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守護精編
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しおりを挟む「まるで虫の卵みたいだな……」
「……本当、気持ち悪いわね」
よくよく観察してみると、その沢山ある球体のうちの一つの殻が破れていた。
「この中に入れられていたら、スカルになるみたいだな……。スカルになる前に、入っている人たちを早く救出しないと」
「そうね」
サラは剣で突き破る。思った以上に強度がなく、簡単に破ることができた。
だが、球体の数が多すぎて、一つ一つ破っていてはスカルになる前に全ての人を救出するのは難しいかもしれない。
圧倒的に人数が足りなさ過ぎる。
どうしたら確実に全員救出できるかを考えていると、四人の騎士が泳ぐようにして建物内に入ってきた。
なにやら指を指して示している。
彼らを救出すると言っているのだろうか、サラは意図を汲んでこくりと頷いた。
サラとブリジットが殻を破り、応援で来ている騎士に人々を運んでもらう。
捕らえられている人数がかなり多く、それでは到底間に合わないが、それしか今のところ方法はない。
暫くその作業をしていれば。
「この場だけでも浄化しましょう」
祈祷師が護衛の騎士と共に建物に入ってきた。
「私たちは建物の外を。少人数だけれど、この都市の中心部だけでも、先に浄化していくわ」
他にも何人か祈祷師が来ているのだろう。
助かった。
この場だけでも浄化されれば、スカルになるのを遅らせることができる。
時間が稼げれば、この人たちの救出は楽になるだろう。
祈祷師たちは祈祷の詠唱をし始めた。
それを確認したブリジットが
「じゃあ、ここは皆さんに任せようかな? さ、早く行くわよ」
と建物の外へ移動しようとサラの腕を引っ張った。
「ちょっと待ってくれ。先にこの人たちを救出しないといけないだろ」
「何を言っているの? あなたの任務は守護精に承諾をもらうことでしょ? こんなところで油を売っている暇はないわよ!」
「……」
「救援に来た騎士や祈祷師の人数は多くないかもしれない。でも、殻の中に南都市の騎士が多くいたわ。その騎士たちを救出したら動けるかもしれない。だから、人数はもっと増えるはず。でも、守護精に承諾をもらうのはあなたしかいないの。前回みたいに聖域にも異変が起きているかもしれない。こんなにも都市に異変をもたらせるということは、手強いスカルもしくは闇の使者がどこかに隠れているはずだわ。見る限りここにはいない。私はそのスカルを倒す任務があるし、早く血みどろな戦いがしたいの! じゃなきゃ、やる気が起きないの!」
「……そうだな。最後の方は意味不明だが、あんたの意見はもっともだ。じゃあ、ここは彼らに任せて私たちは聖域に行こう」
「そうこなくっちゃ!」
頷き合ったサラ達は、急いで聖域に向かうことに。
水中は思った以上に動きにくくて、聖域にたどり着いたのは先ほどの建物を出発してから数時間は経っていた。
体に水圧を感じながら、サラは見上げた。
「これは……」
目にしたのは、摩訶不思議な形をした構造物。
洞窟だった場所は、その洞窟の天井がなくなっており、絡まるようにして水中に浮いている。
まるで巨大迷路のようだ。
息を吸うように、水が入り口へ流れてゆく。
「入るしかないみたいね……」
「そうだな。聖域がこのようになってしまっているから、守護精が無事かわからない……」
「急ぎましょ」
サラたちが異形の聖域へ足を踏み入れた後、背後の水が動いたことに誰も気が付かなかった。
✯✯✯
青年の耳に、水の流れが知らせを届ける。
「……」
目の前の檻から、侵入者の方向へと視線を向ける。
構造上、上にいる青年は入り口付近が見える。
この異形の聖域に入り込んだのは騎士が二名。
恐らくこの現象を止めにこちらへ向かっているのだろう。
「……ない」
怒りの感情を表すかのように、ごう、と青年を中心に水が荒れ始める。
「人間は許さない……!」
渦のような激流はまるで突風のように都市全体へ波及していった。
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