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守護精編

32(ジェイソン視点)

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「はあ……、はあ……」

 団服は噛み千切られ、腹部の噛み付かれたところから多量に出血している。

 ジェイソンは襲い掛かってくるスカルに剣を振るい肉を刻む。

 しかし、思った以上に剣を振れなかった。

 水中のため、抵抗があるのだろう。それにこの水はただの水ではない。

 スカルが生み出している水だ。だからだろう、体全身が鉛のように重い。

 他の騎士たちも共にスカルと戦っているが、息が続かないのか交代交代で戦っている。

 途中で息の出来なくなった騎士もおり、意識を失って倒れている。 
 
 私もだんだん力尽きてきたのか、息がしにくくなってきた。

 もう、若くないって事かなぁ……。哀しいなぁ。

 そんな感傷に浸っている場合ではない。この状況、明らかにこちら側が不利。

 すると複数のスカルが一気にジェイソンに襲い掛かってきた。

 ジェイソンはぐっと唇をかみ締め、鳩尾辺りに力を込める。

 ピキピキ、と血管が浮き上がり、全身の緊張が最高潮に達した時。ジェイソンは思いっきり振り抜いた。

 筋肉から引き絞られた圧倒的な力が斬撃となり、ズパアア、と水もスカルも一刀両断してゆく。

 黒い血が煙のようにあたり一面に霧散した。

「はあ……」

 剣を床に突き、息を整える。

 力を出し過ぎた。これは久々にしんどい。体力の衰えを感じ、そろそろ引退かなあとひとりごちた。

 ジェイソンが全てのスカルを倒せたのか、と視線を走らせれば。

 煙が不自然に動いた。

 なんだ、と思った直後、斬撃を避けたスカルがジェイソンへ牙をむき出してきたではないか。

「な!」

 もう抵抗する体力は残っていない。これまでか……、と死を覚悟した、その直後。

 青孔雀の石英ブルー・クウォーツ

 突如、目の前のスカルが一瞬にして透明な硝子のような姿に変わったかと思いきや、割れるように弾けとんだ。

 豪快に飛び散った破片が光りに変わり、美しく儚く消えてゆく。

「危ないところだったわね」

 目の前に現れ手をこちらに伸ばしてきたのは、上官騎士の……。

「……アントニオさん、ありがとう。今日もお綺麗で」

「もー、南長、キャサリンって言ってるでしょ!」

 いやあねえ、と笑っているが、目が全く笑っていなかった。次にアントニオと言ったときにはシメられるだろう、と直感した。

「それにしてもどうしてここに?」

「南都市にいたんだけど、急にこんなことになっちゃって。わんさか現れるスカルを一網打尽にしてきたんだけど……」

 キャサリンはジェイソンを上から下まで見て、口元を隠す。

「それにしても……南長のお姿はいつも以上にセクシーねえ」

 ジェイソンはボロボロになった自身の服を見下ろして、少しだけ頬を赤らめた。

「いやあ、たまにはこういうことも体験しとかないとねぇ。どんなに激しいプレイをご婦人たちはご所望か分からないからねえ」

「んも~、エッチ」

 和やかに変な会話が繰り広げられるが、キャサリンは「そういえば」と顎に手を置く。

「この原因ってわかります?」

「いやあ、わからないけど……」

 ジェイソンはしばらく逡巡した後に、ハッと何かに気が付く。

「聖域がやられているのかも……」

「なるほどねえ……」

 キャサリンは以前都市長会議で命令を受けたことを思い出していた。

「じゃあ、私は聖域の方をみてきますね」

「よろしく頼んだよ」
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