騎士ですが正直任務は放棄したいです

ななこ

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中央都市編

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 石造りの巨大な建物。

 他の建物は簡素な壁の模様や装飾だが、図書館は凝った模様や装飾が施されている。

 図書館というよりもまるで美術館のようないで立ちだとサラは思った。

 中へ入れば、図書館の中は三階建ての吹き抜け。

 静かな空間で読書にいそしむ人たちを横目で見ながら、サラはお目当ての資料をどうやって探そうか、と思いカウンターへ足を運んだ。

「すまない、スカルに関しての資料を探しているんだが」

「はい。スカルに関しての資料は三階にあります。案内図が各階にありますので、そちらを参考にしていただければと思います」

 受付にいる女性がにこりと笑う。

「ありがとう」

 サラは階段を上り三階へ、壁に張ってある見取り図を見てその本棚の方へ行く。

「えーっと……」

 背表紙を目で追いながら、サラはスカルに関する情報が載っているものがないか探していたら。

「あなたにお勧めの本があるわよ」

「え?」

 いきなり人が本棚の陰から現れた。

 眼鏡をかけた細身の女性。

 団服を着ているため、騎士なのはわかるが多量の本を抱えている。

 本の整理でもしていたのだろうか。

 サラの視線に気が付いた女騎士がほほ笑む。

「たくさんありすぎて読み切れないわよね。ふふっ。で、先ほど言ったお勧めは、今私が読んでいたこの本。この世界の成り立ちの歴史が記載されている本なの」

 サラに何冊もの本を押し付けて、一番上に置いてあった本を一つ取る。

 本の厚みがかなりある本が多いのでずっしりと重い。

「ちょ、ちょっと」と抗議するサラなどお構いなしに、パラパラとその騎士が本をめくり始めた。

「あなたがこの本棚の近くにいるってことは、スカルのことを知りたいのよね? だったら、この国の成り立ちのこの本から読んだらいいわよ。どうしてこの世界にスカルが誕生するようになったのか、とか。このページに特に詳しく書いてあるから」

 ページを広げてこちらに見せる。

 両手が塞がっているサラはどうにもできない。

「は、はあ……。ありがとう」

「どういたしまして。私、ここの本はほとんど読んでいるから、わからないことがあったら聞いて」

「どうも……。あの、私はスカルもそうだが闇に関しての本も探しているんだ……」

「闇……。大まかな括りね」

「……ああ。わからないんだ。奴らが何者なのか」

「奴ら……?」

 騎士は首を傾げながら「新種かな。新種だったらそれは本には載ってないかも」とぶつぶつ呟いている。

「多分、最新の研究報告書とかには載っているのかもしれないわ」

「それはどこに?」

「こっちよ」

 サラは騎士に連れられて闇の研究に関する書物が並んである書棚にきた。

「これとか、これとか、いいかもしれないわよ」

 騎士は書棚から引っ張り出すと、サラに持たせた本の上にどんどん重ねてゆく。

「ど、どうも」

「闇の存在――スカルに関してもまだまだ研究段階だから、不明点も多いの。もしかしたらこの報告書に何か書いてあるかも。もしなかったら……最新の研究をしている施設に行くしかないわね」

「それってどこにあるんだ?」

「北都市部が研究機関なの。闇のこともそうだけど、精霊に関してとか多くの研究をしているわ」

「北、か……」

 本を読み漁るのもいいかもしれないが、専門で研究している機関に行けば、何かわかるかもしれない。

 でも、まずは足りない情報を補わなければ最新の研究の情報を得ても理解できないだろう。

「ありがとう」

「いいの。それじゃ、私は別の書棚にいるから何かあれば言って」

「ああ、そうする」

「あ、いた! ステラ先輩!」

 階段を駆け上がって、リリナが息を切らしながら駆けて来た。

「あら、リリナさん、どうしたの?」

「任務です! 中央長に集まるようにって言われました……! これから説明があります」

「あ、無線切っていたの忘れていたわ……。ごめんなさい。すぐ行くわ」

 そう言ってステラは慌てて階段を降りて行った。

 サラは自分の持っている本を見下ろして、この本を全部読めということだろうか、と首を傾げた。

 まあ、いいか。

 とりあえずは情報収集だ。

 サラは近くにあった机に本を置き、片っ端からページをめくっていく。

 けれど欲しい情報がみつからない。スカルに関しての基本的な情報ばかり。

 やはりあの騎士にお勧めされた本を読むべきだろう。

 世界の成り立ち――……。

『特務に任務だ。サラ、ウィルソン、ザグジーは今中央にいるな』

 丁度いいところで、フレデリックからの無線が鳴ってしまった。

 サラはため息をついてパタンと本を閉じた。

 この任務を終えてから読むか……。

「ああ、いる……」

『はーい! いまーす!』とウィルソン。

『はい、いるっすよ!』とザグジーが続けて返事をする。

『セントラルで巨大スカルが出たと――』

 ドオオオオオオン!

 フレデリックの言葉を遮るように爆音が響いた。

 図書館の壁が破壊された衝撃で本棚が倒れ、粉砕された壁が粉々となって吹き飛ぶ。

 爆風によって荒らされた館内は、本が散乱し、ちぎれたページがばらばらと宙を舞った。

「があああああああああ!」

 ビリビリと空気を震わせる雄叫び。

 太陽を遮って影が地面に伸びた。

 その光景に一瞬どきりとした。

 サラははっと視線を上げて、その正体に眉根を寄せた。

「何だ、あのスカルは……?」

 鉄壁の鎧を纏った巨大な怪物。

 鉄の重々しい棍棒を振り回しながら、建造物を壊してゆく。

 街の人たちは急に現れたスカルに、戸惑い逃げ惑う。

 悲鳴と怒号。

 一気に街が混沌と化した。

『巨大スカルが出たみたいだ。現地の騎士と協力して討伐してくれ!』
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