上 下
29 / 201
汽車編

4

しおりを挟む

「何だ……?」

 ゴン、ゴン、と何かがぶつかっているのか、揺れが続く。

 窓を開けて、音のする方を見れば、そこには巨大な鳥型のスカルが汽車に体をぶつけているではないか。

 このままでは車体が脱線し、乗客に被害が出る。

「おい、五両目にスカルが体をぶつけている。私はこのまま窓から屋根に登って奴を引き付ける。その隙に、あんたたちは乗客の避難誘導を頼んだ。それが終わり次第戦闘に入ってくれ」

「わかった! 俺が五両目以降の車両にいる乗客を後方に移動させるから、ザグさんは前の車両にいる乗客を頼んだよ! じゃ、サラちゃん気を付けて!」

「了解っす! それが済み次第加勢するっす!」

 サラは確認して、車窓に手をかけた。

「あ、あの……! 私は、一体どうすれば……?」

 困り果てたジャクリーンが、サラのマントを掴む。

「おおっと……! ああ、あんたはザグジーの指示に従ってくれ。恐らくこの二両目にいれば問題ないはずだ」

「わ、わかりました」

 サラはジャクリーンが手を離したのを確認し、車窓から屋根に向かって跳躍した。

 汽車の屋根に着地し、サラはスカルの方へ駆けだす。

 翼を広げたスカルの大きさは二メートルを超えている。

 その巨体が汽車に体当たりを繰り出しているとなれば、相当なパワー。

 そりゃ汽車も揺れる。

「行くぞ、アル……!」

 サラは剣を握り、猛スピードで近寄っていく。

 サラに気が付いたスカルが咆哮を上げて突っ込んできた。

「こい! 切り刻んでやる!」

 剣を構えて振り切る。

 けれどスカルはサラの攻撃をひょいっと躱して上空へ逃げる。

 飛行しているスカルに接近戦は難しいか?

 いや、いける……!

 上空へ飛んだスカルが、こちらへ向かって急降下してきた。

 サラは迎撃の体勢になり、再び剣を構えた。

 風を切って突っ込んできたスカルに、鋭い一撃を放つ。スパッと右翼を斬りおとせば、スカルはバランスを崩して汽車の屋根に倒れ伏す。

「終わりだ……!」

 サラがとどめの一撃を加えようと剣を振り下ろしたが――。

「な……!」

 剣は虚しくズコンと音を立てて車体に刺さっただけ。

 スカルの切り落とした右翼が再生され、再び上空へ飛び立っていたのだ。

 乗客の恐怖心を煽ってそれを喰ってるな……。

 だから再生能力が上がっているのか?

 サラは上空を滑空しているスカルに向かって、剣を薙いだ。連続して光の斬撃を飛ばすもスカルは滑空して見事に避けてゆく。

「当たらないな……」

「サラちゃん!」

 ウィルソンが車両と車両の間にある階段から屋根に登ってくる。続いてザグジーもそこから登場した。

「スカルはどんな感じっすか?」

「飛ばれたら攻撃が当たらない。だが、この乗客の恐怖心を煽って、それを吸収しているようだから、この汽車から遠くには離れようとしない。一定の距離を保ちつつ、こちらの攻撃をかわしている」

「向こうからは攻撃してこないんすか?」

「今は距離を取って攻撃してこないが、攻撃は大した攻撃ではない。攻撃力としてはこちらの方が勝っているが、あのスカルは再生能力が高い。一撃で致命傷を負わせてもすぐに回復するだろう。だから奴の身動きを取れなくするか、挟み撃ちにするかしないといけない。そうしないと浄化しようにもすぐに上空に飛ばれてしまう」

「サラちゃんって結構分析しながら戦ってるんだね!?」

「……当たり前だろ。考えなしに攻撃し続けるのはアホがすることだ」

 ウィルソンに向かってそう言うと、「それってまるで俺に言ってるみたいだよね!」と笑い出す。

 ウィルは考えずに戦ってそうだと思ったのは、黙っておこう。

「じゃあ、どうするっすか?」

「俺が誘導するように水柱立てるよー」

「じゃあ、俺も反対側から誘導するように岩で援護射撃するっす。そうしたら行き場を失ったスカルがこちらへ向かって飛んでくると思うっす!」

「わかった。こちらに向かってきたのを見計らって私が一撃を入れる」

 三人は頷き合って飛んでいるスカルを睨んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

婚約破棄? ではここで本領発揮させていただきます!

昼から山猫
ファンタジー
王子との婚約を当然のように受け入れ、幼い頃から厳格な礼法や淑女教育を叩き込まれてきた公爵令嬢セリーナ。しかし、王子が他の令嬢に心を移し、「君とは合わない」と言い放ったその瞬間、すべてが崩れ去った。嘆き悲しむ間もなく、セリーナの周りでは「大人しすぎ」「派手さがない」と陰口が飛び交い、一夜にして王都での居場所を失ってしまう。 ところが、塞ぎ込んだセリーナはふと思い出す。長年の教育で身につけた「管理能力」や「記録魔法」が、周りには地味に見えても、実はとてつもない汎用性を秘めているのでは――。落胆している場合じゃない。彼女は深呼吸をして、こっそりと王宮の図書館にこもり始める。学問の記録や政治資料を整理し、さらに独自に新たな魔法式を編み出す作業をスタートしたのだ。 この行動はやがて、とんでもない成果を生む。王宮の混乱した政治体制や不正を資料から暴き、魔物対策や食糧不足対策までも「地味スキル」で立て直せると証明する。誰もが見向きもしなかった“婚約破棄令嬢”が、実は国の根幹を救う可能性を持つ人材だと知られたとき、王子は愕然として「戻ってきてほしい」と懇願するが、セリーナは果たして……。 ------------------------------------

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

処理中です...