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守護精編
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しおりを挟む空に映えるほど鮮やかな青い鳥が飛んでゆく。
見たことのない鳥はここ数日で何度か見かけた。
わき目も振らずに一直線に飛んでゆくその鳥は、何か目的があるのだろう。
精霊が動き出す時には青い鳥が飛ぶと聞いたことがある。
ということは何かがこれから起こるということだろうか、とその鳥の動向を注意深く観察した後、小さくほくそ笑む。
びゅん、と大きく跳躍すれば、ちょうど飛んでいるその鳥をわし掴むことができた。
「ぐえっ!?」
ばたばたと羽ばたいて私の手から離れようとするけれど、ぐっと手に力を込めて動きを封じる。
手のひらに痛みを感じたが、離すわけにはいかない。
「な、何者か!?」
「私が何者かどうかなんて君には関係ないよ。君がどこに飛んで行くのか知らないし興味も無いけれど、君の知っていることには興味があるかな。さあ、知っていることを洗いざらい吐いてもらおうか。でないとこの綺麗な羽が残念なことになってもいいのかな?」
そっと青い羽をつまむ。力を入れれば簡単に引っこ抜けそうだ。
「ひっ」
「あー……でも、それもいいかもね。だって、そしたら気持ちのいい歌声が聞こえるからさ」
捕まれて震える鳥の瞳には、ニヒルに笑った男の顔が映っていた。
✯✯✯
「思ったよりも早い到着だったな」
会議室へ入ってきたサラを見たエドモンドが感心するように呟く。
地下都市は中央都市の真下に位置している。
そのため地下都市から中央都市へ移動するのにそれほど時間はかからない。
都市長たちが顔をそろえる中、急遽会議に出席させられたサラが不満げに問う。
「で、任務って一体なんだ?」
「守護精たちが精霊を進化させてくれるようだ。しかし進化するにあたって、各守護精に承諾を得なければならない。各守護精からの承諾が得られれば早急に進化が始まるということだ。その承諾を得るのに、君に行ってもらおうと思いこちらへ呼んだ」
精霊が進化するのか。
ということは精霊一体につき光の力が強くなるということだろうか。
そこでサラはピンときた。
私は光の愛娘。
精霊からの力を借りやすいと父――ローレンスが言っていた。
つまり、私がその力を借りることが出来れば(どうやって借りるのかは不明だが)、より大きな光の力を使えるのではないのか。
そうすれば姉さんを元に戻せる可能性が上がるのではないのか。
ならば、精霊にはなんとしても進化してもらいたい。
「話が通っているのかいないのかよくわからねえよな、全く。提案したのはレレノアってやつだけかよ。守護精同士で話し合えよな」
マジで意味わからねえな、とバートルがふんぞり返る。
「まあ、提案してくれたからいいんじゃないのか。ウォルティオさんが精霊の進化は負担がかかるから人間側が承諾を得ろって言ってただろ。それはもしかしたら精霊間で話し合った上で決まったことなのかもしれないだろ?」とフレデリックが小さくため息を吐く。
「……そうか?」とバートルは納得できない様子。すると「そういえば」とガレッドがウィンテールへ視線を向けた。
「なぜそちらの騎士が守護精との交渉役にふさわしいと思ったのですか? 一般騎士よりも立場が上である王族騎士や私たち都市長が交渉の場に出ることが先方に対しても失礼にはならないのでは? それか各地にいる上官が行けば一人だけが各地を移動するという時間のロスを省けると思いますが」
的確な指摘に、ウィンテールはサラの肩を寄せるようにして立った。
「我がサラをその交渉役に指名したのは、きちんと理由があるのじゃ。サラは光の愛娘じゃ。命の輝きが誰よりも眩しく輝いておる。本人はどうか知らぬが、一般的に言えば希望に満ち溢れている存在じゃ。それは精霊にとっては太陽と同じ。いなくてはならぬ存在である。いいかの? 他の騎士よりも精霊からすればこれ以上の適任はおらん。じゃから、その光の愛娘であるサラが守護精の場へ行けば、どの守護精も『はい』というであろう」
最後はかなり強引に言い切ったウィンテールに「そんなにも簡単にいけばいいけどねえ」とジェイソンが頬杖をつく。
「守護精というものが正直いまいち把握できていません。ですから誰が行くべきなのかは私は判断できかねます。その場合はウィンテール様に委ねた方が得策だと思います。けれど精霊は危険なことを我々にはしてこないとは思いますが、このご時世、一人だけで行かせるのは危険なのでは?」
ダイナがサラを見、それからフレデリックへ視線を移す。
「それに関しては誰かを手配するか――」
「我が一緒に行くぞい!」
ウィンテールがフレデリックを遮るように言い張った。
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