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北都市編 後編
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しおりを挟む「……は? 今、なんて?」
「だから、俺たちに人間を守る義務はないし、正直人間なんて死ねばいい」
「あんた、それは本気で言っているのか?」
「ハッ……偽善者かよ。つーか、本気も何も、当然のことだろ」
平然と言い切るエリックが、もういいだろ、とスカルへ斬り込んでゆく。
その瞳には、何も映っていなかった。ただ、暗い光が宿っているだけで。
サラは拳を握った。
「……」
精霊と人間はお互いに協力して闇と闘うんじゃないのか。
人間の祈りと、精霊の光の力。
それはお互いの相互作用でより強大な光の力へとなる。
どちらが欠けても闇には勝てない。
私は、それをアルから学んだ。なのに。なんなんだ、あの態度は。
まるで過去の自分を見たかのような錯覚に、苦笑する。
「サラ、大丈夫だ。きっと奴らもそのうち理解する」
サラの内心を見透かしたように、アルグランドがぼそりと呟いた。
それがなんだかおかしくて、笑ってしまった。
「……そうか」
「ああ。だから今はスカルを」
「そうだな。すまない」
余計なことを考えるな。
今は目の前の敵に集中するのみ。
サラはライヴンに剣先を向けた。
「よし、後はスカルに任せて、俺は移動するゼ!」
「逃がすか!」
閃光のごとく飛翔したサラはライヴンに向かって猛烈な攻撃を繰り出す。
サラの軽やかにしなる体から繰り出される攻撃は一撃が鋭く早い。
けれどライヴンは二つの戦輪を手品のように消したり出したりしながら、それらを弾いてゆく。
サラが蝶のように空へ舞い、ライヴンの頭上へ。
切っ先が美しい円を描いて、光が迸った。
お互いの刃の交錯点から、光と闇の高エネルギーが生み出され、はじかれるようにお互い後退する。
「ハッハー! 俺はこんなところで油を売っている暇なんてないんだゼ!」
いつ放ったのかわからない戦輪が、サラ目がけて双方向からうねりを上げて迫ってきた。
サラは戦輪の餌食になる直前に、絶妙なタイミングでバク転して避けた。
戦輪はお互いぶつかることなくスライドし、放物線を描いてライヴンの手に収まった。
「グッバイ!」
「待て!」
姿を消そうとするライヴンに向かって、サラは追いかけようとする。
奴の後ろを付いて行けば、もしかしたら異界へ行けるかもしれない。
淡い期待を胸にライヴンを追うが、さすがに距離があるため追いつくことができない。
もはやライヴンの姿が消えかけている。
「逃がすかっ……!!」
サラはライヴンに向かって思いっきり剣を放った。
一直線に輝く剣は消えゆくライヴンに迫る。
だが、ライヴンを貫くことはなく、目の前に立ちはだかったスカルの体にぬぷりと突き刺さった。
剣から光が溢れだしスカルは浄化されたが、スカルの消えたその先にはもうライヴンの姿はなかった。
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