騎士ですが正直任務は放棄したいです

ななこ

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中央都市編

2(リリナ視点)

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 中央都市部に戻って依頼主に猫を返却した後、バーバラがリリナに向き合う。

「リリナちゃん、これから新しい任務よお?」

「はい……」

「少しだけ今までのよりは難易度が上がるけど、きっと大丈夫よお?」

 不安そうな顔をしているリリナに、バーバラがそっと肩に手を置く。

 安心させるように。

「大丈夫よ。アタシも付いているし、ステラもメイも付いてる。一人じゃないのよ。無理そうだったら手伝うし、アタシたちを頼っていいのよ」

「そーそー。大丈夫だってば! あんたは心配しすぎ」

 同じ隊のメンバーであるメイがリリナの背中を叩く。

 メイは団服をこなれたように着崩し、頭には大きなリボンを付けている女騎士。

 毛先をくるくると巻いており、見た目はなんとも派手だ。

「てゆーか、ステラは?」

 メイは唇を突き出して、面倒臭そうに髪の毛をいじる。

「あらあ? 一体どこへ行ったのかしらあ?」

「ステラ先輩は多分図書館じゃないでしょうか……?」

「あー……確かに。ステラは本好きだからねー……って、これから任務の説明あるのに!? ちょっと、バーバラさん無線で呼んでくださいよ! ったく、あの子は! ありえなくない!?」

「うーん。それがねえ……」とバーバラは困り顔で頬に手を添える。

 何か問題でも起きたのだろうか?

「無線、切ってるみたいなのよお……」

「はあ!? 何してんのよ、あの子! マジでありえないんだけど!」

 ため息をつくバーバラに、顔を歪めるメイ。

 ステラはよく任務と任務の間で姿を消すことが多い。

 そしてその時間どこにいるのかといえば、ほとんど図書館にいるのだ。

 図書館に住んでいるのではないかというほど、本が好きらしい。

 リリナがおずおずと手を上げる。

「あ、あの……私が呼びに行ってきます」

「あら? いいのお?」

「はい。行ってきます」

「じゃあ、頼んだわよ」

 そう言ってバーバラが、ばちん、とウィンクをとばす。リリナの肩に乗っかっていたラルクがそれを見て「おえー」と言ったのはバーバラには聞こえていなかった。


 ✯✯✯


「それじゃあ、始めるかイ?」

 にぎやかな街を高い建物の屋根から見下ろす。

 これから恐怖に支配されるなどと知らずに、呑気に過ごす人間どもを見るのは最高だ。

 るんるん気分で鼻歌を歌っているライヴンに、グラヴァンは深いため息をついた。

「早く始めてよ? 私はあっちに行っているから。しっかり陽動を頼んだからね。さもないと眼球抉るから」

「……」

 やる気が盛り下がったライヴンは、げんなりとした表情を浮かべた。

「ヘイ、ユー! 毎回思うケド、気持ち悪いゼ、お前のその仲間をイジメる発言。どうにかした方がいいと思うゼ!」

「……はあ。これだからアホは……」

 どうして理解できないんだ、と肩を竦めるグラヴァン。

 彼の趣味嗜好のことなど到底理解したくないライヴンは、アホでよかったと内心胸を撫でおろす。

 こいつは絶対に頭オカシイ。

 一緒に行動するとか、ドМかヨ。

 いや、待テ?

 今俺、一緒に行動してるカラ、俺……ドМ!?

 し、知らなかったゼ……!

「こら、何ぼんやりしているんだい? さっさとしてくれない?」

 真っ青になったライヴンを、ゴミを見るような視線で睨む。

「エ、ア、ウン。わかったヨ。やるヨ。だからそんなにも怖い顔で睨まないでおくれヨ!」

 やれやれ、とライヴンはこちらの世界と異界とをつなぐゲートを開いた。

 空間にぽっかりと穴が開き、黒い世界が顔をのぞかせる。

 そこからもやがあふれ出てくる。

「新しいことに挑戦してみたゼ!」

「……君の場合、失敗しないといいけど」

「大丈夫だゼ! これは、俺の力だからナ! さ、派手にイッチョやりまショウ!」
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