魔力がなくとも使うことができる。 そのため1000年前においては、日常生活から戦闘、ものづくりまで広く使われていたのだが…… どういうわけか現代では、学問として指導されることもなくなり、『劣化魔法』『雑用魔法』扱い。 『属性魔法』のみが隆盛を迎えていた。 そんななか、記憶を取り戻したアデルは1000年前の『喪失魔術』を活かして、一度は王立第一魔法学校の教授にまで上り詰める。 しかし、『魔術学』の隆盛を恐れた他の教授の陰謀により、地位を追われ、王都をも追放されてしまったのだ。 「今後、魔術を使えば、お前の知人にも危害が及ぶ」 と脅されて、魔術の使用も禁じられたアデル。 所持魔力は0。 属性魔法をいっさい使えない彼に、なかなか働き口は見つからず、田舎の学校でブラック労働に従事していたが…… 低級ダンジョンに突如として現れた高ランクの魔物・ヒュドラを倒すため、久方ぶりに魔術を使ったところ、人生の歯車が再び動き出した。 かつて研究室生として指導をしていた生徒、リーナ・リナルディが、彼のもとを訪れたのだ。 「ずっと探しておりました、先生」 追放から五年。 成長した彼女は、王立魔法学校の理事にまでなっていた。 そして、彼女は言う。 「先生を連れ戻しに来ました。あなたには再度、王立第一魔法学校の講師になっていただきたいのです」 、と。 こうしてアデルは今度こそ『魔術学』を再興するために、再び魔法学校へと舞い戻る。 次々と成果を上げて成りあがるアデル。 前回彼を追放した『属性魔法』の教授陣は、再びアデルを貶めんと画策するが…… むしろ『魔術学』の有用性と、アデルの実力を世に知らしめることとなるのであった。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...