騎士ですが正直任務は放棄したいです

ななこ

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守護精編

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 はっと気がつけば、体が幼くなっていた。一体どういうことだ?

 周りを見渡してみれば、どうやらここはどこかの学校のようだった。

 古そうな建物が近くに聳え立っている。

 サラはその学校の制服だろうと思われる服を着ていた。

 何なんだ、これは……。

 景色がおかしいのか自分の眼がおかしいのか、なぜか全てが色あせて見える。

 掻き消えてしまいそうなほど薄いのだ。

 ということは、ここは現実ではない可能性が高い。

 それにしても、この景色は見覚えが無い。

「ここは、あのクラビスという少女が創り出した世界か……?」

「正解」

 するとクラビスが目の前に現れた。彼女は自分と同じ制服を着ている。

 一体何の趣味だ。

「一緒にかくれんぼう、しよ」

「……は? なんで私がかくれんぼうを一緒にしないといけないんだ」

「元の世界に戻りたいんでしょ? だったらかくれんぼうして。してくれないとここからは出さないよ」

「……強制参加かよ」

「同意の上でしょ」

「……同意した覚えはない」

「まあいいでしょ? やらなきゃここから出られないんだから、そんなこと言ったってどうにもならないよ」

「……そうだな」

「じゃあ、かくれんぼうのルールの確認だけど。私が隠れてあなたが探すってことで、いいでしょ?」

「……わかった。で、もし、見つけられなかったら?」

「え? 決まってるじゃない。私は闇の使者だから、あなたを殺す。時間内に見つけられなくてもあなたを殺す」

「無茶苦茶だな……」

「制限時間はあの太陽が沈むまで」

 そう指差された太陽は西に傾きかけてる。もうしばらくしたら夕暮れになり、日が沈むではないか。

 というかそもそも、かくれんぼうをしようという謎めいた発言をしておきながら、見つけられなければ殺すらしい。

 だったらかくれんぼうなんてせずに、殺せばいいものの。闇の使者の考えることはよくわからない。

 ま、クラビスを見つければいいだけの話だ。早く片をつけてクロウから承諾を得なければ。

「……仕方ないな」

「そうこなくっちゃね」

 すると目の前で笑う少女が急に増えた。影分身の如く、大量に。

 かくれんぼうとは何か物陰に隠れてクラビスを探すのではないのかと思ったが、どうやら違うようだ。

 同じ人間の中に隠れ、本物を探すということらしい。

 それはそれで面倒くさいな。

 どう考えても、物陰に隠れていてくれたほうが見つけやすいだろ。片っ端から本物かどうかを確認したとしても、それが本物か、偽者かの区別がつかない。それが厄介だ。

 でも、何か違いがあるはずだ。 

「武器を振り回しちゃ、だめだからね」

 偽者は倒せば消えたりするのでは、と思っていた矢先にクラビスから釘が刺された。

 そしてさらに条件が追加される。

「解答権は一回だけ」

「は? 一回だけだと?」

 それは間違えられないってことだ。……無理じゃないか? どうしたって間違えるだろう。そうか、間違えて早々に武力で本体を叩くか……? その方がいいな。よし。

「お前が本物だ」

 サラは適当に指を指す。

「ちょっと! 解答が早すぎる!! まだ始まってないのよ!? 今のはカウントしないからね!!」

「話が違う。間違えたぞ。早く私を殺そうとしろ!!」

「最低!! あてずっぽうでの解答は認められないわ!! かくれんぼうはもっと真剣にするものなのよ!! あなたって汚い大人ね!!」

「はあ!? どう見たって今はあんたと同じ子どもだろ」

「は!? なんなのこの騎士!! 遊び相手を間違えたわ!!……まあいいわ。この世界の主導者は私だから。適当な解答は認められないし、真剣にかくれんぼうをしてからの一回だけの解答だから。それに目障りな力は封印させてもらったわ。いいわね!?」

 クラビスがそう鋭く言い放つ。

「……」

 面倒くさ。どんだけかくれんぼうがしたいんだよ。

 これはかくれんぼうをして、どうにか本物をこの中から探さなければならないのか……。気が遠くなりそうだ。

 サラがげんなりしていれば、それを華麗に無視したクラビスは時間だ、とでもいうように手を叩いく。

「それじゃあ、はじめましょ!」
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