騎士ですが正直任務は放棄したいです

ななこ

文字の大きさ
上 下
155 / 201
守護精編

12

しおりを挟む

 各都市から鉄道が走っているが、現在運用されていないため、地下都市へ行くための汽車はない。

 そのため、サラは歩いて地下都市へ向うことに。

 暗いトンネルを歩くと時間の感覚が麻痺してきて、早々に地上に出たかった。

 けれどこれから行くところは地下だ。

 日の光を浴びることなどできないだろう。

 サラは諦めて歩き続け、途中野宿しながら、長いトンネルを抜けた。

 トンネルを抜けると広い空洞が広がっていた。

 どうやらそこが現在使用されていない地下都市――ノルバスクのターミナル駅だった。

 そしてこの先が地下都市――ノルバスクだ。

 サラはその先の黒ずんでいる奥地へ視線を向けた。

「あ、サラちゃーん!」

 ウィルソンたちがサラに気づき、手を振って近づいてくる。

「もう、着いていたのか」

「いや、今着いたとこなんだ!」

「はぐれずに会えてよかったです」とリリナがほっとした表情を浮かべると、「ノルバスクは入り口が一つしかないから、別にその心配はしてなかったけど」とサラがぼそりと呟いた。

「サラさん、何言ってんすか!」

「何だ?」

「サラさんは勝手にノルバスクへ行くかもしれないっすからね! ここで集合できたことは本当によかったっすよ!」

「いや、勝手に行かないし」

「いや、サラちゃんなら行きかねないよね! だって、勝手に東都市に行っちゃうんだもん!」

 ウィルソンはサラが一人で東都市に行ったことに対して相当根に持っているらしい。

「……すまない」

「……別にいいけど。というかそもそもどうして王都に連れて行かれたの? 変な事したの?」

「変な事はしてない」

「じゃあ何?」

「……まあ、ちょっとな」

「ふーん……。じゃあ、なんで東に勝手に行ったの?」

「まあ、それも色々あってな」

 何も話そうとしないサラに、ウィルソンは「……ふーん」と口を尖らせるが、しつこく聞いてもサラは言わない。

 だから聞いても無駄だとわかっているため、ウィルソンはそれ以上聞かなかった。

「ところで、それは何だ?」

「どれ?」

 サラがリプニーチェの隣でふよふよ浮いている見慣れない鮫を指差して問う。

「おいお前、俺のこと指差してんじゃねえよ!」

「ああ、レギオーラのこと? 俺の居候かな」

「おい、てめえ! 俺は居候じゃねえよ!」

「ふーん、あっそ」

「おいおい! 自分で聞いておいて興味ねえのかよ! 俺はな、こいつの中にいるもう一体の精霊のレギオーラだ!って、聞けよ!!」

 スタスタと歩き始めたサラに対してレギオーラがキレる。

「レギ、うるさいよ。もう少し静かにできないの? まあ、いいけど。って、サラちゃん待ってよ!」

「略すな! 俺はレギオーラだっつってんだろ!!って聞けよ!!」

 頬を膨らませるレギオーラはウィルソンに完全に無視されており、雑な扱いを受けている。その不憫さにリプニーチェが「かわいそ」と鼻で笑う。

 どこにもやり場のない怒りを持ったレギオーラは「もう知らねえからな!」と吐き捨てるように言って姿を消したのを見て、「子どもねえ」とリプニーチェは呟いた。

 サラたちが奥へ伸びるトンネルへ進もうとしたとき、突然サラの無線が鳴った。

『サラ、今はもう地下都市か?』

「いや、これからだ。今地下都市のターミナル駅にいる」

『そうか。急いでサラだけ都市長会議へ来るように』

「は? なんでだ?」

 わけがわからない、と眉間に眉を寄せていれば、急にフレデリックからエドモンドの声に切り替わった。

『別の任務だ』

 威圧感のある声音に、サラはそういうことか、と小さくため息をつく。

「……わかった。これから向う」

「サラちゃん……。別の任務に行っちゃうんだね」

「ああ……」

 びゅう、と奥地から風が吹き上げる。

 その風に一抹の不安がよぎった。

 地下都市にいるのは強大な力を持っているスカルではなかったか。

「あんたら気をつけろよ」

「大丈夫っすよ。すぐに片付けて他の任務へ行くっすから、俺らは大丈夫っす」

「そうですよ。一人で行かれるようですから、先輩こそ気をつけてください」

 みなの引き締まった顔を見たサラは、心配はどうやら杞憂に終わりそうだと思った。

 彼らならきっと大丈夫だろう。

 サラは踵を返し、中央都市へ続いているトンネルへ向けて駆け出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

公爵令嬢の選択

つきほ。
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢マリアンヌは、騎士団に身を投じ、剣を手に誇りと使命を守る道を選ぶ。 しかし、彼女を待ち受けていたのは、陰謀と裏切りに満ちた戦いだった……。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

処理中です...